【番外編⑤】『舞踏会への誘い〜コレット、初めてのときめき〜』
今回は、フェルナンド様との騒動のあと、コレットが自分の気持ちに気づく瞬間を描きました。
ちょっぴり照れくさくて、でも胸が高鳴る……そんな日常の小さな一歩を楽しんでいただけたら嬉しいです。
騒動が落ち着き、ようやく安堵の息をつくコレット。
しかし、その胸の奥で、さっきの額への軽いキスの感触がよみがえり、思わず顔が真っ赤に染まった。
「あ、あ、あの……私は、もう大丈夫ですので! 本当にありがとうございます!」
慌ててフェルナンドの腕から抜け出そうとするコレットを、彼はそっと掴んだ。
「あっ、すまない。だが、今日は少し話をしたくて誘いに来たのだ」
コレットは驚きながらも、仕方なくうなずく。頬はまだ真っ赤で、耳まで熱を帯びている。
その様子に、フェルナンド自身も頬が赤くなっていることに気づき、ほんの一瞬顔を逸らした。
「実は、明後日、城で舞踏会がある。……私のパートナーとして来てくれないか?」
その言葉に、コレットは一瞬、頭が真っ白になった。
「え……えっと……な、なにを……?」
やがて状況を理解した瞬間、心臓が早鐘のように打ち、思わず口をつぐむ。
「むっ、ムリです! 私なんかに、フェルナンド様のパートナーなんて……! それに、着ていくドレスもありませんし!」
しかし、フェルナンドの目は真剣そのもので、優しくも揺るがぬ意志をたたえている。
「君が良いのだ。ドレスのことは心配無用。私が最初から手配しておいた。どうか受け取ってほしい」
コレットはその言葉に言葉を失い、足が止まる。胸の奥で、何かが熱くはじけるような感覚がした。
「……つ、釣り合いません。私なんかに……ごめんなさい!」
拒絶の言葉とともに、コレットは精一杯背を向け、駆け出した。
後ろから聞こえるフェルナンドの声が、冷たい夜気の中に温かく響く。
「待っているから!」
コレットは全身でその声を受け止めながらも、頭では自分の立場を理解していた。
「私なんかが……想っていい人ではない……」
けれど、胸の奥で膨らむ熱は、理屈では抑えられない。
思わず高鳴る鼓動に気づき、コレットは自分の気持ちを否応なく自覚した。
――私は、フェルナンド様のことを……好きなんだ、と。
背中を押す冷たい風も、赤く染まった頬も、止まらない胸のときめきも。
すべてが、彼への恋心を教えてくれているようだった。
読んでくださり、ありがとうございました!
コレットの小さな勇気と、フェルナンド様の優しさが交わるひとときを描いてみました。
次回は、舞踏会当日や二人の距離がさらに縮まる瞬間をお届けできたらと思います。
どうぞお楽しみに✨




