6-1
(^ω^ )「よろしく頼むお」
(,,゜Д゜) 「あぁ。出来る限り条件を満たす中で良いものを探そう」
ブーンがニシカワの鬣をなでなでる。その様子はなんて事の無い、世間話に見えた。
(^ω^ )「金は後でいいのかお」
(,,゜Д゜) 「いつもは半分を前金で貰うんだがな。まぁ兵士さんが相手だからな、信用は問題なしだ。後で払ってもらえば良いさ」
(^ω^ )「……そうかお」
(,,゜Д゜) 「用意できたらすぐあんたの所へ知らせに行くか?」
(^ω^ )「いや、また来週の同じ時間にここに来るお。その時また話を聞くお」
(,,゜Д゜) 「そうかい。じゃあまた来週だな」
(^ω^ )「おっおっ」
ギコが小さく右手を上げると狭い路地の方へ向かって行く。ブーンもそれを見送ることなく、ニシカワに声を掛け歩き出した。
(^ω^ )「おはようございますお」
ブーンはわざと大回りをして、いつもと同じ方向から店に入る。
lw´- _-ノv「……いらっしゃい」
シューが少し離れたところから出迎えに来た。
▼・ェ・▼「いらっしゃい」
一番に気が付きながら、作業を続けていたビイグルが前掛けを整えながら近づいてくる。
▼・ェ・▼「ゆっくりしていってね」
ニシカワを優しく撫でると「それじゃあ、よろしくね」と、また忙しそうに戻っていった。
(^ω^ )「今日も忙しそうだお」
lw´- _-ノv「そうね。今日もいつもと同じで良いの?」
(^ω^ )「いつも通りでいいお」
シューが商品を取りに行こうとするが、数歩歩いて振り返った。
lw´- _-ノv「あぁ、そうだ。今日門の辺りで何していたの?」
(^ω^ )「……おっおっ。門の辺りになんて行ってないお」
lw´- _-ノv 「そう。別に言いたくないのなら構わないんだけど」
シューが商品を詰めに行く後姿をブーンは笑顔を繕って見つめる。
lw´- _-ノv 「はい」
慣れた手つきでいつもと同じものを同じだけ袋に詰め、終わるとすぐにブーンの方へ差し出した。
(^ω^ )「どうもだお」
シューはほとんど表情を変えなかったが、ブーンは気まずそうに腕を組んだり頭を掻いたり落ち着かない。
(^ω^ )「今日は良い天気だお」
lw´- _-ノv 「そうね」
毎日通うようになってから、商品を受け取った後もしばらく話し込む様になってきた。
ビイグルに頼まれたからという事もあったが、今ではブーン自身も喜んでシューに話しかけるようになっている。
lw´- _-ノv 「それじゃあ、仕事に戻るわ」
しかし、すぐに奥へ向かって歩き出す後ろ姿だけで、今は話をする気が無い事は明らかだった。
(^ω^ )「……ありがとうだお」
/^o^7\ 「お前は難しいだろうな」
一週間前、七号に次はいつ王都に行けるか尋ねた時の言葉が浮かんできた。
(^ω^ )「なぜですお」
/^o^7\ 「いくら騎士といってもな、場所が王都となれば連れて行ける兵士は極限られる。
昔からの慣わしなんだけどな、過去にちらほらいたんだ。王を討って成り代わってやろうって輩がな」
七号が首をすくめた。
/^o^7\ 「そんな事をしても誰も付いていくわけがないのにな。……だからせいぜい連れて行けるのは三人だな。
今年がそうだったし、うちの親方の出世はしばらく望めないしな。今の位じゃ三人がせいぜいだろう」
(^ω^ )「ブーンは王都に行きたいんですお。なんとかその三人の中に入れて欲しいですお」
言い終わるよりも先にブーンが話し出していた。
/^o^7\ 「それもだなぁ。三人ってのも兵士の順位で決めてるから難しいだろうな」
七号が短く息を吐くと、ゆっくりブーンの顔を見つめる。二周り以上の背の高いブーンを見上げる形だ
/^o^7\ 「かわいそうだが、馬房守はな。兵士の序列の中から外れているんだ。馬房守はどこまでいっても馬房守であって、兵士としての出世が無いんだ」
七号はすぐに「世間でどうなのかは知らないがうちには無い」と、すまなそうに続けた。
面白く無い事は重なるものだ。そう考えている様に、ブーンは小石を思い切り蹴飛ばす。
王都へ行けない事とシューの機嫌が悪い事、どう考えても同列に考えるべきでない事柄が頭の中を二分している事もまた面白くない。
屋敷への帰り道でブーンは大げさに頭を左右に振り、手のひらで数度叩く。
(^ω^ )「……大丈夫だお」
その様子を見て不安になったのか、顔をこすり付けてきたニシカワを撫でてやる。
目を細めるニシカワを見てブーンも少し落ち着いた様だった。
(^ω^ )「でも、大手を振って行けないとなると大変そうだお……」
視線を斜め上にもって行き、まだ見た事のない王都を思い浮かべながら進む。
ツダよりも出入りにの厳しい街を知らないので、ブーンの頭の中の王都の外観はツダとほぼ同じ。
各門は武器を持つ兵士が隙間無く埋められ、その後ろには鉄の格子が降りている。きっと許可が無ければ絶対に開かれる事は無いだろう。
(^ω^ )「ちょっと厳しいお」
簡単に想像した王都は、どう考えても力ずくで押しとおるのは無理そうだった。
気を紛らわせるように、近づいてきた同じ石をもう一度蹴る。さっきよりもいくらか遠くへ転がって行った。
(^ω^ )「まぁ、やれそうな事は全部やるしかないお」
自身を鼓舞する様な声に、ニシカワが鼻を鳴らして答えた。
(^ω^ )「じゃあ、そろそろ帰るお」
いつもの野菜や果物が詰められた袋を、ニシカワの鞍に結びつける。
lw´- _-ノv 「そう」
(^ω^ )「また明日だお」
lw´- _-ノv 「……また」
手を振るブーンには応えなかったが、ほんの短い間だけ見送る。
シューとの関係をここまで戻すのに、一週間が掛かっていた。
(^ω^ )「よく分からないけど、とにかく良かったお」
ニシカワも大きく首を縦に振る。
何が原因でシューとの間に溝が出来たのかは相変わらず分からなかったが、とりあえず悩みの半分以上が解決した様な気になっていた。
(^ω^ )「……うん、見えないお」
後ろを振り返り、ビイグルの店がもう視界に入らない事を念入りに確認した。
問題がないと分かると左胸をポンと叩く。それから屋敷への帰り道から外れて進みだした。
(^ω^ )「待たせたかお」
(,,゜Д゜) 「少しな。まぁ、ほんの数刻だ」
先週と同じ場所でギコが腕を組んで立っている。
周囲には同じ様に、門から入ってくる誰かを待っている商人風の人が多くいたが、ギコだけが入り口に背を向けているのですぐに分かった。
(^ω^ )「悪かったお」
先に店に寄った事で遅れてしまったので、申し訳なさそうにブーンが言う。
(,,゜Д゜) 「俺は商人でお前は客だ。気にするな」
ギコが右の掌をブーンに向けた。
(,,゜Д゜) 「それで、例の件だが」
(^ω^ )「どうだったお」
ブーンの目が大きくなる。ニシカワも何かを感じ取ったのかギコを見つめている。
(,,゜Д゜) 「あぁ、なんとかなったぞ。だが条件を満たすのは一つしかなかったからな。これが駄目ならどれか一つ位は譲ってくれ」
安堵したあとすぐに不安な表情へ変わる。
(^ω^ )「それも難しいお」
(,,゜Д゜) 「とにかく、まずは見てからだな」
(^ω^ )「おっおっ」
ギコが先導し、大通りから外れた路地へ一向が進み出した。
(,,゜Д゜) 「ここだ」
ギコが丈夫そうな木戸を手の甲で叩く。
(^ω^ )「大分古そうだお……。でも、つくりは悪くない気がするお」
ブーンは全体が視野に入るように少し後ろに下がり、焦点を少し上に持っていった。
路地へ入ってからすぐの場所。そこは裕福な商人達の所有する倉庫が並ぶ通りだった。
人通りは少なく、背の高い倉庫が並ために日当たりも悪い。
大通りに近いので商店主達から人気が有り、門からすぐ近くの割りに借りるにしても買うにしても金が掛かる。
通り沿いに店でも持っていなければ、環境が悪く値の張るだけの建物の前に二人は立っていた。
(,,゜Д゜) 「中も見せよう」
ギコが戸を引き灯りの準備をする。
(,,゜Д゜) 「いいぞ」
すぐ投げかけられた声に促され、ブーンが中に入る。
建物の戸は周囲と比べるとかなり大きい。ここを作らせたのが大きな商品を扱う商人だったのだろう。
ブーンにとってその点は満足だったが、建物の中も同じく自分を満足させるものか不安だった。
大きなブーンでもかなり余裕のある戸を越えて中へ入る。日のほとんど差し込まない中で、目が暗さに慣れるまで手探りで慎重に進んだ。
(^ω^ )「おぉ、素晴らしいお」
中は高さだけでなく幅もかなり大きかった。闇に目が慣れ、弱々しい灯りに照らし出された部屋を見た瞬間、ブーンの不安は消えていた。
ブーン二つの部屋を行ったり来たりし、窓の位置や天井の高さを気にする素振りを見せる。
それが一通り済むと今度は入り口まで戻り、その場から視界に入る範囲を確認する。
ギコは不思議そうな顔はしたが黙ってその様子を見守っていた。
(^ω^ )「ふんふん。……ほう。このくらいかお」
ブーンがまた奥の部屋に行き、指で壁を叩き耳を澄ます。
いつの間にかニシカワも部屋の中に入ってきていたが、ブーンは特に気にしていないようだった。
(,,゜Д゜) 「そいつも少し頭を下げれば家に入れるみたいだな。入りさえすれば快適だろう、天井の高さも十分だ。こんな家は中々ないぞ」
ギコが右手を目一杯伸ばして見せるが天井には全く届かない。
(,,゜Д゜) 「まぁ、こんな日当たりの悪いところより、お屋敷に立派の家があるんだから関係ないか」
その言葉が聞こえていないように「ここに決めるお」とブーンはニシカワの背に乗せた皮袋を取り出す。
(,,゜Д゜) 「おぉ、そうか。それは良かった。駄目だといわれたら他は天井が低いか、入り口の小さいところしか無くてな」
(^ω^ )「おっおっ。それは良かったお」
ブーンが皮袋の中を片手で弄る。
(,,゜Д゜) 「なにより大通り近くで人通りの少ない場所なんてのは、この区画じゃここくらいだからな」
笑いながら話すギコにブーンはあらかじめ聞いていた、近辺の相場より少し多い額を差し出した。




