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【マンガボックス・コミカライズ連載スタート(7/5)】戦犯勇者の弟妹  作者: アニッキーブラッザー
第三章(三人称)

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第65話 子供たち

「1、2、1、2、1,2、1,2! 全体止まれ! ネオ魔王軍整列だー!」


 それは王都の広場の片隅でのこと。

 子供用の訓練で使う木剣を持った、幼い少年少女たち10名。

 魔人族、獣人、多様な種族の子供たちで構成された、ネオ魔王軍。


「ねえ、ヒート。なんで今日はこんな端っこなの?」

「そーだよ、いつもは中央の噴水前で朝会だろ~?」


 と言っても、当然それは公式に認められているものではなく、あくまで子供たちがやっているゴッコ遊びのようなもの。

 ただし、子供たちは子供たちなりにやる気満々で真剣ではある。


「うう~~、そうなんだけど、今日言われたんだぉ! 昨日の件で、街が壊れてて朝から瓦礫の処理とか復旧で皆が走り回ってるから、今日は端っこに行ってろって」

「えー、ひどい! 私たちもお手伝いとかパトロールとかしたいのに」

「昨日の僕たちの大活躍を、大人たちは知らねえのかなァ?」

「そーよ。走れないお年寄りとか、私たちがお手伝いしたのに!」

「ヒートなんて、八勇将に攻撃だってしたもんな?」


 ボーギャック達の襲撃で、王都は陥落することはなかったがそれなりに爪痕は残っていた。

 今は兵士や民が協力し合って街の復旧作業、ケガ人の手当てやらを含めて朝から忙しくしていた。

 そんな中で子供たちにチョロチョロされても邪魔だから……


「おー、ヒート坊ちゃんたち、今日もネオ魔王軍ですかい? ただ、今日はみんな忙しそうなんで、パトロールや訪問はお控え下せぇ」

「ごめんねー、おばちゃんも家の片づけが忙しくて、お菓子あげられないの~」


 と、道行く大人たちはクスクス笑いながら、そんな感じであった。

 だが、それは子供たちにとってはプライドや沽券に関わるもの。


「くっそー、みんなして俺たちを子ども扱いしやがって~!」

「ほんとですね~、将軍。ここらへんで僕たちの存在感をもっと民衆にアピールし、ネオ魔王軍が魔界の期待の新戦力だと知らしめないとですね~」

「ああ、今日はそこら辺の作戦会議しようぜー!」

 

 自分たちも戦いたい。活躍したい。英雄になりたい。褒められたい。

 色々な思惑があるものの、それなりに真剣である彼らは、いかに自分たちの存在感を示すかを真面目に話し合おうとしていた。

 すると……



「あ、いた。おーい」


「え? ……あっ!?」


「「「「「あっ!!!!」」」」」



 ネオ魔王軍の一団を上空から見つけたジェニ。飛行しながらゆっくりとヒートたちに向かって降りてきた。

 そのジェニを見つけ……


「ジェニ、遅いぞ! お前も幹部なんだから時間厳守だぞ!」

「あ、ジェニちゃんだー!」

「おーい、ジェニちゃん、おはよー!」

「うわ、昨日の……すげー、ジェニがきたー!」

「わ……わわ、キンチョーしてきた」


 受け入れの声を上げて出迎えたのだった。


「時間? ナニソレ? 聞いてない」

「え? 何言ってんだ、ネオ魔王軍は毎朝パトロール前の朝会があるんだぞ?」

「……知らない」

「あ、ヒートくん、ジェニちゃんにまだネオ魔王軍のルール教えてない……」


 そう、すでにヒートはジェニをネオ魔王軍の幹部にすると宣言してたので、来るのはもう当たり前だということになっている。

 しかし、それ以外の子たちからすれば……


「すっげ~、昨日の……本物だよ」

「ああ、八勇将をスゲー魔法でドカーンって倒してたよな?」

「うわー、すご~い、今も飛行魔法で飛んできてたよね?」

「カッコいー」

「……か、かわいい」


 ゴッコ遊びではなく、実際に人類の八勇将を倒して魔界を救った英雄の一人であり、彼らからすれば憧れの存在にもなっていたのだった。

 そのため、どこか少年少女たちは緊張していて、モジモジしている。


「あの、ジェニちゃん……」

「ん?」

「昨日……た、助けてくれてありがとう……その、ジェニちゃんのお兄ちゃんにもお礼を……」


 そんな中、最初にジェニに話しかけたのはリロだった。

 もし、ジェニとエルセがいなければどうなっていたことか。

 しかしジェニは特に変化なく……


「大丈夫。さっき、お礼貰った。おとーさん? シンユーっていう人きてお礼貰った」

「え、おとーさまが?」

「ん。で、これもらった……みんなにもあげる」


 そう言って、ジェニは持ってきた箱を開けて中を皆に見せる。


「わ、すごい! これ、ゴッドディバのチョコレートだァ!」

「おおお、くれるの?」

「ほしい!」

「やった、ありがと、……えっと、じぇ、ジェニちゃん?」


 もともと子供たちは「人間」、「戦争」、「八勇将テラ」というものをよく分かっていないこともあり、ジェニを受け入れること自体に抵抗感はなかった。

 お菓子で目を輝かせた子供たちがすぐにジェニへ駆け寄り、距離もすぐに縮まり、

 


「よ、よーし、兵糧を確保したってことでジェニは許してやる! それと、みんな! 今日からジェニは俺たちネオ魔王軍で、ジェニはいきなりだけど大幹部だからな! いいな!」


「「「「「おおー!」」」」」


「うん、えっへん<(`^´)>」



 仲間の一員となったのだった。

 ただし……


「うわ、ほら、あの子は昨日の……」

「ジェニって言ってたよな? あのスゲー魔法使い……八勇将よりも強くて……」

「一応、お礼を言った方がいいんじゃないか?」

「だよな……で、でも、なんつーか……大丈夫かな? まだ子供だろ? その辺を歩いてて」

「ああ……八勇将よりも強いんだぞ? ちょっと怒って魔法使っただけで王都がふっとぶし……」

「子供同士で喧嘩したりしたら、それだけでこの街は……」


 周囲の大人たちは、昨日はエルセとジェニを英雄として称え、今でこそ「憎きテラの弟妹」として直接的な目に見える憎しみは潜めているものの、「ジェニがちょっと癇癪起こすだけで街は消し飛ぶのでは?」という違う不安が生まれ、何も分からず純粋に笑い合う子供たちの様子に、気が気ではない雰囲気が漂っていた。



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