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英雄ドクオ。
様々な苦難を乗り越え先々代の王を救った、今でも多くの国民に慕われる偉人。
彼の大半の逸話は大人が子供にする、おとぎ話として伝えられており総で最も有名な人間の一人である。
(^ω^ )「英雄ドクオの話を知っているかお」
その名を急に口に出す。
いつも通り、薄暗い倉庫でお互いの作業だけをしていた。
ただ、前回別れる時の言葉が、室内の空気を鋭く張り詰めさせていた。
それを壊すべく、息を一つ飲んで発した。
lw´- _-ノv「えぇ、小さい頃に良く聞かされたわ。ドクオの様に国のために動きなさいって。ただ、十分な働きをしたのならその見返りはしっかり受け取りなさいって。……商人の家だったから」
何も感じていないような、いつも通りの対応。
ただ、緊張のためかいつもより少し話が長い。
(^ω^ )「それをやるお」
「どれをやるの」と尋ねる途中で、ニシカワが語りだす。
(^ω^ )「暗殺の計画を知らせるため、騎士証を持たないまま王都に入った話をやるお」
本当はもっと仰々しい名前があったが、公の場で身分のあるもの以外は皆、騎士である事を表す証文を騎士証や武家証、公家証と呼んでいた。
シューにもそれは伝わったようで少し考え込む仕草をしていた。
(^ω^ )「入る事が出来るなら出る事だって出来るお」
lw´- _-ノv「そうね。この子を、アオを連れて外に出るなんて騎士が居なければできない。でもあなたの目的のためにはアオが必要なんでしょう。……なら、こうするしかないかも」
多くの逸話の内の一つを二人は話す。
ドクオが王都近くの町で偶然手に入れた情報に、数刻後に王を暗殺するというものがあった。
王が年に数度だけ、少ない手勢で街の中を練り歩く祭りを狙ったものだという事は明らか。
ドクオは自身の手勢にそれを伝える間も惜しいと、馬に跨り一人で夜通し走り続け王都に向かう。
日が昇る少し前、王都を守る巨大な門までたどり着くと、すぐに兵に門を開けるように迫った。
しかし、門兵は頑なにそれを拒む。当然、王の守りが薄くなるこの時期は特別厳しく出入りを管理される。
あろうことか、ドクオは騎士証を持っていなかった。貴重品はすべて筆頭兵士に持たせてしまっていたのである。
だが、ドクオは「この馬こそが騎士である事の証明。王より賜ったのは騎士証とこの馬であり、その内の一つがこの場にある事こそが自身が騎士である証明である」と門兵が折れるまで説き続け遂には門を開けさせた。
そして、王の暗殺を狙う者はドクオの届けた情報を元に全員が捕縛され、王の命はとりあえずのところ助かったのである。
lw´- _-ノv「この子がいれば大丈夫かしら。普通に考えて馬を騎士以外が扱うなんて事はないもの」
(^ω^ )「確かに、アオがいれば大丈夫だとは思うお。でも何かあってからじゃ遅いんだお」
ニシカワが懐に手を突っ込む。
(^ω^ )「騎士証を用意してもらったお。……ただ、ブーンは文字が扱えないから確認してほしいんだお」
そう言いながらシューへ取り出した小包を渡す。
渡す時に手が触れないようにしたが、シューはそんな事は気にしていないようにニシカワの掌から取っていく。
(^ω^ )「とりあえず、兵士に顔を知られてたらまずいから出来るだけ下位の騎士のものを作ってもらったお」
lw´- _-ノv「……こんなものを、どうやって」
(^ω^ )「秘密だお」




