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四章 戦士と奴隷⑫

「……おい、俺の名前は轟孝二だぞ」

「うん? それがどうしたの?」

 鍵山は笑みをそのままに言葉を返す。

「俺を優と間違えてないか?」

「いや。あの女たらしには興味ない。ターゲットは君だ」

「なんで俺が――がっ!!」

 孝二は突然背後から衝撃を食らい、その場に倒れた。

「悪いけど、時間がないから長話している暇はないんだ」

 背後を確認すると、木刀を持った男子学生が生気のない眼で孝二を見つめていた。

「お前……雄太か?」

 背後の男子学生は答えない。孝二は痛む頭を右手で押さえ、周りを見渡す。

 孝二の周りを取り囲んでいる、学生たち。その半分は孝二の知っている顔があった。

「……どうなっているんだ? なんでこいつらが――」

 孝二の元へ近づいていく足音。視線を向けると、鍵山がこちらに歩いてきていた。

「不思議かい? 不思議だろ? でも君はこの答えを見つけられない」

 鍵山は孝二の傍らに立つや否や、その腹部目掛け、蹴りをぶち込んだ。

「ごふっ!!」

 空気の漏れたような音が孝二の口から洩れる。

「吐き気がする? 死にそう? でも君は助からない」

 鍵山は孝二の髪をつかみ上げ、顔を近付けてくる。

「あぁ、みじめだね。汚い。とても汚い。千里ちゃんにも見せてあげたいね」

「あぁ?」

 孝二は目を見開き、鍵山の顔を見返す。

「……手前、何だってんだ? 俺が何をした? 千里が何の関係がある?」

「何をした、だって?」

 鍵山は表情を一変させ、孝二の顔を地面に叩きつけた。

「屑が! 死ね! 何で手前みたいな奴が!!」

 鍵山の行動と同時に周りの学生たちも動き出した。一切手加減することなく、それぞれが手に持つ獲物を孝二に向って振り下ろしていく。

「はは! やれ、奴隷共! こいつを殺せ!」

 鍵山が一歩下がり、そう叫ぶ。周りにいた全ての学生たちが、我先にと孝二のもとに群がり、私刑の輪の中に加わっていく。

 鍵山はベンチに座り、その光景を肩を揺らしながら眺めていた。

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