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四章 戦士と奴隷⑮


「お前、最低だな」


「……え?」

 孝二はベンチから立ち上がり、鍵山の前に立つ。

「と、突然どうしたんだい? そりゃあ、ちょっと遅れちゃったけどさ。大事な準備があったんだよ」

 突然の孝二の言葉に鍵山は動転している。

「知っているよ。何もかもな」

「はは……どうしたんだよ。そんな怖い顔して」

 鍵山はそう言いながら、右手を素早く掲げる。

「知っているよ。それもな」

 孝二はそう言うなり、体を横にそらす。途端、孝二の背後から木刀が振り下ろされ、先ほどまで孝二の頭のあった場所を空振る。

「!!」

 鍵山は後退しながら右腕を振る。周りから無数の学生たちが姿をあらわし、孝二に襲い掛かる。

「知っているよ。全てを!」

 学生たちは我先にと手に持つ獲物を孝二に振り下ろしてくる。だがそれらの攻撃は孝二の体をかすめることもなく空を切る。

 孝二は四方八方の攻撃をすべて紙一重でかわしていた。

「なっ! 何で避けられる!?」

 鍵山は驚愕の声を上げ、その場から駈け出す。

「逃がさねえよ」

 孝二は学生の一人から木刀を取り上げ、それを鍵山に向けて思いっきり投げる。

投げられた木刀は鍵山の頭部に命中。間抜けな声を上げ、鍵山はその場に倒れた。

孝二は鍵山に素早く詰め寄ると、その腹部目掛け、蹴りを放った。

「がふっ!!」

「どんな気分だ? 家畜みたいに這いつくばる気分はよ?」

 背後からの学生の攻撃。孝二は無言のままそれをかわすと、その学生の顔面を殴り飛ばした。

「……な、何で奇襲が分かった!? 何で攻撃を避けられるんだ!?」

 鍵山の叫び。孝二は足もとの木刀を拾い、鍵山に顔を向ける。

「見えてるからな。何もかも。事前に分かっていれば避けるのは簡単だ」

「っ! その額に……あるものは……!!」

 鍵山はひきつったような悲鳴を上げた。孝二の額に、奇妙な紋様が浮かび上がっていたからだ。

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