【番外編②】「図書館での静かな時間 ― 少しずつ心を開いて ―」
番外編スピンオフ、フェルナンド王子と司書コレットの物語、第2話です。
コレットは24歳、名ばかりの貧乏伯爵令嬢で幼い兄弟がおり、年下の扱いがとても上手。
今回は、王子が少しずつ彼女の優しさに惹かれていく静かで温かい時間を描きました。
どうぞ最後までお楽しみください。
それからフェルナンドは、時折図書館に足を運ぶようになった。
宮廷での疲れを癒す場所としてだけでなく、少しずつコレットの存在が気になり始めたからだ。
コレットは24歳。名ばかりの伯爵令嬢で、家族を支えるために働き詰めだった。幼い兄弟たちの面倒を見てきた経験から、年下の扱いがとても上手い。その柔らかさや気配りは、フェルナンドにとって自然に心地よく、思わず甘えてしまいたくなるほどだった。
図書館での彼女は、穏やかにフェルナンドに話しかけるだけで、疲れ切った心を静かにほぐしてくれる。
最初は宮廷での愚痴をこぼすだけだったが、次第に互いの趣味や日常の些細なことを話すようになり、会話は心地よいリズムで続いた。
ある日、フェルナンドが書棚の整理を手伝う中で、手がぶつかって本を落としてしまった。
「あ、すみません……」
「大丈夫です、気にしないでください」
コレットの笑顔は優しく、フェルナンドは自然と照れくさそうに笑った。
幼い兄弟をあやすように年下のフェルナンドを気遣うその仕草に、心の奥でふわりと温かいものが広がる。
日々の会話の中で、フェルナンドは少しずつ彼女の強さと芯の通った考え方に気づく。
家族を支え、名ばかりの伯爵令嬢としての現実を受け止める姿、そしてそれを自嘲気味に笑う柔らかい笑顔――そのすべてが、フェルナンドの胸に静かに響いた。
ある日のこと。宮廷での疲れを思い出して肩を落とすフェルナンドに、コレットは自然に手を伸ばし、頭をそっと撫でた。
「……大変でしたね」
その何気ない仕草に、フェルナンドは心を揺さぶられるのを感じた。
恋心ではない。しかし、確かに心の奥でこの人に惹かれている自分がいる――。
フェルナンドはまだ完全に恋に落ちたわけではない。
でも、図書館に足を運ぶたびに、彼女といる時間が心地よく、離れたくないと思う自分に気づく。
幼い兄弟をあやすように、年下の自分をそっと扱ってくれるコレットの存在は、ますますフェルナンドの心を虜にしていた。
静かな図書館の中で、二人の距離は少しずつ、しかし確実に近づいていった。
――この場所で、少しずつ自分を取り戻せる――
そう思ったフェルナンドは、小さく息を吐き、次に来る日が待ち遠しくなる自分に気づいた。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!
王子はまだ恋に落ちたわけではありませんが、コレットの存在に心地よさを感じ、図書館での時間が少しずつ特別になっていきます。
幼い兄弟をあやすように年下の王子を気遣うコレットの優しさ――この距離感がどのように進展するのか、お楽しみに✨




