【番外編③】「日常に彩りをくれた王子」〜コレット視点〜
今回の番外編は、王子フェルナンド視点ではなく、図書館の司書・コレット視点でお送りします。
家族を支え、日々忙しく働く彼女の心の中や、王子との静かな交流を丁寧に描きました。
コレットの苦労や思いを感じながら、少しずつ距離が近づく二人の関係を楽しんでいただければ嬉しいです。
私の名前はコレット。24歳、名ばかりの伯爵令嬢で、家族を支えるために毎日働き詰めだった。
書類や雑務に追われ、幼い兄弟の世話もあり、静かに本を読む余裕などほとんどなかった。
華やかな宮廷に憧れたこともあるけれど、行き遅れた令嬢として自分を嘆く余裕すらなく、家族のためにただ頑張る日々――。
本当は、運命の人が現れ、薔薇の花束を手に跪かれ、プロポーズされる瞬間を夢見ていた。
遠い夢だとわかっていても、心のどこかで小さな希望を抱き続けていた。
ある日、王城附属の図書館で――ふと視線を上げると、そこに王子フェルナンドが立っていた。
19歳にして整った顔立ちと落ち着いた雰囲気を持つ王子。自然と視線が向いてしまう。
でも、すぐに自分を落ち着かせる。王子は年下。私が心を乱すわけにはいかない――。
それに、王子の肩の力や目の陰りから、宮廷での疲れも伝わってきた。
私はそっと手を伸ばし、肩に手を添えながら、「……大変でしたね」と声をかける。弟のように、ただ支えたい――そんな気持ちで。
王子は小さく息をつき、肩の力を抜く。
疲れ切った姿に、弟感覚で優しく接したつもりだったのに、胸の奥が少しずつ熱くなるのを感じる。
毎日の忙しさに追われ、心を休める余裕すらなかった私が――
王子と過ごすこの静かな時間で、少しだけ自分を取り戻せる気がした。
――あれ……?
弟のように接するはずだったのに、心は知らぬ間に惹かれていた。
王子の穏やかな笑顔や、疲れた仕草を見るたびに、胸がきゅんとする。
苦労ばかりの日々に、こんな小さな安らぎがあるなんて――。
コレットとしての私――家族を支え続ける令嬢としての自分――の世界に、少しずつ彩りが加わっていくのを感じた。
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今回の話では、コレットの苦労や日常を少し掘り下げつつ、王子との心のやり取りに焦点を当てました。
弟のように接していたはずが、知らぬ間に惹かれていく自分に気づくコレット――
次回も、二人の微妙な距離感と心の揺れを丁寧に描いていく予定です。どうぞお楽しみに。




