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ブーンが兵士になるようです  作者: カジ
五話
26/50

5-4


|/゜U゜| 「久しいな」


( ´ー`) 「お元気そうで何よりです。……そちらはニンジャさんの?」


ニンジャの後ろに並ぶ三人を見る。


|/゜U゜| 「いや、イヨウ殿のな」


( ´ー`) 「あぁ、そうでしたか。」


恰幅の良い男がニンジャの前に出て戸を開ける。


( ´ー`) 「さぁ、遠いところからありがとうございます」


|/゜U゜| 「何、新米達の勉強もかねてだ」


戸を開けると、ニンジャはすぐに中へ入っていく。普段のニンジャからは想像しずらい無遠慮な動きだった。


( ´ー`)「さぁ、君達も」


男が笑顔で手招きをする。


( ´_ゝ`)「失礼します」


イヨウの屋敷より二周り小さい屋敷は、派手さは無いが美しさを感じさせるつくりだった。


女中に通された部屋で四人が一列に腰を下ろした。


後から来た男がヘコヘコと頭を下げ申し訳なさそうに一段高い場所に座る。


( ´ー`)「武家九位のネーヨです。以後よろしく」


ブーン達に向かってそれだけ言うと、笑顔が薄れ「早速ですが」とニンジャの方を向く。


その声にニンジャが答えるように折り畳まれた紙を出した。


( ´ー`)「では、……失礼」


頭を何度か下げてから、手に取り右から左へゆっくり視線を動かす。


しばらくして、それまで遅いながらもつかえることなく進んでいた視線が急に止まった。


( ´ー`)「んっ」


不自然な咳ばらいし、ちらりとニンジャの顔を見る。ニンジャはそれに対して、まばたきで何かを答える。


|/゜U゜| 「あぁ、そうだ。馬の調子はどうだ。前にすぐに腹を下して心配だと言っていただろう」


膝を軽く叩いて、ニンジャが切り出した。


( ´ー`)「……あぁ、それがまだ治らないのです。私も何とかしてやりたいのですが、人以外を診れる医者には心当たりも無いもので。いや困った」


一瞬間をおいて、何かを理解したようにネーヨが答える。


|/゜U゜| 「そうかそうか。ちょうど馬にも良く効く薬を持ってきた。イヨウ殿が持っていってやれとな」


( ´ー`)「おぉ、それは有り難い」


|/゜U゜| 「馬屋はどこだったか」


「ご案内しましょう」とネーヨが立とうとするとニンジャが両手で制止する。


|/゜U゜| 「なに、少し様子を見て薬をやるだけだ。誰かに案内させればよい。それよりも、さぁ続けてくれ」


床に落ちた書状を拾い上げるとネーヨは申し訳なさそうに受け取り、人を呼んだ。


( ´ー`)「ニンジャ殿を馬屋にご案内してくれ」


女中が頭を下げて答えるとニンジャが「少しの間頼むぞ」と言って部屋から出て行く。


( ´_ゝ`)「……なにこれ」


ブーン達はお互いの顔を見合わせていた。


(=゜ω゜) 「最高でも譲れる額はこれね。で、これが相手が渋った時に最初に提示する額。それから次がこれ。

出す時は悩んだ末だした感じで切り出すんだよ。三枚用意したからほら、ちゃんと持っていくんだよ」


屋敷を出る前、イヨウの部屋でそれぞれに持たされた紙を探す。


( ^ω^)「でもまさか、ブーン達相手に交渉しようなんて事はないお?」


(´∀`) 「そうだモナ」


( ´_ゝ`)「あれだけわざとらしく出て行かれると不安ですが……」


( ´ー`)「……あの」


三人が小声で話し合っていると、ネーヨが申し訳なさそうに小さく手を上げて話だした。


( ´ー`)「農具が五十でこの額。たしかに一年の間お借りするという話でしたが。

これだけの額をお支払いして使えるのは一年だけ。うちは年に何度も作物を作りませんから一年通してお借りしても使わない時期もかなりある。

果たしてこのお話し、この村にとって有益なものなのか……」


重い雰囲気のまま、しばらく部屋の中を沈黙が支配した。


(´∀`) 「……用意した農具は全て鉄製モナ」


小さく息を吸い込み、普段より少し低い声でモナーが話し出した。

ブーンとオトジャは驚いてモナーを見る。その顔からは自信が微塵も感じられなかった。


( ´ー`)「なんと」


ネーヨの細い目がわずかに大きくなる。声の調子からは、長い沈黙で気を悪くした様子は無い。


(´∀`) 「勿論、すぐに錆びる様なものでは無く腕の確かな鍛冶屋に作らせているモナ」


( ´ー`)「それはすばらしい」


(´∀`) 「これまで、取引をさせてもらった町や村の多くで収穫が増えている実績があるモナ」


詰まることなくモナーが話し続ける。しかし、二人は話とは逆にどんどん不安になる。

二人が知らない事を言い続けるモナーが、本当の事を言っているとはとても信じられなかった。


( ´ー`)「……悪いお話ではないですね。いや、むしろ良い話だ」


しばらく続いた問答が止むとネーヨが納得した顔で頷く。二人は激しい動悸に襲われていた。


( ´ー`)「うん。決めました。イヨウ殿のお世話になりましょう」


戸が大きな音を立てて開くと、ニンジャが広い歩幅で元いた場所へ戻ってきた。

図ったような場面で部屋に戻った事については誰も口にしなかった。


|/゜U゜| 「……どうだった?」


わざとらしく、何も聞こえていなかった様にニンジャが隣のモナーに聞く。


(´∀`) 「取引してくれるそうだモナ」


|/゜U゜| 「おぉ、それは良かった。まさか、ちょっと席を外した間に話しが決まってしまうとはな」


ニンジャが笑うとネーヨも笑顔を見せた。


( ´ー`)「いやいや、一安心だ。値段以上の価値がこの村にはあるお話しでしたよ。早く屋敷の外に出て皆に伝えてやりたいです」


|/゜U゜| 「来年からはきっと民の仕事も楽になるぞ」


屋敷を出るまで二人の機嫌は良いままだった。


( ´_ゝ`)「あれは本当の事なんですか?」


宿屋への帰り道でオトジャが言う。屋敷から出るなりすぐに切り出した言葉はかなり早口だった。


(´∀`) 「もちろん本当の事モナ。まぁ、都合の悪そうな事は最初から口にしてないから嘘は無いモナ」


対照的にモナーの言葉は落ち着いている。


( ´_ゝ`)「私達は何の取引をするか程度しか聞いていませんでしたよね」


( ^ω^)「そうだお。農具とだけ言われてたお」


( ´_ゝ`)「……えぇ。今回はニンジャ殿に付いて、おおまかな商談の流れや盗人相手の実戦が目的だとばかり」


オトジャが納得いかない感情を押し殺すように言った。


(´∀`) 「これまで立ち寄ってた村で商人に話を聞いたモナ。畑は一杯あるのに農具が売ってなかったから、不自然に思ったんだモナ。

売れそうなものを置いてないなんておかしいモナ。だから、どうして農具を置いてないかを商人に聞いたら一発だったモナ」


今にも倒れそうだったモナーの顔はすっかり元通りになっている。


( ^ω^)「やっぱり、そのあたりは大商人の孫だお」


ブーンが嬉しそうに言う。


(´∀`) 「たまたま、気になっただけだモナ」


( ´_ゝ`)「大商人?」


( ^ω^)「あぁ、モナーの爺さんは凄い人なんだお。商人なのに商家並の影響力があるとか……って聞いたお」


(´∀`) 「まぁ、村の大人が言ってただけモナ。俺も年に一度会うかどうかだモナ」


( ^ω^)「ブーンはモナーのお母さんに勉強を教わったんだお」


(´∀`) 「金も店もいらないからって、碌な家に嫁ぎもせずに家を出た六番目の娘だモナ。おかげでうちは何も無いただの農家モナ」


苦笑して話すモナーを、オトジャは無表情で見つめていた。


( ´_ゝ`)「お名前は何と」


( ^ω^)「確かマルミミさんだったお」


あまり言いたくなさそうな顔をするモナーの後ろからブーンが言う。オトジャの体がほんのわずかだけ跳ねるように動き、小さく唸りながら考え事をするように顔に手を当てる。


( ´_ゝ`)「……。すみません。私は聞いたことは無いですね」


(´∀`) 「ほら、やっぱり大した事無いんだモナ」


ブーンは納得いかなそうに「それでも、村で読み書きや計算を教えてくれたから、大した事だお」といって口をぐっと結ぶ。


(´∀`) 「あれは爺さん関係なしに、母親が普段から使わないと忘れるからってだけでやってた勉強会だモナ」


( ^ω^)「……それでも大した事だお」


ブーンは語気は普段よりやや荒くなっていた。




|/゜U゜| 「大成功だったな」


ニンジャが宿の店主に右手だけで挨拶をすませ部屋に入る。


一仕事を終え気の晴れた様子のニンジャが、三人の間に生まれた奇妙な気まずさを薄めた。


|/゜U゜| 「なに、初めてにしては上出来だ。商家はとにかく結果が全て。だが、うまくいかなかったり納得のいかない事があったなら次は直して向かえば良い」


成功という言葉を素直に受け止められない二人に向けてか、ニンジャは部屋の誰を見るわけでもなく話し出す。


|/゜U゜| 「極端に言ってしまえば過程はどうだっていいんだ。最後に成功すればとりあえず商家はいい。だから今回は誰が見ても成功なんだ。……武家はまた違うがな」


三人それぞれの肩や頭に手をやる。


|/゜U゜| 「どんなに優秀だったとしも、まだ見習いなんだからな。同じ位の歳の時は私もイヨウ殿も、お前達と大差なかっただろうよ」


ニンジャは「一応騎士と比べて遜色ないんだからな」と付け加える。一体なにが遜色ないのかは分からなかったが、二人にとってはありがたかった。


|/゜U゜| 「さぁ、今日は早く休めよ。明日は昼前には出立だぞ」


それだけ言うとニンジャは早々に自分の布団へ向かい、背を向ける形で横になった。


( ^ω^)「……おやすみだお」


(´∀`) 「お疲れだモナ」


三人は少しの不自然さを引きずったままだが、明日の朝には忘れようとしているようだった。


|/゜U゜| 「あぁ、屋敷に帰るわけじゃないぞ。ツダへ寄る」


思い出した様に、向こうを見たまま伝えるとすぐに小さな寝息をたてる。

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