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出来るだけ、不正に関してはシューを関わらせたくなかった。それに、何かがあってギコに迷惑を掛けたくもない。下手をすれば、しぃにも火の粉が及ぶかもしれない。
何度か食い下がられたが、ニシカワは「秘密だお」と答えるだけだった。
lw´- _-ノv「……えぇと」
納得はいかない。だが、何度聞いても教えてはくれないと悟った様子で、シューが手渡された小包に視線を向け、中を取り出す。
十位ジョーンズと書かれた上質な紙に、公家を表す印が押されているものが一つ。
一面は黒で染められ、文字と印の白色が良く映える。
十位ネーヨと書かれた同じ様なものがもう一つ。こちらは文字と印は武家を表す紫色だった。
lw´- _-ノv「本物なんて見たことないから、細かいところは分からないけど」
シューは表と裏を何度もひっくり返したりしながら話し出した。
lw´- _-ノv「一応書かれている内容は、騎士である事を王が証明するものね」
(^ω^ )「なら大丈夫だお」
ニシカワの声は安心したのか幾分柔らかなものになった。
lw´- _-ノv「もしかしたら、本物とは全然ちがうかもしれないのに。信じて良いのかしら、これ」
(^ω^ )「門兵だって騎士証なんて早々お目にかかることなんてないお。多少違ったとしてもそういうものなんだって、馬上から言えば信じるしかないお」
アオも同意するように鳴く。二人が言うのなら、一人で何を言っても負けてしまうと、シューは諦めた様にため息をついた。
lw´- _-ノv「それで、どっちを使うの」
シューが二枚の騎士証をニシカワの前に差し出す。
ニシカワが不思議そうな顔でその二枚とシューを交互に見た。
(^ω^ )「……両方だお」
ニシカワが紫の騎士証を抜き取った。
lw´- _-ノv「街を出るのに両方必要なのかしら」
(^ω^ )「当然だお。そっちはシューの分だお」
シューは驚いていた。それでも初対面の相手であれば分からない程度のものだったが、彼女にしてはかなり大きく感情の動きを表面に出していた。
lw´- _-ノv「騎士に女はいないわ」
(^ω^ )「じゃあ男装だお。それに夜遅く、辺りが真っ暗になってから決行するつもりだからきっと気づかれたりしないお」
lw´- _-ノv「だけど」
シューの言葉を遮るようにまたアオが鳴く。シューも同じようにため息をついて諦めた。
(^ω^ )「そのために、屋敷の馬。アカも連れて行くお」
シューがさらに深いため息をついている。
(^ω^ )「あの騎士さんのところに馬を置いておくのはどうにも心配なんだお」
街を出たところで約束は終わり。その後は彼女と一緒に行くつもりはニシカワになかった。危険なものになるだろうし、何より覚悟がなければ出来ないような無謀な行動。巻き込むわけにはいかない。
そうなればシューはそこから一人で旅をする事になる。女の一人旅の危険など挙げるのに苦労しないが、そんな多くの危険を少しでも避けるためには、どうしても偽造の騎士証と馬を無理にでも彼女に持たせておきたい。
そのためにニシカワが色々と考えた結果がこの策だった。
これが通らなければ適当な理由をつけて延期をする。別の策が出来るまで、辛いがのらりくらりと彼女の言葉のない催促に耐えるつもりだった。
不服そうだが、受け入れた様子のシューを見てニシカワはホッとした様子で天井を仰ぎ見た。




