お宝はどこだ
幹彦たちの方がどうなっているかはわからないまま、僕は盗賊団と洞窟の中に侵入していた。5つの石像の足元にかがまなければ通れないような穴があり、その奥は洞窟になっていたのだ。
床も壁も天井も石を積んで作られており、所々に松明を挿す場所があるが、溶けたロウが固まって残っていた。そこをランプを持った男を先頭にして進むと、広間に出た。200平方メートルくらいだろうか。
更に奥へと続く通路があり、そこに足を踏み入れる。
石の角はどこも丸くなり、かなりの年月が経っている事が推測される。埃と砂が床にある事から見て、あまり人も訪れない場所らしい。
1本道の廊下には所々に部屋の入り口があるが、ドアは無く、中が見える。机と椅子、ベッドと棚らしき木の残骸。そこには朽ちた薄い板、ボロ布が残っていたりする。
やがて一番奥の部屋へ着いた。
そこもやはり扉はなかったが、元ドアだった木の板が立てかけてあった。
中に入ると、薄い板が積まれた棚、ボロ布が入った棚、石でできたしっかりとした机と椅子、ボロ布がかけられた木のベッドらしき台があった。これまでで一番広く、備品も良さそうだ。ここが一番偉い人の部屋だろう。
しかしその奥にも扉があり、その向こうに続き部屋がありそうだった。
手近な薄い板を見ると、紙代わりの木簡のようなものらしく、術式が乱雑に書きなぐられている。無駄の多い術式だが、広範囲に攻撃を及ぼす魔術を考えているようだ。
「こっちだ」
言われて続き部屋へと近付く。
「この術式は、まだ生きてるのか」
少々驚いた。
「ああ。上にある広場に植えられている魔素を帯びた木や草、食虫植物が捕えた動物。そういうのから魔力が流れて来るようになってるらしいぜ」
リーダーが説明する。
「確かに、この線が上に伸びてるし、魔力が流れて来てる」
何年位前の人が考え、作った仕掛けかわからないが、よくできている。
供給された魔力はその続き部屋の真ん中にある陣に流れており、その陣の真ん中には棺桶が安置されていた。ふたは無く、中に横たえられたミイラが見えた。
ミイラを保存するための魔力かと、少し身を乗り出して術式を読む。
「あの棺桶の中にいるのが、魔術士の祖と言われた魔導士だ」
興奮気味にリーダーが言う。
「こう、伝えられている。いつか魔術の祖であり最古にして最高の魔導士が甦る。彼の者は魔術の根源に触れ、魔術の神髄を知る者。彼の者がよみがえりし時、王国は再び現れ、混沌の試練を課すだろう。選ばれた者のみがそれを生き延び、王国に仕えし民となり、王国は世界を統べるだろう」
聞いていた僕は、背筋が寒くなった。
もしかして、甦ってはいけない人だろうか。
リーダーはこちらを見た。
「魔導士を仲間にした俺達は、世界の王だ。それに最高の魔導士だ。少なくとも、凄い魔導書や凄い杖や凄い魔道具も身に着けているに違いない。
じゃあ、手伝ってもらおうか」
嫌な予感がする。
「何をしろと?」
「続きはこうだ。魔導士をよみがえらせるには、優れた魔術士の魔力を捧げよ」
言うや、笑いながら僕の背中を棺桶に向かって突き飛ばした。
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