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若隠居のススメ~ペットと家庭菜園で気ままなのんびり生活。の、はず  作者: JUN


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ワイバーン戦

 天空のメンバーより後になれば、先へ行く妨害をされるだろう。なので、とにかく急いで、ワイバーン以外のものには目もくれず、走る。

 このルールが不平等だと指摘する声もあったが、

「それならメンバーを増やせ」

などと言う始末で、話にならない。

 天空をよく思っていない探索者達が、

「今だけメンバーになって、ワイバーン以外のものを狙おうか」

とも言ってくれたが、

「これで勝ったら、本当にギャフンと言わせられるだろ」

と言ったら、大笑いされた。

 とにかく、ワイバーンを狩れば問題はないのだ。

 斎賀達もほかの皆も、ワイバーンをどうやったら狩れるのかわかっていないので、できないだろうと思っているのがよくわかる。

 チビが魔力を全開で漏らして走れば、大抵のものは恐れて寄って来ない。

 それでさしたる邪魔もなく、ワイバーンの手前までランニングで到着した。

「フフン。上の階では、混乱したやつらが興奮したまま天空のやつらに襲い掛かってるぞ」

 チビが面白そうに言って笑う。

「向こうはワイバーン以外のものをたくさん狩るつもりだろうからな。まあ、親切じゃねえの?」

 幹彦が笑いながら言い、ワイバーンの姿を探すように空を見上げた。

「ポーションがあるから、死なない限り安心だもんな」

 僕も言いながら空を見てワイバーンの姿を探す。

 ポーションって凄い。

 この階は、草原とまばらに固まって生えている木と池でできている。草原でも、木が目隠しになっていて、見通す事はできない。

「お、いたぜ」

 幹彦が嬉しそうに言う。

 青い空を、悠々とワイバーンが飛んでいた。

 天空は、半分をほかの魔物を狩っておく班に回し、斎賀などの手練れのメンバーをワイバーン狙いにしているようだ。

 少し遅れてこの階に着いた彼らも、ワイバーンを探し始める。

 お互いに別々のワイバーンに目星をつけ、追い始めた。

 それを、見物に来た探索者達が見ている。

「さて。行こうか」

 言って、まずはワイバーンに向けて風の刃を放つ。

「グギャ!?」

 上空のワイバーンを落とせるほどの威力は無いが、気を引いて、こちらをエサと認識させる事には成功する。

「来たぜ、来たぜ」

 ワイバーンはこちらを目掛けて高度を落として突っ込んで来る。

 それに向けて、幹彦が飛剣を飛ばす。するとそれは翼に穴を開け、ワイバーンはバランスを崩しながら向きを変えて逃げようとする。

 そこに重力を増加させる魔術を当てると、ワイバーンは地響きを立てて地上に落下した。

「地上に引きずり下ろしたぞ!」

「いや、それでもこの先どうするか。硬いからそう簡単に斬れねえし、そもそも尾もくちばしも爪もあるから近付けねえ」

「火も吐くし風も使って来るしな」

「魔術攻撃か?でも、耐性も持ってるだろ」

 見学している探索者達が、興奮しながらそう言い合っているのが聞こえる。

 僕は頭の方へ、幹彦は尾の方に、チビは横へとばらけると、ワイバーンは重さにのたうちながら、尾を振り回し、喉の奥に火の球を準備しながら僕達を狙っている。

「いくぜ!」

 幹彦が、刀の刃に魔力をまとわせて尾に振り下ろすと、尾はきれいに切断されて飛んだ。

「ギャア!」

 大きくクチバシが開き、僕はそこに氷の槍を突きたてた。いくら体表が硬くても、喉や体内まで硬くはない。

「ゴオオ!」

 ジタバタと手足を動かし、暴れる。その肩にチビが飛び乗り、抑え込む。

「暴れんなって!」

 幹彦は背中に駆け上がると、刀の刃に魔力をまとわせ、首の付け根に一閃させた。

 それで首は、ゴトリと落ちた。

 一瞬の静寂の後、歓声が上がる。

「ふう」

 幹彦とチビはワイバーンの上から飛び降り、僕は近くに寄った。

「やったな!」

「ワン!」

「おう!」

 言っている間に、魔石と皮と爪を残してワイバーンの死体は消える。

 天空はと見ると、魔術のスキルを得たメンバーが気を引いてワイバーンを近付け、別のメンバーらでロープを足に引っかけて地上に引きずり下ろそうとしていた。

 そしてそれと同時に、斎賀達が寄ってたかって剣で斬りかかる。

 しかし硬い体表に傷はつかず、ワイバーンの尾で薙ぎ払われ、ケガを負う。

 ワイバーンのクチバシがうっすら開き、火が吐き出される。それを盾で受け止めるが、火は受け止めたが、盾を構えていた者はフッ飛ばされた。

 そして、羽をバサリとさせる。それで風の刃が撒き散らされ、ほとんどの者が地に伏せ、血を流す。

 足からロープが外れ、自由を取り戻したワイバーンは怒りを込めた目を天空メンバーに向けた。

「まずいんじゃないか、あれ」

 言うと、幹彦も目を離さずに

「ああ」

と言った。

 ワイバーンが再び、喉の奥に火を吐く準備をするのが、魔力の高まりで見えた。正面は斎賀だ。

 火の塊を吐き出し、斎賀は目を閉じた。

 が、その前に滑り込んだ僕が、障壁を張って火を受け止める。

「助けはいりますか」

 斎賀は答えないが、メンバーが

「助けてくれえ」

と言い、斎賀は

「情けのつもりか!」

と怒鳴った。

「流石に死ぬかもしれないだろうが。意地で仲間を殺す気かよ」

 幹彦がそう言うと、斎賀は首を垂れ、

「……頼む。俺の負けだ」

と絞り出すような声で応えた。

「おう」

 幹彦が刀の刃に魔力をまとわせ、ワイバーンの首に斬りつける。

 ゴトリと首が落ち、体が倒れ、そうして、魔石と皮を残して消えて行った。




 

お読みいただきありがとうございました。御感想、評価などいただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 助けはいりますか? 大事だね 横殴りするなら声かけは必須 まぁ、ライバルに助けられたのはちょっと悔しいとかレベルじゃ無いだろうけど(笑)
[一言] 仲間のために負けを認められる斎賀は良いですね。
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