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lw´- _-ノv「シューです」
一昨日に見た女だった。それだけ言うと、すぐに歩きだす。
腰の少し上まで伸びた髪や白い肌が下働きの女には不似合いだが、シューには良く似合っていた。
( ´_ゝ`)「シューさんはここで働いて長いんですか?」
ビイグルの「いってらっしゃい」という言葉を背に受け、屋敷を出るとすぐにオトジャが言う。
このまま何も言いださなければいつまででも、この気まずい無言が続くと感じていた。それを回避するための勇気の一言だった。
lw´- _-ノv「四年になります」
(´∀`)「シューさんは何歳なんだモナ」
lw´- _-ノv「十五歳です」
( ^ω^)「ブーンとモナーと同じだお」
( ´_ゝ`)「私も十五歳ですよ」
(´∀`)「そういえばオトジャの歳を知らなかったモナ」
( ´_ゝ`)「聞かれませんでしたしね」
( ^ω^)「あれ、じゃあシューさんは十一歳からビイグルさんのところで働いてるのかお」
lw´- _-ノv「えぇ」
( ´_ゝ`)「十一歳で丁稚といったら相当優秀ですよね。雑用ならともかく、商いの手伝いなんて読み書きできないととても務まらないんでしょう?」
lw´- _-ノv「えぇ」
話はすぐに尽き、また沈黙に包まれる。
シューに付いて行く三人は今日一日が不安でたまらない。何か話さなければと思いながらも、糸口が掴めずただ静かに街中を歩いていく。
lw´- _-ノv「昨日はすぐに屋敷に帰ったんですか?」
シューの声が耳に届くと、三人は下を向いていた顔をすぐに前に向けた。その表情は一気に明るいものへ変わる。
( ´_ゝ`)「えぇ、少し歩いて目に付いた店に入ったらすぐに」
(´∀`)「どこの民だっていうから、答えただけだモナ」
二人は感情をこめて早口で言う。
lw´- _-ノv「下総以外って?」
( ^ω^)「そうだお。そしたらあんたらに売れる物は一つもないって」
( ´_ゝ`)「周りにも殺気立った人が集まってきて驚きました」
lw´- _-ノv「これまであなたたちはとても恵まれた所で暮らしていたみたいですね」
(´∀`)「うーん、実感がないモナ」
lw´- _-ノv「毎日別の民族との争いがどこかで起こるような事はなかったでしょう?」
( ^ω^)「たしかに。ブーン達の村は旧国境近くだったから色んな民族の人が暮らしてたお」
(´∀`)「あぁ、だからモナ達の村では誰がどこの民族かなんてのは気にしてなかったモナ」
これまで感情の乏しかったシューの表情が驚きの色を帯びた。
( ^ω^)「小さな村だからかもしれないお。人がたくさんいればきっと色んな問題も出てくるお」
(´∀`)「たしかにモナ」
二人の育った環境がどれほどこの街と掛け離れているのか、シューは伝える苦労にため息をつく。
lw´- _-ノv「とりあえず、しばらくここで生活するのならまずは商いに関する事よりもその辺りを知ってもらいましょうか」
シューは街の外周へ向かっていた一行を止めると、中心部へ向かうと告げて歩き出した。
lw´- _-ノv「まず、ツダはとにかく民族間の対立が大変激しいです。その原因は反乱を恐れた何代か前の王が、街を作る際に民族毎に住む場所を明確に分けた事に由来しているといわれています」
何か問題でも起こす前にとにかく、最低限のことだけは教えておこう。そんな考えからシューの歩きながらの講義が始まった。
lw´- _-ノv「先代王がそんな法は国のためにならないと自由に住む場所を選んで良いと取り決めましたが、今になっても別の区画に住む人は殆どいません」
三人が頷くのを確認して、シューが続ける。
lw´- _-ノv「さらに各区画が独立した街の様に機能していて、それぞれの区画に領主が存在します」
(´∀`)「一つの街なのに領主が一人じゃないモナ?」
シューが「えぇ」と言って続ける。
lw´- _-ノv「ここ下総の区画を治めているのが公家二位で安房が武家四位、上総は商家二位です」
( ^ω^)「……騎士団も別々なんだお」
lw´- _-ノv「えぇ、そこがまたこの街を政治的に複雑にしているところです」
lw´- _-ノv「街を作る際の取り決めで各区画を三家で分けるとしたそうです。王都に次ぐこの街が他家の物になるのは大きな痛手ですから、そうなる位ならば均等に分けてしまおうと考えたんでしょう」
フッと空気を体に取り込む。それから少し辺りを見回し、誰もいない事を確認する。
lw´- _-ノv「そのせいで区画間には民族だけでなく騎士団の問題まであるんです」
シューの話は周囲に人がいると必ず止んだ。そして少しだけ歩く速度を上げて、また人気が無くなると再開する。
lw´- _-ノv「あなた達だけなら、兵士だとは分からないからまだ良いです」
三人は旅のために動きやすい格好をしており、この街では良く見る丁稚に近い。
彼らもまた忙しく店や街を駆け回るので、何よりもまず動きやすさを大事にし次に客に対して失礼にならない程度の清潔さが続いた。
lw´- _-ノv「……もし鎧を着たりした時は極力自分達の所属は言わない方が無難でしょう」
( ^ω^)「たしか、この区画の領主は公家だったかお」
lw´- _-ノv「えぇ、まぁ公家は商家とさほど仲が悪いというわけでもないのでまだ良いでしょうけど」
シューが言葉を濁して足だけを進める。
(´∀`)「……武家とは仲が悪いモナ?」
lw´- _-ノv「えぇ」
シューは「ニンジャと一緒の時は気をつけろ」と、言いたかったのだろうが言葉にはしなかった。三人も聞こえたわけではないが頷いてみせる。
それからしばらく、常に誰かしら人の居る通りが続く。幅の広さときれいに整えられた路面から主要な道である事が伺えた。
lw´- _-ノv「ここ」
不意にシューが大きな屋敷の前で止まる。目の前にあるのは門ではなく大きな塀だった。
( ´_ゝ`)「ここですか?」
シューは何も言わずに地面を見つめて何かを探すような素振りを見せる。
( ´_ゝ`)「門はまだ随分先のようですけど」
lw´- _-ノv「門からなんてとても入れないわ、門からじゃなくても入れないけど」
三人は理解ができないといった様子で、膝に手を当て地面を睨むシューを見守った。




