8-1
(^ω^ )「どうして、自分は上総の民だって言わなかったんだお」
二人は倉庫の並ぶ通りにいた。いつも通り、人の往来は全く無い。
(^ω^ )「嘘だとしても、連中はそれさえ聞いたなら君にあんな事をしなかったお」
ニシカワは誰もいない事を確認してから、顔をしっかりと覆う手ぬぐいをはずしていく。
(*゜ー゜)「言えません。私は上総の民ではないので」
(^ω^ )「なら、下総か安房かんんお」
(*゜ー゜)「……いえ」
女は少し間を空けて答えた。
(^ω^ )「ならそう言えば良かったお。どこの国の人間だって言えば、きっと連中はどうでも良くなってたお。外よりも内が気になるっていう、仕方の無い連中だったお」
(*゜ー゜)「下野なんです」
意を決した様子で女が言った。真っ直ぐにニシカワの目を見つめていたが、言い終わると瞳は左右に小さく揺れだした。
(^ω^ )「おっおっ」
それだけの事を言うのになぜ改まる必要があるのか、ニシカワは理解できない様子で女を見返す。
(*゜ー゜)「故郷です。生まれてから少し前までずっと下野で暮らしていました」
(^ω^ )「そうなのかお。ならそう言ったらきっとあんな事にはならなかったお」
女は驚きと安堵がないまぜになった表情でもう一度ニシカワの目をしっかり見据える。
(^ω^ )「さぁ、もう終わった事をあれこれ言ってもしょうがないお」
手ぬぐいを出来るだけ綺麗にたたむと大事そうに懐にしまいこむ。
(^ω^ )「少しばかり当てがあるからそこに行くお。君はなんだか放って置くと、とても不安だお」
(^ω^ )「あぁ、いたお」
ニシカワ達は、門から真っ直ぐ続く大通りまでへ来ていた。
そこで門の方をずっと見つめている男へ向かって進む。
(^ω^ )「しばらくぶりだお」
(,,゜Д゜)「おぉ、珍しいな。何か入用かな」
(^ω^ )「ちょっと頼みがあるんだお」
それを聞くとギコは姿勢をニシカワの方へ向ける。
(,,゜Д゜)「おっと、そちらは」
ギコが手のひらで女を指した。
(^ω^ )「あぁ、えっと。そういえば名前も聞いてなかったお」
ニシカワがすまなそうに言うと、女が小さく首を振りながら笑ってみせる。
(*゜ー゜)「しぃです」
(,,゜Д゜)「ギコだ。色々手広くやっているから何かあったら言ってくれ。しばらくはツダにいるつもりだからな」
商人としての癖なのか、慣れた口調で言うとしぃに握手を求める。
(^ω^ )「それで、その手広くやっているギコさんに頼みたい仕事があるんだお」
(,,゜Д゜)「どんなだい」
(^ω^ )「しぃの事を頼みたいんだお」
しぃの背をやさしく押し、前に出す。
(,,゜Д゜)「この子の何をだ」
(^ω^ )「しばらく、面倒を見てほしいんだお」
(,,゜Д゜)「……え」
(^ω^ )「いや、ちゃんと見てないと、どうにもその内とんでもない事になりそうで不安なんだお」
ギコと同じようにしぃも驚いた顔をしてニシカワの事を見ている。
(^ω^ )「衣食住から一切合切頼むお」
(,,゜Д゜)「仕事ならやらんことも無いがどのくらいの期間だ。それ次第じゃ受けられんぞ」
ギコは色々な勘定を始めていたが、しぃはあまりの事に口を開けたまま固まっていた。
(^ω^ )「遅れたお」
公家屋敷前をうろうろしていたシューの肩が小さく跳ねた。
lw´- _-ノv「遅いわ」
シューが素早く振返ると、不機嫌そうに言う。
(^ω^ )「悪かったお。ちょっとあの子が心配なんで知り合いに預けてきたんだお」
lw´- _-ノv「鎧、倉庫に置いてきたから。夜にでも取りに行って」
シューが興味なさそうに言ったのを聞いてニシカワはすまなそうに礼を言う。
(^ω^ )「シュー」
また背を向けるシューに声を掛ける。面倒そうにゆっくりとニシカワの方を向き、無言で次の言葉を待っている。
(^ω^ )「下野っていうのは良くないのかお」
お」
少し驚いたのか、下がっていた視線が上がる。
lw´- _-ノv「下野ねぇ。いきなりどうしたの」
(^ω^ )「あの子が、しぃがそこの生まれだって言ってたお」
lw´- _-ノv「そう。下野の」
顎に手を当て、何かを考える素振りを見せた。
lw´- _-ノv「下野はもう無いわ」
(^ω^ )「どういう事だお」
lw´- _-ノv「あなたが何も知らない事にはもう驚かないから、教えてあげるけど」
シューが歩きながら付いてくるようにと手で合図をした。これをするのは、誰もが知っていて当たり前の事を教える時だった。
lw´- _-ノv「下野は上野に滅ぼされたわ。もう十年近くも前にね」
屋敷から少し歩いて人気のない路地に行くとシューが振返る。
(^ω^ )「十年も前にかお。でも、しばらく前まで住んでいたって聞いたお」
lw´- _-ノv「他国への侵攻は国造り神の教えに反する。そんな事をすれば他国から一斉に攻められかねないわ」
(^ω^ )「でも下野は上野に滅ぼされんじゃないのかお」
lw´- _-ノv「そう。滅ぼされたわ。でも表向きには上野と下野が同盟を結んだ事になっている。上野王と下野王がそう言っているのだから他国は干渉できない」
(^ω^ )「おっおっ。それなら問題ないんじゃないのかお」
lw´- _-ノv「王が本心でそう言っているならね。でも他国じゃほとんどがそんな言葉信じていないわ。下野王は上野王に従わざるを得ない状況にある」
lw´- _-ノv「上野は今の王になって急激に軍備に注力しだしたわ。あくまで内部の安定のためと言っていたし、国造りの神の教えを破るわけが無いと思っていた」
lw´- _-ノv「だけど、下野は滅ぼされた。そして対外的には存続しているかの様に見せる事で周囲の国が攻める口実も与えない」
lw´- _-ノv「今、周囲で最も恐れているのは上野なのよ」
(^ω^ )「でも下野は別に悪くないお」
lw´- _-ノv「上野の支配下である下野だと言ったところで扱いはきっと変わらない。……いえ、そこは正直に下野と言わないで上総の民とでも言えば良かったのに」
(^ω^ )「嘘は嫌だったらしいお」
lw´- _-ノv「命が掛かっているのに……」
信じられなそうにシューが言った。




