5-3
フタワを出てからミサキ、フドウ、コウダ。道中はかなりの早足で進み、夜は全て宿で過ごせるようにした。
宿に荷を置くとすぐに周りの様子を見るために三人は外へ出る。
日が沈むのと同時に帰ったのは最初だけで、フドウとコウダでは真っ暗になってもまだ歩き回った。
そうして、二人は改めて痛感した。ミサキの領主の治めるフドウとコウダ。
フドウの町はあらゆる面でミサキとは比べものにならなかった。
( ^ω^)「騎士が暮らしているだけでここまで違うものかと嫌になるお」
(´∀`) 「全くだモナ」
フドウの領主へ挨拶に行くかと、ニンジャが言われたが悩んだ上で断った。
イヨウやニンジャ以外の騎士に興味はあったが、町並み見る限り会って良かったとは思えない気がした。
結局、ニンジャも「本当はいけないんだが」と言って屋敷へ足を運ぶことなくコウダへ向かった。
フドウで見た、身奇麗にして、高い品ばかりの店で楽しそうに笑う夫婦。
ミサキで見た、日が暮れるまで野良仕事をし、薄汚れた姿でくたびれながらも笑
顔で家路に着く夫婦。
二つの景色が強く焼き付いている。
( ´_ゝ`)「誰もが医者に掛かれ、飢えや寒さで苦しむ者も無く、ならず者は兵士を恐れて近づかない。騎士がいる本拠は規模の差はあれ、大体がそうでしたね」
オトジャが言う。
( ´_ゝ`)「ただ、騎士の居ない場所の差は大きかったですね。騎士がいなくても長に選ばれた者や統治を任された兵士なんかが優秀なところは、本拠に迫るものもありましたよ。逆も勿論有りますが」
( ^ω^)「能力しだいかお」
( ´_ゝ`)「えぇ。でも領主の居ない所も多いですよ」
(´∀`) 「そんな所があるモナ?」
( ´_ゝ`)「えぇ、国が出来た時に無かった場所で、その後王に統治を申し出ていない所ですね」
オトジャが一瞬驚いた顔をしたが、それを隠すように一息で話した。
( ´_ゝ`)「後は騎士が放棄をした場合ですね」
( ^ω^)「放棄なんてするのかお。どんなに貧しくても、自分の金が減るわけじゃないお」
(´∀`) 「たしかに、金は掛けずに税だけ入ってくれば損はしないモナ」
二人は頷き合う。
( ´_ゝ`)「えぇ。だからまず、金です。他の騎士に売るんですよ。事前に王に統治を請う様、長に伝えておいてね。勿論、そこでも金が動くでしょうね」
(´∀`) 「金で……、金で村が買えるモナ?」
モナーが鼻先が触れる程オトジャに近づく。
( ´_ゝ`)「え、えぇ。買えますね。むしろ金で買えないものほうが少ないんじゃないですか」
オトジャが一歩下がり、二人の間に少しの間隔を作る。
( ´_ゝ`)「だから商家は強い。戦に出た事も無く、刀を飾りとしか見れない者の多い商家。それが今では王に次ぐ影響力を持っている」
(´∀`) 「……金で村が買えるモナ」
( ^ω^)「……金で買えるんだお」
二人はオトジャの声が耳に入らないかの様に一点を見つめたまま呟いている。
( ´_ゝ`)「あの」
( ^ω^)「決まったお」
(´∀`) 「あぁ、決まったモナ」
( ´_ゝ`)「あの」
( ^ω^)「オトジャのおかげだお」
(´∀`) 「ありがとうだモナ」
向けられた二人の目は真っ直ぐオトジャの瞳を見つめている。それがなんだか眩しくて、自然と目を逸らした事をごまかす様にオトジャが口を開く。
( ´_ゝ`)「それで、何が決まったんですか?」
( ^ω^)「ブーン達の目標だお」
( ´_ゝ`)「目標ですか?」
( ^ω^)「そうだお、村を出たのはそのためだお」
オトジャが二人を見つめる。嬉しさと険しさが混じった様な不思議な表情をしている。
( ^ω^)「村を買うお」
(´∀`) 「とりあえず金を貯めて、税の助けや新しい農具なんかを手に入れるつもりだったモナ・……でも、いくらそんな事をしても村は、いつまで経っても変われないモナ」
( ´_ゝ`)「村を買うって言ったら、とてもそこらの兵士で手が出る額じゃないと思いますよ?」
( ^ω^)「がんばるお」
(´∀`) 「まぁ、二人いれば負担は半分だモナ」
( ´_ゝ`)「はぁ」
呆れた様子で首を振る。
( ´_ゝ`)「今の今まで、兵士になった理由は無かったんですか?」
(´∀`) 「いやぁ、無くも無いモナ」
( ^ω^)「そうだお。とりあえず村のために兵士になるって理由はなったお」
(´∀`) 「でも、何をどうしたらっていうのはさっぱりだったモナ」
オトジャとは対照的にモナーとブーンが互いの顔を見て笑いあっている。
( ´_ゝ`)「はぁ」
( ^ω^)「簡単に言ったら、金が有ると無いじゃ大違いだから金になる兵士になったってわけだお」
( ´_ゝ`)「確かに力のある家に生まれでもしない限り、一番稼げる仕事の一つだとは思いますけど」
(´∀`) 「そうなんだモナ」
モナーが割り込む様に話し出した。
(´∀`) 「金があれば村のためになる。兵士になれば金になる。だから兵士になりたいけれど、領主は無能。とても仕える気にはなれなかったモナ。だからずっと他の騎士さんが来るのを待っていて、そこに来たのがイヨウさんだったモナ」
( ^ω^)「つらい時期だったお」
ブーンが目を閉じ、昔を思い出す。
( ´_ゝ`)「良く分かりませんが、分かりました」
( ^ω^)「難しかったお?」
( ´_ゝ`)「いえ。……はい」
( ´_ゝ`)「ここ十数年の間、全く戦は無いですが、隣国に悪い噂がないわけじゃない」
大きく呼吸をしてオトジャが話し出す。
( ´_ゝ`)「兵士になるという事は命を掛けるという事。それなのに明確な理由や目標が無いまま、あなた達はなったんですから。そりゃあ、そう簡単には理解できません」
(´∀`) 「まぁ、力を抜いたら良いモナ」
( ´_ゝ`)「……とりあえず、お金は半分じゃないです」
体を思い切り伸ばしてから言った。
(´∀`) 「お金モナ?」
( ^ω^)「なんのお金だお」
( ´_ゝ`)「さっき言っていた村を買うお金ですよ。半分じゃない」
( ^ω^)「……また何か面倒な決まり事でもあるのかお? 二人の場合は割り増しで払えとか」
( ´_ゝ`)「そうじゃないです。三等分にしましょう」
( ^ω^)「どういう事だお」
( ´_ゝ`)「幸い、私の目的にはお金が掛かりませんから」
( ^ω^)「掛かりませんって……、本当に良いのかお?」
(´∀`) 「モナ達は余裕なんて全くないから、ありがたく受け取っちゃうモナ?」
( ´_ゝ`)「えぇ、構いません。私としても目的が二つになれば張り合いも出ますし、お互い良い事だけなら構わないでしょう」
( ^ω^)「……ありがとうだお」
モナーとブーンが頭を下げた。オトジャが制止してもすぐには顔を上げようとしない。
なんども頭を上げる様に言い、ようやく姿勢を戻した二人の目にはうっすら涙があった。
オトジャが何も言わずに、二人が話せるようになるのを待った。
屋敷に行く前に身奇麗にしようと、ニンジャが早めに宿の準備をした。
三人の後にニンジャが風呂に行ってから、どれくらい時間が経っただろうか。オトジャは今ニンジャが来たらなんと説明したら良いかを考え始めていた。
(´∀`) 「ところで、オトジャの目的はどんな事だモナ?」
モナーの言葉にオトジャは苦虫を噛んだ。
( ´_ゝ`)「それは……」
気まずそうなオトジャからは、なかなか次の言葉が出てこない。
( ^ω^)「別に、言いにくい事だったら言わなくても構わないんだお」
(´∀`) 「そうだモナ。そのうち、言ってもいいと思った時にでも聞かせてくれたらそれで良いモナ」
( ^ω^)「もちろんずっと言わなくなったそれはオトジャの自由だお」
(´∀`) 「そうだモナ」
( ´_ゝ`)「ありがとうございます」
オトジャが顔を下に向けて隠した。
( ^ω^)「お礼を言うのはこっちだお」
( ´_ゝ`)「いえ、すごく嬉しいんです。だからお礼が言いたい気分なんです」
三人が長い間、気恥ずかしそうに笑いあう。オトジャと二人が会ってから数ヶ月。
初めて、見る事の出来なかった互いの内側を見る事が出来た気がしていた。
|/゜U゜| 「じゃあ、そろそろ相手さんの屋敷に行くぞ」
ニンジャが計った様に部屋に入って来た。




