第八話 洗濯に打ちのめされる少女
目論見を台所に阻まれた梓でしたが、頭を撫でてもらえてご満悦。
そんな梓を打ちのめす次の刺客は『全自動洗濯機』。
どうぞお楽しみください。
ソファに座り直した私は、必死に考えを巡らせる。
『できるお嫁さんアピールでお兄ちゃんとラブラブ大作戦』は、初日にして大きな壁にぶつかっている。
お城みたいなお家に住んでいて、機械が『お帰りなさい』も電気もやってくれる。
お掃除もお料理も、機械がやってくれちゃう。
後私にできる事は……。
! そうだ!
「お兄ちゃん、お洗濯のやり方教えてくれる?」
「あぁ、洗濯物なら脱衣所に出しておいてくれたらまとめて洗うよ?」
「……そ、それはちょっと恥ずかしいかな……」
「え? あ、そうだよな。梓も女の子だもんな。ごめんごめん」
もう! お兄ちゃんったら!
優しいのは嬉しいけど、女の子の気持ちに疎いんだから!
「じゃあこっちに来て」
「うん」
手招きするお兄ちゃんについて行くと、白で統一された部屋に着いた。
洗面台に奥に続く扉。
きっとお風呂だからここは脱衣所かぁ。
……脱衣所だけで実家の私の部屋くらいあるけど、気にしたら駄目だ。
「これが洗濯機。洗剤と柔軟剤はここにあるから、ここを引き出して入れてね」
「う、うん」
何これ!? これが洗濯機!?
何で扉が横に付いてるの!?
お水溢れちゃったりしないのかな……?
それにこれ、服を入れるところが一個しかない……。
じゃ、じゃあ洗濯槽と脱水槽をうまく組み合わせて、二回分の洗濯を一回でできる技とか、出番なし……?
あ! そんな事よりも!
「あ、ありがとう。で、洗濯したのはどこに干せばいいの?」
大事なのはここから!
洗濯は機械がやってくれても、干すのは無理なはず!
これなら私はお兄ちゃんの役に立てる!
「ん? あぁ、この洗濯機は乾燥までやってくれるから、干す必要ないんだ」
「えっ」
うそおおおぉぉぉ!
何でそこまでやっちゃうの!?
「雨でも関係なく洗濯できるし、殺菌と消臭もしてくれるから、すごく便利なんだ」
「そ、そう、なんだ……」
シワにならない服の干し方とかいっぱい練習したのにー!
「他にも靴の脱臭機能とかもあってさ」
「す、すごいね……」
嬉しそうに機能について話すお兄ちゃんの明るさとは裏腹に、私の気持ちは暗く落ち込むのだった……。
読了ありがとうございます。
我が家も乾燥機付き洗濯機ですが、どうしても太陽に干したくて乾燥機能はたまにしか使ってません。
旧人類と笑ってください……。
次話もよろしくお願いいたします。




