表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブーンが兵士になるようです  作者: カジ
八話
39/50

8-2

(^ω^ )「シュー」


そんな事が実際にあるのかと、頭を抱えている横でニシカワが思い付いた様に呼ぶ。


lw´- _-ノv「なに」


思案の邪魔をされたせいか、少しだけ不機嫌さが滲む。


(^ω^ )「ブーンはこの街を出るお」


シューの目が僅かに大きくなったが、それ以外は普段どおりだった。それを見てニシカワは続きをゆっくりと話し出す。


(^ω^ )「決めたんだお。今の話を聞いてからか、しぃが襲われるところ見たからか、ブーンにも良く分からないお」


(^ω^ )「早く、すぐにでも動かないと、とは思っていたお。でも踏み切れなかったお」


ニシカワは恥ずかしそうに頭を掻いている。


(^ω^ )「ここで七号さんの下で騎士さんの不満を言いながら、ビイグルさんの店に通って、シューと一緒に倉庫で話して歳をとって、ただなんとなく暮らしていくのも良いと思ってきてたお」


頭を掻く手は止まり、胸の前で硬く拳を握る。


(^ω^ )「でもやっぱりだめなんだお。やっぱりこの国は歪なんだお。この国だけじゃない他の国だってそうだお」


(^ω^ )「そんな所に一人にしておくわけにはいかないんだお。もう、すぐにでも進まないといけないんだお」


(^ω^ )「手遅れになったら意味が無いんだお。それはブーンの命なんかじゃとても取り返せない、もっとずっと尊いものだから、ブーンがこの街で暮らしていく事なんかと秤に掛けられるものじゃないんだお」


lw´- _-ノv「そう」


いつもと変わらない様子で静かに話を聞いていたシューがフッと髪をかきあげた。


(^ω^ )「世話になったお」


ニシカワが真っ直ぐシューの目を見る。


lw´- _-ノv「いつ街を出るの」


(^ω^ )「準備が出来次第、すぐにだお。多分、そんなには掛からないと思うお」


lw´- _-ノv「そう、じゃあ私も早く支度を済ませるわ」


(^ω^ )「おっおっ」


当たり前のようにそう言うので、ニシカワはそれがおかしい事にすぐには気が付かなかった。


(^ω^ )「ちょっと待つお。ついてくるつもりかお」


lw´- _-ノv「私の頼み、聞いてくれる約束でしょ」


ニシカワが不思議な事を言っている様にシューが答える。


(^ω^ )「それは、なんとかしたいけど、一緒に来たらとても危険だお」


大げさな身振り手振りを交ぜてニシカワがいかに危ないかをあれこれ話したが、それが終わるかどうかのところでシューが話し出す。


lw´- _-ノv「構わないわ」


(^ω^ )「死ぬかもしれないんだお」


lw´- _-ノv「仕方が無いわ。まともな手段じゃ外に出れないだろうし。あなたも、私もね」


ニシカワが何か言いたげな顔をしたが、しばらくそのまま何も言わずため息をつく。


(^ω^ )「それなら、どうしてここを出れないのか、聞いても良いかお」


lw´- _-ノv「ここを出たら考えるわ」


視線はニシカワからずっとはずされたままで、手は着物の衿を握っては離しを繰り返している。


(^ω^ )「……わかったお。でも、二人で行くなら少し準備が増えるから、今日明日に街を出るって事はできないお」


lw´- _-ノv「えぇ、私もゆっくり準備をしておくわ」


視線が再びニシカワに戻される。


(^ω^ )「とりあえず、倉庫で少しでも馬の乗り方を覚えておいて欲しいお」


lw´- _-ノv「もう歩く位なら出来るわ。外には出られないから走った事は無いけれど」


何があっても、自分に付いて来るつもりだった。それに気付いたニシカワが片手で頭をおさえる。


(^ω^ )「充分だお。ブーンの後ろに乗れば良いけど、自分でも扱えた方が何かあったときに便利だお」


何かあったとき、という言葉を放つその顔はいつもと変わらない。ただその裏には強い覚悟を感じさせる。


シューはそれを理解してか、ただ頷いて答える。


(^ω^ )「それじゃあ、しばらくの間は今まで通りに。目処が立ち次第伝えるお」


lw´- _-ノv「分かったわ」


路地から顔をのぞかせ、通りに誰もいない事を確認するとニシカワはすぐにその場を後にする。


(^ω^ )「さて、これでますます失敗できなくなったお」


自分一人だけなら失敗しても構わない。どこかでそう思っていたが、シューの命まで自分に懸かっているとなるとなると些細な事にも妥協はできない。


改めて、今後の事をしっかり考えなければならない。


ブーンは描いていた構想を一度捨て、一からあれこれを組み立て直しながら屋敷へ足早に向かう。


失敗はできない。


手などとても届かないようなはるか高みの目標、それだけにどこか実感のわかなかった何か。


それが一気にはっきりと見え、現実味を帯びてきた。


せめて街を無事に出ることが出来なければ、シューが死ぬかもしれない。


ブーンは自身の命よりも、その事ばかりが頭から離れなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ