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終章 帰ってきた日常④

「げ! この派手なバイクってお前のだったのか?」

 驚きの声に振り返ると、見慣れた顔の男子学生二人組がいた。

「おぉ、和也と雄二じゃん」

 孝二が二人の名を呼ぶ。彼らは中学からの友人だ。

「へへ~ん。いいでしょう」

 優は二人に自慢のバイクを見せびらかす。

「……別にいいとは思わねえよ。こんなの街中走れねえし。まぁ、ヘンテコ兄弟にはぴったりかもな」

「ヘンテコって……まだそのあだ名生きてたのかよ」

 和也の言葉に孝二は顔をしかめる。

「ヘンテコ? 何それ?」

 和也の隣の雄二が、そう尋ねる。和也はバイクの車体をつつきながら、答えた。

「あぁ、お前は知らねえか。こいつら二人の名字が変だからよ。だから中学の時ヘンテコ兄弟って言ってたんだ」

「懐かしいわね」

 和也の言葉に千里がクスクスと笑う。

「ヘンテコ? そういえば二人の名字ってなんだっけ?」

 雄二の問いに、和也は孝二を指さしながら答える。

「えっと、まずこいつが『轟』で」

 そして優に指先を合わせ、その名字を言った。


「そんで、こいつの名字が『杉山竜』なんだよ」


「杉山竜って、それ完全に一つの名前じゃん」

 雄二は思わず吹き出していた。

「……悪かったね。バランス悪い名字で。本当嫌になるよ。バイトの先輩にはずっと『杉山』って言われてるし」

「まぁ、元気に生きろ」

「言われなくても。もう轟、千里ちゃん。早く行こう。はい、ヘルメット」

 バイクのエンジンがかかり、轟音が鳴り響く。

「それじゃあな」

 和也と雄二が手を振る。バイクに跨った三人はそれに肩越しに手を振り返した。

「もう気分悪くなったよ。がんがん飛ばすよ!」

 優の乗ったバイクはどんどんスピードを上げていく。

「ちょっと飛ばしすぎだって!」

「聞こえな~い」

 冷たい風がどんどん体を突き抜けていく。孝二は必死に優の肩をつかんでいた。

 ふと孝二は千里のことが気になり、ちらりと背後を見る。

 千里は満面の笑みを浮かべ、片手を振り上げていた。

「一番楽しんでんじゃねえか!」

「え、な~に?」

「何でもねえよ!」

 孝二はそう言うなり、同じように片手を振り上げた。

「お、二人とも乗ってきたね!」

 爆音を轟かせ、バイクは無限の道を滑走していった。

 孝二は風を感じながら、優の肩をつかむ自分の手、そして自分の肩をつかむ千里の手をしっかりと意識する。

 ――日常が、

「日常が戻ってきた!」

 満面の笑みでそう叫んだ。それは孝二が久しぶりに浮かべた笑顔だった。




END

あとがき


読んでいただきありがとうございました。

この作品は中学の時に書いたものを加筆修正したものです。

初めは誤字脱字や話の矛盾点、全体のバランスがひどく、とても読めたものじゃありませんでした。話の筋は変えていませんので、今の完成品でもあまり変わり映えしませんが(笑)

こんな駄作ですが、それでもあなたの中に何かしらの思いが残ってくだされば幸いです。

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