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第21話「アレクセイ様の胸で震えるミレイ──王子、完全に戦意喪失」

公爵邸で起こった緊迫の一幕。

王子フェルナンドの焦燥と渇望に対し、アレクセイ様が静かに立ちはだかる。

恐怖に震えるミレイを抱きしめるアレクセイ様の姿から、二人の絆と守る力が見えてくる。


普段は理知的な彼が見せる優しさ──よちよち仕草も──必見です。



公爵邸の客間。


館内の空気は緊張で張り詰め、王子フェルナンドの焦燥と渇望が室内を震わせていた。


そのとき、重厚な扉が静かに開き、漆黒の影が滑り込む。


「――フェルナンド殿下、何をなさっているのですか」


低く、しかし揺るぎない声。言葉以上に存在そのものが威圧となり、王子の体が思わず硬直する。

アレクセイ様が現れた。落ち着いた理知的な瞳が、王子を射抜く。


「アレクセイ様……!」

恐怖と安堵が入り混じったミレイの声に、アレクセイ様は静かに振り返る。


王子が手を伸ばそうとした瞬間、アレクセイ様は一歩踏み出す。

歩くたびに館内の空気が揺れ、王子の心臓は跳ね上がった。


「ミレイは、貴公のものではない」


その言葉は穏やかだが揺るがず、王子の目から希望の光を奪った。


ミレイは恐怖に震えながら、アレクセイ様に抱きつく。

「アレクセイ様……怖かったよぉ〜」


アレクセイ様はわずかに眉を下げ、優しく背中を撫でる。

「よしよし。ミレイ、もう大丈夫だ」


そのまま、微かに体を揺らしながら、抱きつかれたミレイをそっとよちよちとあやす。

ミレイの不安はみるみる溶け、胸の奥に温かい安心が広がっていく。


その光景を目にした王子フェルナンドの表情は、信じられないほど大きく歪む。


「あ……あの……理知的で落ち着いたアレクセイが……!

そして……あの大人びたミレイが……抱きついて――甘えている……!?」


言葉を失い、王子は立ち尽くす。渇望していた温もりを手に入れられず、さらに目の前で二人の幸福そうな姿を見せつけられ、戦意は完全に消えた。


「……俺には……どうしても……手が届かない……」

かすれた声に焦燥も威圧もなく、ただ圧倒される少年のような弱さだけが残る。


アレクセイ様はミレイを抱きしめたまま、静かに、しかし圧倒的な視線で王子を見据える。

「ご理解いただけましたか、フェルナンド殿下。どうか、これ以上迷惑をおかけなさいませんように」


丁寧な言葉遣いと威圧感に、王子は深く頭を下げるしかなかった。


ミレイは安心しきってアレクセイ様に抱きつき、柔らかく温かい幸福に包まれる。

アレクセイ様は優しく背中を撫で、軽く揺らしてよちよちするその手に、ミレイは思わず顔を埋めた。


──公爵邸の客間は、戦慄の嵐が過ぎ去り、静かで甘い安息の時間を取り戻したのだった。



---

王子フェルナンドの戦意喪失と、ミレイとアレクセイ様の深まる絆が描かれた回。

落ち着いた理知的なアレクセイ様が、ミレイにだけ見せる柔らかさ。抱きつかれたときのよちよち仕草も、ぜひ味わってください。

本編の流れの中で、甘く穏やかな二人の時間をお楽しみください。


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