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第17話もどかしさの甘さ 〜紳士と25歳の恋〜

館での穏やかな日々の中、二人は甘く見つめ合いながらも、まだ唇を重ねたことがなかった。

紳士であり続けるアレクセイ様と、そんな彼に素直に甘えるミレイ。

焦れったいほどの愛情のやり取りを、どうぞお楽しみください。



館での甘やかな日々は、言葉にできない幸福感で満ちていた。

膝の上で静かに体を預けるミレイに、頭を撫でる手を止めず、食事や書類の世話までも優雅にこなすアレクセイ様。


しかし――まだ、二人は唇を重ねたことがなかった。


そのもどかしさに、ミレイはひそかにため息をつく。

「どうして……手を……?」


体は十分甘やかされ、心は確かに満たされている。

相思相愛であることも、大切にされていることも、身をもって理解している。

それなのに、なぜ――。


夜、寝室で一人ベッドに座るミレイ。

指先で髪を撫でながら、心の奥底に芽生えた不安をそっと口にする。

「もしかして……私にはそこまでの魅力がないのかしら……」


その思いを拭えず、館の廊下を静かに歩き、マリーのもとへ向かう。

書類を手に眉をひそめるマリーを前に、思わず肩をすくめて打ち明ける。

「だって……アレクセイ様に大切にされているのはわかるのに、キスも、手も、……何もなくて……」


マリーは深く息を吐き、微かに目を細める。

「そもそも、アレクセイ様がミレイ様に心底惚れているのは、誰の目にも明らかなのですよ。何を心配しているのやら」


その言葉に、ミレイは目を伏せる。

「そう……なのね……」

だが、心の奥の小さな不安は、簡単には消えない。


その夜――覚悟を決めた。


部屋で静かに待つミレイの前に、柔らかな足音が響き、紳士然としたアレクセイ様が扉の向こう側からやってきた。


「……どうした、ミレイ」


低く落ち着いた声に、胸が高鳴る。

その声は、まるで心まで包み込むかのように優しい。


ミレイは深く息を吸い、震える声で問いかける。

「……あの……どうして……まだ……手を、出してくれないのですか?」


アレクセイ様は一瞬、驚いたように瞳を大きくするが、すぐに落ち着きを取り戻す。

柔らかくも丁寧な口調で、静かに答える。


「ミレイ……私は、貴女を大切に思うあまり、焦ることができないんだ。

貴女の心の準備が整うまで、ゆっくりと待ちたい――それだけなんだ」


その言葉に、ミレイの胸は温かく満たされる。

「……そんな……でも、嬉しい……」


自然と、いつものようにアレクセイ様の膝に座るミレイ。

沈黙の中、二人の距離はわずかに縮まる。


そして――思わず、ミレイは小さく呟く。

「…もう、我慢できない……」


柔らかな息とともに唇を差し出すと、驚きつつも紳士的な落ち着きを崩さないアレクセイ様。

やがて静かに受け止め、深く口づけ返す。

その口づけは力強くも穏やかで、優雅さを失わない。


唇を重ね合う中で、二人の心は確かに通じ合う。

その夜は、抱き合ったまま口づけを交わしつつ、静かに眠りについた――

甘く、穏やかで、もどかしさを伴った幸福に満ちたまま。



---

読んでくださりありがとうございます。

膝の上で甘えるミレイと、それを優雅に包み込むアレクセイ様。

二人の距離が少しずつ近づく瞬間を、これからもお届けできればと思います。

次回もどうぞお楽しみに。



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