第10話:自らの一歩、そして王子の訪問
今日のミレイは、これまでとは違う――自分からアレクセイ様に近づく決意を固めました。
手作りのお菓子とお茶を携えて、甘く穏やかな時間を過ごそうとする彼女。しかしその甘い空間に、思いがけない来客の影が――。
甘々と緊迫が交錯する、ドキドキの一幕です。
今日こそ――私は、自分からアレクセイ様に近づくと決めた。
――女神様がくださったチャンス、無駄にはできない。
まずはマリーに協力してもらうことにした。
「マリー様、アレクセイ様の好きなお茶や、ちょっとしたお菓子を教えていただけませんか?」
マリーは微笑みながら答える。
「ええ、分かりました。紅茶はアッサムがお好きですし、軽いクッキーやナッツ類もお好みです」
私は小さく頷き、早速準備を始めた。手作りのクッキーも少し添えて――。
午後、館内を歩きながら、胸の奥の高鳴りを感じる。
執務中のアレクセイ様の部屋の前で、私は少し緊張しながらノックする。
「失礼します……」
すぐに扉が開き、アレクセイ様の声。
「……ミレイ、入れ」
心の中で少し安堵しつつ、私は部屋に入る。
テーブルの上にお茶と手作りのお菓子を並べると、アレクセイ様の目にわずかに光が宿った。
――喜んでくださっているのが、一目で分かる。
「……手作りか?」
「はい、少しだけですが」
「君は本当に可愛らしいな。こんなくたびれた男相手では相応しくないとはわかっているが……」
胸がぎゅっと熱くなる。
心の中で思わず叫ぶ。
――んもぅ!私は年の差なんて気にしてないのに!むしろ良いんだから!
甘く穏やかな時間が流れる――と思ったその時、部屋の扉が軽くノックされ、執事の声が響いた。
「公爵様……王子様が館に到着されました。急な来訪で私共も戸惑っております」
アレクセイ様の眉がわずかに動く。
「王子か。いったいなんの用か。まさかミレイに会いに?……よし、お通ししろ」
執事が軽く頭を下げ、玄関へと走っていく。
私は思わず体を固くする。
アレクセイ様は少し息を整え、目の前の私に視線を送った。
――甘々の空間に、突然、緊迫感が差し込んだ。
アレクセイ様との距離を縮めようと一歩踏み出したミレイ。
心ときめく時間は束の間、王子の訪問という緊迫の瞬間が訪れました。
この先、甘く穏やかな時間はどうなるのでしょうか……。次話もお楽しみに。




