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一向に門を開けようとしない門兵長に悪びれた様子はない。それは催促をしても変ることはない。
話してすぐに感じた、この門兵長は良くない。賄賂を求める態度であれば手元の金を幾らか渡しておしまいだ。だが渡そうとして裏目に出たら、と考えると動けない。その辺りの機微がわからない二人には優れた門兵か、腐った門兵かはっきりさせないこの男は組みづらい。
二人の騎士が現れ、非常時を告げているにも関わらずこの落ち着き。さらに騎士そのものに疑いをを抱いている、かもしれない。上級に求められる処世術なのかもしれないが、ハッキリさせない態度のやり難いこと。
(・(エ)・)「武家十位ネーヨ様」
門兵長がわざとらしく所属と序列をつけてニシカワの方を向く。
(・(エ)・)「私の様な仕事をしていると、役人みたいな事まで覚えてしまうし、それと違うものを見るととても気になってしまいまして」
(^ω^ )「なんだお」
ニシカワは自分の動悸が一気に加速していくのを感じていた。
この短刀だけで二人を切り倒し、門を開けて外へ出られるだろうか。いや、きっと詰め所の中にはあと数人いる。訓練を受けた兵が相手、シューを庇いながらとなると厳しいか。
ニシカワの頭の中はそんな事を考え始めていた。
(・(エ)・)「たしか、昨年にネーヨ様は九位になられたはず。しかしまだ騎士証は十位のなので、それがどうしてなのかと不思議に思っておりまして。騎士証も使いから届けられているはず。ですがなぜ、古い十位の騎士証を」
口調とは異なり、姿勢を崩さない門兵長からは、どれだけ時間を掛けても答えを待つという意思を感じる。
(^ω^ )「……おっおっ」
ニシカワは言葉につまり、質問に対する答えよりも、腰に隠していた短刀の方に手を回すべきかを考え出す。
lw´- _-ノv「武士の評定は二年後、そこで初めて王より下賜される騎士証こそが己が身分を証明するもの。使いより受け取った仮の騎士証を持ち、より高い序列であると見せる恥ずべき行いを、誰よりも自身を律する武家の騎士がすると思うのか」
強い語気で言い放ったのはシューだった。
(・(エ)・)「それは失礼を。卑しい身ゆえ、高貴な方の感覚が分からないもので」
そう言った門兵長の顔は最初と何も変っていない。
lw´- _-ノv「よもや、そのような考えで一刻を争う我らの足を止めたのか。本来ならその首で済む話ではないぞ。だが、今は何より時が惜しい。沙汰は追ってだ。早く門を開けよ。今、この一瞬が後の歴史を分ける」
これまで、どうしても変わらなかった門兵長が初めて、難しい顔を見せる。
自然に浮かんだというよりも作った様なものだったが、初めて別の表情を見せた印象を二人は受けた。
(・(エ)・)「分かりました。開けましょう。夜間に開けるなど、過去に一度も例はありません。ですが、特別。国、民のためであれば」




