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ブーンが兵士になるようです  作者: カジ
八話
44/50

8-7

名残惜しむように、自分を奮い立たせるようにアオを撫で、立ち上がる。いつもより体が重く感じてよろめいたが、アオが首を伸ばして支えてくれた。


lw´- _-ノv「ありがとう。……元気でいるのよ。出来るだけ守ってあげてね、あんまり賢い方じゃないみたいだから」


一歩一歩に時間を掛けて戸の前に立つ。


力を込めて、一気に引こうと息を吸う。


(^ω^ )「おっおっ」


眼前にニシカワの顔が現れた。


(^ω^ )「危ないところだったお」


体を捻って倉庫内に滑り込むと戸を閉める。そのまま先程、座っていた辺りを中腰で歩き回っていた。


(^ω^ )「あぁ、合ったお」


手には騎士証が握られている。


(^ω^ )「せっかくシューが確認してくれたのに忘れて帰るところだったお」


lw´- _-ノv「そう。そうね。それを忘れたら大変だもの、しっかりと持っておいて。ドクオの様に忘れたらダメよ」


(^ω^ )「おっおっ」


大げさに騎士証をしまうところをシューに見せる。


lw´- _-ノv「……ねぇ、私はあなたの役に立っているかしら」


(^ω^ )「当たり前だお。ブーンは文字は全く扱えないし世情にも疎くて参っちゃうお。シューにどれだけ助けられているか分からないお」


「何でもないわ。忘れて」と言うより早くニシカワが答える。


(^ω^ )「それに、シューが居なかったらきっといつまでも、この倉庫で時間を潰して、年だけとっていってたお。それかここが見つかって終わりか、どっちかだお」


(^ω^ )「……じゃあ、今度こそ帰るお。ちなみにブーンの予想だとここ数日で多分出発になるお。準備は忘れずにしておくお」


ニシカワは気恥ずかしそうに戸へ向けて早足で向かう。


今まで自分の体の中にあった、とても重くて、とても邪魔だったモノがスッと消えていた。


なんて事のない言葉だが迷いを払うのには十分だった。


決死の覚悟の末に生んだつもりだった考えは容易く崩れ、今はただ、彼について行こうと思っている。


そんな自分が腹立たしくもあり、好ましくもあった。


lw´- _-ノv「あなたこそ、忘れ物をしないようにね」


ニシカワは照れたように、少しだけ笑って見せて外へ出て行った。


まだ薄暗いうちに屋敷を抜け出す。


日が真上に来るよりも前に、騎士が「馬の準備をするように」と、尊大な態度で言い放った。


その時のニシカワには、いつものような騎士に対する不快感は無かった。


今日でこの街でのすべてが終わる。そう考えると、様々な感情が湧き出して騎士の態度など小事であった。


(^ω^ )「……こんなところかお」


倉庫の近くに用意しておいた小瓶から獣の血を垂らして道を作ると、今度はボロ布で上からなぞる。


そして前回と同じように柱に縄をくくりつけると、足早に屋敷に戻る。


ニシカワが馬房に付いて間もなく、鐘が鳴り出した。


急いで香をほんの僅かだけ用意し、馬の鼻先に差し出す。


最初は嫌がっていたが、ニシカワが何度も謝りながら逃げた先に持っていくと、諦めた様に大人しくなった。


生気が抜け、物の様に動かない体を撫でながら騎士を待つ。


(^ω^ )「ほんの少しの我慢だお」


予想通り、騎士はすぐに馬房に来ると馬に跨り、乱暴に街へ出て行った。


護衛はニシカワよりもいくらか年上の兵士を2人連れて行た。


七号に迷惑を掛けまいと彼が不在の時だけを狙っていたがこうもすぐに好機が来るとはニシカワ自身驚いた。


前回、アオが盗まれた一件で七号は騎士に対して馬で出る事を控える様にと進言していた。


実質、この家を取り仕切っている筆頭である七号の言葉を無碍にはできないため、さすがの騎士も我慢していたようだが、騎士に代わって七号が交渉ごとに出るとすぐに馬房へやってきた。


余程走る事に飢えていたのか、すぐに二人は引き離され、騎士は一人で闇の中へ消えていくのが、馬房の2階から見えた。


明かりが漏れない様、紙で包み込み小さな火を灯す。


(^ω^ )「準備は良いかお」


夜に互いが合うのは何か違和感がある。これから大仕事をするにも関わらず、それはしっかり感じられた。


lw´- _-ノv「えぇ」


シューが小脇に抱えられそうな革袋を二つ、軽く叩いてみせる。


もしかすると、あれも必要これも必要と大量の荷物を持ってはこないかと心配していたが杞憂に終わった。


(^ω^ )「おっおっ。それじゃあブーンはこれから馬を連れて来るお。そしたら一つ二つ準備をしてすぐに出発だからこれに着替えておくお」


シューと同じ様な二つの革袋のうち、一つを置いて中を取り出す。


lw´- _-ノv「……随分良いものを揃えたのね」


目利きの様に、渡された男装用の着物を見つめる。


(^ω^ )「なんてったって騎士だお。良いものを着てないと怪しまれるお」


lw´- _-ノv「……そうね」


シューは納得した様に答えると、着物を体に当て大きさを確認し始めた。


(^ω^ )「じゃあ、また後でだお」


ニシカワがもう一つの革袋を慎重に置くと、素早く待ちの中へ消えていく。

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