遺跡型ダンジョン
罠は当然ながら見付けにくい所にある。
そう思って見れば、怪しい箇所というのは見つかるもので、何となく発見できるようになっていく。
まあ、制作したのがずっと昔らしいので、今の「スレた」僕達でなかったらひっかかるのかも知れないし、身長や歩幅も違っていたのかも知れない。
それに、ピーコやガン助やじいが飛んで先行して調べてくれるので、罠にかかる事はなく進んでいる。
慣れて来ると発見が容易くなり、ゲーム感覚になってくる。そうなれば、もし罠にかかっていたらどうなっていたのだろうという興味が湧いて来た。
が、幹彦がそれを読んだように、
「間違っても確認のために罠にかかってみるとか言うなよ」
とクギを差し、チビは
「やりかねんな」
としみじみと言うので、自重する事にした。
調査というなら罠の種類も必要かと思ったんだけどな。
そんな事を考えながらも、罠を避け、出て来る魔物を倒し、地図を作りながら先へと進む。
ダンジョン内はどこかの建物内のようで、一本道の廊下に何本かの廊下が枝分かれするように交わり、所々に部屋があった。魔物は廊下を徘徊するほかその部屋の中にもおり、部屋の中にある宝箱の番をしているかのようだ。
ただしこの宝箱は、本当に何かが入っている宝箱もあれば、宝箱のフリをしたミミックというものもあるし、宝箱そのものにも害のある気体が噴出したりとげが飛んで来たりといった罠が仕込まれている事がある。
「ふむ。小さそうなダンジョンだな」
チビが言うのに幹彦が訊き返した。
「そんなのわかるのか」
それにチビは頷く。
「出て来る魔物で大体の所はな。
ここはゴーレムと罠のみだろう。そういう単一の魔物のダンジョンは大体小さい」
「そう言えば、地下室もスライムのみだったもんなあ」
覚えは無いけど、そういう話だった。
「ここまで出て来た魔物はゴーレムのみ。それも、鉄やら銅やら銀やらで、希少金属というほどのものはなかったよな」
思い出しながら言うのに、幹彦も同意する。
「じゃあ、規模も小さいし危険度も小さいみたいだってことで良さそうだな」
言いながら気配を探りつつ進む。
と、ドアがあり、僕達はドアの前で足を止めた。
アイコンタクトをして、中に飛び込む。
案の定中に魔物がいた。小型のゴーレムで、こちらに攻撃を仕掛けようとした時には僕の火とチビの氷の魔術を代わる代わる浴びせられて、弱ったところを幹彦にあっさりと斬られる。
魔石を拾い、宝箱を見た。
チビがフンフンと言いながら宝箱の周囲を見て回り、
「正面に盾を張っていれば良さそうだぞ」
と言う。
そこで次は、誰が開けるかだ。
ダンジョンができてから宝箱を最初に開ける時はレアが出やすいと聞いている。それでワクワクしながらここまで宝箱を開けて来た。幹彦が開けたものからは、マジックバッグ、希少金属のインゴット、即死魔術を回避する術を組み込んだネックレス、石化を反射するネックレスが出た。どれもなかなかのもので、確かに宝箱を最初に開けただけはあると思う。なのに僕が開けたものからは、矢10本、高級ポーション、そこそこいい剣、安眠枕が出た。
僕のくじ運の悪さを舐めていた。これでもいつもよりは運がいい方かもしれないくらいだ。
「幹彦、頼む」
幹彦は少し迷うようにしたが、僕のくじ運の悪さは昔からよく知っているし、ここでも身に染みてわかったはずだ。
「わかった」
おとなしく宝箱の前に座り、僕は幹彦と宝箱の間に魔術で盾を張った。
宝箱を開けるとカツンと音がして盾に何かが当たり、床に短いダーツの矢のようなものが転がる。先に何か液体が塗られていた。
「毒矢か」
盾を消しながらそれを拾う。
毒は植物由来のアルカロイド性毒物だとわかった。珍しいものではないので、その辺に転がしておく。
そして、幹彦が取り出したものを見た。
「人形?」
幼稚園児くらいの大きさの人形が幹彦の手によって持ち上げられており、幹彦は困惑したような顔をこちらに向けた。




