三章 ピンクなアミーゴ⑪
「おや、あなたも襲われたのですか?」
突然の声。結香は煙草をくわえたまま、振り返る。
そこにはピンクの物体が存在していた。
「ピンク!?」
結香は目を見開き、驚きの声を上げる。
「ピンクではありません。ペディです」
「あ、あぁ、ペディさんか」
結香は息を吐きながら、自分を落ち着かせる。やはり何度見ても慣れるものではない。
「驚かせないでよ」
「驚かせるつもりはありませんでした」
ペディはそう言いながら、ずるずると両手で何かを引きずる。よく見ると、それは気を失った男子生徒だった。片手に三人ずつ、計六人を引きずっていた。
「……どうしたの、それ?」
「いきなり襲いかかってきました。説得しても言うことを聞かなかったので、気を失わせました」
ペディはそう言いながら、両手の六人を一つのベッドに放り込んだ。
その時、再び扉が開く。ペディと結香が顔を向けると、一人の人物がゆっくりとした足取りで、入ってきていた。
「……失礼します」
その人物は、そう言って、一礼する。どこか、眼に悲しい光を宿していた。
「おや、杉山隊長ではありませんか」
ペディはそう言って頭を下げる。杉山と呼ばれた、その人物は口に微小を浮かべ、言った。
「相変わらずですね、ペディさん。それと頭を下げるのは止めてください。隊長とはいえ、ペディさんのほうが先輩なんですから」
「変な謙遜は逆に嫌味だぞ。杉山竜」
結香はニタリと口元を歪ませながら言った。
「若くして、部隊長に昇格出来たんだ。しっかりと胸を張れ」
結香は煙草に火を付ける。
「それで――どうした? この奴隷共の説明でもしに来たのか?」
結香は、足もとの男子生徒をつかみ上げ、気絶した六人が固まっている一つのベッドの上に、放り投げた。
「はい。緋川隊長が言っていました。敵が目立つ動きをした時が、決行の時と」
「……ほぅ」
「早いですね」
結香、ペディ、共に小さく息を吐く。
「時間は?」
「今夜。そうなるよう、隊長が仕向けました」
「久しぶりに腕が鳴りますね」
杉山竜は頷く。
「今夜六時。その時にチームの皆を、ここに集合させてください」




