雪原の戦い
雪女は雪の弾を投げつけて来た。それに対して火の弾を飛ばすと、それらはぶつかり、爆発のようなものを起こして視界を奪った。
しかしその中で幹彦とチビは飛び出しており、雪女に姿を見せないまま接近して、刀と爪を振るう。
だが雪女はそれに気付き、とっさに氷を生み出して盾にした。
「チッ」
氷に阻まれて攻撃が届かない。
その氷の盾に向かって、火の弾ではなく、火炎放射のように炎を浴びせかけた。それで盾は溶けて行き、溶けた瞬間を狙って、幹彦は刃に魔力をまとわせて斬り込んだ。
ゴウッと冷気の息を吐きつつ、雪女が幹彦に向き直って剣を振り上げるが、反対側に潜んでいたチビが飛び掛かって攻撃を加えると、雪女は態勢を崩しながら、氷の槍を上空に飛ばした。
「幹彦、チビ!こっちだ!」
言いながら飛び出すと、即、幹彦とチビが走り寄り、僕は僕達の上に障壁を張った。そこに雨のように氷の槍が降り注ぐが、それを全て防ぐ。
防ぎながら、こちらも再び火を放つ。今度は半径8メートルはあろうかという弾で、雪女は盾で防ごうとしたが、盾の向こう側にも火が入っているので効果はない。
「アアアアア!!」
雪女は体を揺らし、冷気と氷を吐き出し、逃げようともがく。
そこに幹彦が飛びかかって斬りかかると、雪女は倒れ込み、首にチビが噛みつく。
雪女が倒れ伏すとこれで終わりかと思われたが、冷気が強まり、雪の上に落ちていた剣が浮くと、僕の方へと飛んで来る。
「史緒!?」
「大丈夫!」
薙刀で剣を打ち払うと、幹彦とチビがホッとしたような顔をし、雪女は悔しそうに顔を歪め、そのまま溶けるように崩れた。
しばらくそのまま様子を見たが、雪と氷の残骸は消え、魔石と氷のような短剣を残して消えた。
短剣をよく見ると、説明が頭に浮かぶ。
「ジャックフロストの短剣?雪女じゃなかったのか。
これで斬りつけるとそこから凍り付くんだって」
チビが小声で解説する。
「ジャックフロストは、女の姿や老人、雪だるま、色んな姿で現れるからな。今回は女だったわけか。
ジャックフロストの持つ剣は、斬られたところから凍り付いて凍傷になるぞ」
僕も幹彦も、誰も剣に当たらなかった事にほっとした。
そんな僕達の背後から、声が聞こえた。
「嘘よ!」
振り返ると、剣の女の子が目を見開いてこちらを見ていた。
短剣の女の子がポーションの空瓶を手に立ち上がり、足を何度か踏み下ろし、異常が無いとみて、杖の女の子がホッと肩から力を抜いた。大鎌の女の子はそんな仲間達を黙って見ており、ファンの男達は腰を抜かしたように座り込んでいた。
そして杖の女の子が、ためらいながら言う。
「その、申し訳ありませんでした」
しかし剣の女の子が叫ぶ。
「そんなわけないじゃない!動物を連れたやつら、見たでしょう!?あいつら!」
「ビビアン!」
大鎌の女の子が割って入り、剣の女の子が唇を噛んで黙った。
短剣の女の子は頭を掻きながら、気まずそうに言う。
「ああ……こっちの早とちりだったみたいだな。悪い。迷惑かけたかな」
それに僕達はムッとした。
「かかってないと思うのか?どう思うよ」
ファンの男達は幹彦の視線を受けて、気まずげに下を向いた。
「いやあ、この辺で動物を捨てゴマにするチームがいてさ。しかもあいつら、動物を使う前はチームを組んでない弱いヤツを使っててさ。ビビアンもそれで殺されそうになったんだよね。それで私達、動物を使うチームは皆そんなものかと早とちりしてさあ」
幹彦はフンと鼻を鳴らした。
「それは猟師にも失礼すぎるだろうし、皆がそんな事をするなんて決めつけるなよな。文句はそのチームに言えよ」
ファンの男達が口々に反論する。
「あいつら強いし、抗議したって!」
「そうだよ!言えるわけないだろ!」
「知らないくせに!」
「だから、噂とかを流して、ここから追い出したんだ!」
それにウンザリしてしまう。
「弱そうな相手になら言えると?僕達の事を知らないくせに、よく勝手に決めつけて言えましたね」
それで彼女らも彼らも口を閉じた。
僕達は顔を見合わせ、
「じゃあな」
「これ以上根も葉もないうわさを広めるなら、名誉棄損で訴える事も考えますので」
「ワン!」
と言い、その場を後にした。
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