ダンジョンアタック
順番にダンジョンへと突入していく。
アメリカチームは失敗したもののどうにか死者は少なくできたが、中国チームは何が何でもとがんばったらしく、生還者が少なかった。
そして今度は僕達だ。
自衛隊もダンジョンアタックを訓練にもいいと実施しており、今回の突入班はその部隊だ。流石の練度で魔物を排除していく。
しかし、部隊としていく時にはほかの隊員に合わせて行くのでまとまって進むため、進むのが遅くなりがちだ。そこで、17階を越えた辺りで先導が天空に代わった。
トラや毒蛇が出るが、天空はそれを危なげなく狩って行く。
斎賀もドロップした刀が使いやすいようだ。
「力も魔力も温存しておけ。俺達の名誉にかけて、お前らを送り込んでやる」
斎賀がそう言った通りだ。
幹彦はどこか楽しそうに見えた。
そして、22階からは僕達も合同で討伐に加わり、ようやく29階から下へ降りる階段まで辿り着いた。
この下が、ホノオドリのフロアだ。このダンジョンも近所のダンジョンと同じく、ボスは5階毎で、10階毎のボスはボスだけでワンフロアを占めているというつくりだ。そしてボスのみのフロアの場合、一度倒したら二度と現れず、そのフロアは安全地帯となるらしい。
「よし。行こうぜ、史緒、チビ」
幹彦が肩を回し、リラックスしながらもやる気に溢れた顔付きで言った。
「うん、作戦通りに。幹彦、気を付けろよ。チビ、幹彦を頼むな」
「ワン!」
僕と幹彦とチビで、作戦は練ってあった。計画の上では、うまく行く。
ここでほかの皆は、引き返すことになっていた。後ろで見ているだけでも危ないので、エレベーターの使える25階へ行き、先に1階に戻って待つ予定だ。
「周川。いいか。再戦の約束を忘れるんじゃないぞ」
斎賀が睨みつけながら言う。
何度も「一緒に」「見学だけでも」と言われていたのだが、危なすぎる。目の前で防具に炎を叩きつけて見せ、「これと同じくらい耐火性能があればいいけど」と言えば、諦めた。
僕達のは、まだ地球には出現していない強力な魔物の素材に希少鉱石も複雑な術式も加えたもので、向こうの世界でも一級品だ。こちらの世界の最高ランクとはケタが違う。
まあ、詳しい事は言えないけれど。
「いくぜ」
僕達は階段を下りて、大きなドアの前に立った。
深呼吸して、アイコンタクトの後、幹彦が扉を開ける。
写真も撮れないので証言者の描写頼りになるが、ほぼ間違いはなかったようだ。大きなトリで、全身が燃え盛っている。火の鳥と言われて想像するトリ、そのものと言っていいだろう。
ホノオドリは威嚇するように翼を広げ、こちらを睥睨している。開いたくちばしから炎を吐こうと身構えるのだが、僕達が部屋に入った途端別れたので、とっさに目標を決めかねたように頭を揺らした。
いいぞ。
僕は集中した。
反対側では幹彦とチビがおり、まずはそちらを減らす事にしたらしい。ホノオドリは幹彦たちの方へ頭を向け、喉の奥で炎を起こした。
それに向けて、術式を放つ。それで炎はくちばしの隙間から吐き出される事は無く、ホノオドリはキョトンとしたように見えた。
だがそれと同時にとびかかった幹彦が斬りかかる。体中を覆う炎は、大きくなったチビが展開する氷の魔術で軽減されている。
ホノオドリは慌ててチビの氷を燃やそうとしながら身を引くが、その術式に僕が干渉して反対に氷を大きくした。
ホノオドリを覆う炎は頭と胸を除いてほぼ消え、幹彦はいつも通りにホノオドリに斬りつけた。
「グギャアア!!」
翼の付け根がパックリと開く。
ホノオドリは怒り狂った目を僕達に等分に向けたが、僕達はまたちょろちょろと移動している。
と、僕達の見ている前で、傷口が塞がって行く。
「自然治癒か?」
「フン」
幹彦は不敵に笑い、
「俺だってあるからな。お揃いじゃねえか」
と言いながら飛剣を飛ばした。
ホノオドリはそれをキャンセルしようとしたが、できない。
これで確信できた。ホノオドリは術式に干渉するのだ。魔力や魔素を直接どうこうするわけではない。
ならば、攻撃は飛剣でいける。
僕も幹彦もチビも、まずは推測が当たって安堵した。
だが、それでも勝負は甘くはない。戦いは始まったばかりだ。
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