五章 歪んだ日常⑪
「ひいっ!」
孝二の顔を見た瞬間、鍵山は思わず悲鳴を上げた。
大きく開かれた二つの眼。額からあふれる血。孝二の顔にべっとりと纏わりつく血の隙間から覗く二つの眼球。そしてその額に、黄金の輝きを持って見開かれた第三の眼。
それら三つの眼が、完全に鍵山をとらえていた。
鍵山は恐怖のあまり、口をパクパクとさせる。孝二は傍らの木刀を手に取り、その口をゆっくりと開いた。
「鍵山ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うあああああああああああああああああああああああああ!!!」
孝二は鍵山に向かって走りだす。周りで控えていた男達が孝二の前に立ちはだかる。
「邪魔だっ!!」
孝二は遠慮なく立ちはだかる男達の顔面に木刀を振り下ろしていく。重い打撃音と、鼻の骨が折れる感触をその手に感じながら、孝二は前へと進んでいく。
「何とかしろ! 奴隷共!!」
鍵山はそう叫びながら、必死にその場から逃げようとする。だが、腰が抜けてしまったのか、その場で無様にもがくことしか出来ない。
「鍵山ああぁぁ!!」
荒々しい息と共に、鍵山の前に孝二が立ちはだかる。
「殺す!! 手前だけは絶対にな! 絶対に……絶対に許さねぇ!!」
見開かれた三つの眼。鍵山が悲鳴を上げる前に、木刀がその顔をなぎ払う。
「殺す……殺す……殺してやる……」
孝二の背後で、男達が動く。孝二は後ろを振り返ることなく攻撃をかわし、的確に、かつ容赦なく男達を叩き潰す。
「全部分かるんだよ」
様々な方向からの攻撃。だが、それらは一切孝二に命中することなく、むなしく空を切る。そして孝二の的確なカウンターで次々と男達は戦闘不能になっていった。




