第13話:王子の誘いと嫉妬の視線
王子に誘われ、王城の庭園へ向かうことになったミレイ。
馬車の中でも王子の称賛は止まらず、少し気まずさを感じつつ微笑む。
庭園に到着し歩き始めると、貴族令嬢たちの嫉妬や羨望の視線が注がれる――。
馬車の中、王子の視線は終始自分だけに向けられていた。
「ミレイ様、今日も麗しいです」
「立ち居振る舞いも完璧で、目を離せません」
褒め言葉は尽きず、ミレイは少し気まずくなる。
でも微笑んで礼を返すことで、なんとか体裁を保った。
馬車が王城に到着し、降りて庭園まで歩く。
そこには貴族令嬢たちの羨望と嫉妬の視線が向けられていた。
――見られてる……
歩く間も王子は自分だけを見つめている。
周囲の声や視線を気にせず、一途に自分を見る王子の眼差しに、ミレイは少し複雑な気持ちになる。
庭園に到着して、ミレイはふと訪ねた。
「王子……あの、そういえばお名前をちゃんと伺ってませんでした。何とお呼びすれば?」
王子は微笑みながら答える。
「フェルナンドです」
――(あ、謁見の時に名乗ってくださったのに……)
心の中で思うが、ミレイは小さく肩をすくめて誤魔化す。
「そうでしたか、フェルナンド王子……」
少し間を置き、次の質問を口にする。
「王子は、随分お若いようですね?」
王子は微笑んで答える。
「はい、19になります」
ミレイは思わず小さくため息。若い王子には特別な興味が湧かない。
少しニッコリして言う。
「王子より私は6つも年上なのですね。私よりも、他の素敵な方をお連れになっては?」
しかし王子は真剣な眼差しで答えた。
「年齢など関係ありません。貴方は他の貴族令嬢とは違う。美しく、優雅で、私の見目など気にしていません」
さらに続ける。
「叔父上の側では、貴方には息苦しいのではないですか?叔父上はあの通り真面目な方ですから」
――ムッ、とするミレイ。
その言葉に気分が悪くなり、思わず告げる。
「今日はなんだか気分が悪いので、もう帰らせてください」
王子は少し食い下がる。
「では、侍医を呼びます。私が付き添います」
しかしミレイはピシャリと返す。
「結構です!馬車をお願いしてもよろしいですか?」
王子は仕方なく後ろに引き、去っていくミレイの後ろ姿を静かに見つめた。
庭園には、王子の真剣な視線の余韻と、貴族令嬢たちの嫉妬の視線だけが残る。
ミレイは胸の内で複雑な感情を噛みしめながら、館へ戻った。
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若い王子フェルナンドの真剣な眼差しと、貴族令嬢たちの嫉妬に囲まれながらの一幕。
ミレイの複雑な心情と、王子の変わらぬ一途な視線が交錯する時間を描きました。
館に戻ったミレイとアレクセイ様の、ジレジレ展開もお楽しみに!




