迷宮剣聖と迷宮魔導師、宴会の準備をする
こちらは、『ひとりぼっちの異世界攻略』の同人……二次創作……ナンデショウカネェ。
この場を借りて、作者の五示先生に御礼申し上げます。
というか、毎回毎回まことに申し訳なく。
ここ最近のストームの日課。
毎朝定時に目を覚まし、身支度を整えた後、ストーム・ブートキャンプを開催。
といっても、この地下迷宮100層では参加する人間も数が限られる。
そもそも、このオムイの街周辺に存在する迷宮はいくつもある。
冒険者達は自身の実力に応じて適切な迷宮で探索を行い、そこで入手する資源や素材などを持ち帰って生活の糧としているのが大半であり、ストームがいる『正体不明神出鬼没』な迷宮になど、誰も足を延ばす事はなかった。
「それなのにまあ、何でこう毎朝定時になると、脳筋達が集まってくるのかねぇ」
軽い準備体操を行った後、目の前に並んでいる学生達をクルリと見渡す。
ストームの目の前に集まっているのは、俗にいう『脳筋体育会系グループ』。
柿崎という青年を筆頭に集まっている、いわば肉体派の五人組。
そしてそれとは別に集まっているのが、新体操部っ娘やバレー部っ娘といった、女子体育会系。
「なあストームさん、そろそろ始めてほしいのですけれど」
「ああ、今日の参加者はこれで全員だな。男子6人と女子5人。それじゃあ始めようか」
「よっし、これがないと一日が始まらないっていう感じだからなぁ」
「「「「「よろしくお願いしますー」」」」」
といった感じで、ストームブートキャンプが始まる。
まあ、異世界の拳聖であるストームには普通の日課程度の運動量であるが、まだ若い彼らにとっては『一日の運動量』をはるかに超える運動量でもある。
「それにしてもさ、彼らのあの運動に対する熱量ってとんでもないと思うんだよね。特にバレー部っ娘たちにこっそりと混ざっている楯っ娘と、彼女に連れられて来て半泣き状態のメリメリさんなんて、何でここに参加しているのかまったくわからないよね。わからないといえば、ストームさんやマチュアさんって、なんでここにいるの? 俺たちってさ、ここの迷宮から外に出るとマチュアさんやストームさんのことはすべて記憶から消滅するんだけれど、ここの階層に到達した瞬間に全て思い出すんだよね。これってさ、人間の記憶領域の一部が二人の存在というもの事態を認識阻害しているっていうか、二人って明らかに人間じゃないよね。つまり神の意思か何かが作用して、二人の事を故意に記憶から抹消しているって事なのかなぁと思うんだけれど、そこんところってどういう事か分かる?」
ストームブートキャンプに参加していた6人の男子の1人である遥は、とっととブートキャンプから脱出した後、近くにある屋外炊事場のような場所で食事を作っているマチュアの元に近寄り、話しかけていた。
当然、マチュアはいつものペースでのんびりと食事を作っている真っ最中、今日はチキンカレーとナン、野菜サラダといったごく普通のカレーのセットを仕込んでいる真っ最中。
「はいはい。おおよそその通りだと思うから、遥くんはそこで大根と水菜、にんじんを使ったサラダの作成を担当。わからない事は委員長達に聞いて頂戴、返事は『はい』だけ、よろしい?」
「サー、イエッサー……とほほ」
マチュアの権幕に負けて、遥は傍らでナンの生地を捏ねている最中の委員長達の元へ向かう。
そこではのんびりとナンを捏ねている委員長と副委員長達が、かしましい声を上げつつ料理に集中している真っ最中。
「それにしても、こんなところで本格的カレーが食べられるなんて思ってもいなかったよ」
「うんうん。私達はこのレシピをおぼえて、オムイの町で本格カレーを作って見せるのよ、あたらしいオムイの名産品の一つをおぼえるのよ」
「ええっと……強力粉が2500グラムでしょ? そこに水1.5リットルとサラダ油を120グラム、バターが180グラム……あとはなんだっけ?」
「砂糖が50グラム……でも、少し多めにして甘くしても大丈夫だよね?」
「ドライイーストって、35グラムでいいのよね? これ、少し分けて貰いたいけれど大丈夫かなぁ」
といった感じで、委員長たちは本格的ナンを作るために頭が手一杯。
仕方なく遥は隅っこでにんじんと大根の皮を剥き、拍子木状に細く切断してから水に曝してのんびりと待機。
「それにしても……なんだか、こういうのっていいよな」
ふと、遥は周囲を見渡す。
額に汗を流してブートキャンプを堪能している連中、料理を作っているグループ。
この場にオタグループやビッチグループ、その他一部の女子がいないのは、アンジェリカさん達と一緒に別の迷宮で特訓の真っ最中だから。
それも、昼頃にはこっちに合流してランチを一緒に取るという事になっているので、この後も次々と人が集まって来るのは目に見えている。
そうなると、遥としては逆に息苦しくなって来るので、今はどうやってここから逃げ出そうかと算段を立てている真っ最中。
並列思考でサラダの仕込みは続けているものの、もう半分の思考はいかにして出口から脱出するかというところなのだが。
「へい、遥青年。サラダの仕込みが終わったら、次はドレッシングだよ」
「ドレッシングって、それってマヨネーズを使ったオーロラソースとか、シンプルにオリーブオイルと柑橘系の果汁を絞ったものでいいんじゃない? ほら、やっぱり素材の味を楽しむのがサラダだし、そもそも昔はサラダを食べるのも塩だけとかそういう時代もあったんだよ。それなら俺たちも、先人に倣って塩とオリーブオイルでドレッシングを作る方がいいんじゃないかって思うんだけれど。あ、それよりもいっそ、マヨネーズを一から作るっていうのもありだよね、オムイでも作った事があるからさ、それでいいんじゃないかなって思うんだけれど」
「ふむ。それもいいね。じゃあ、この卵とサラダ油と酢で、マヨネーズを作ってくれる? ボウルは大小どっち?」
目の前に並べられた食材を見て、半ばうんざりしている遥であるが。
ふと、周りで頑張っている連中を見る。
皆、何かしらの目的で頑張っていたり、久しぶりの息抜きも兼ねているという事でキラキラと輝いている。
「そうだよなぁ。それじゃあ、俺も俺にできることを頑張りますか……特大ボウルを貸してくれますか? 後は泡立て器を三つ」
「ほい、これでいいかい?」
マチュアに渡された泡だて器を手にしたのち、遥は『触手丸ぐねぐね』を引っ張り出すと、彼らに泡立て器を手渡す。
「それじゃあ、いきましょうか!!」
8本の触手が一斉にグネグネとうねり、泡立て器を巧みに操り始める。
はたから見ると、巨大なボウルの中に触手が突っ込まれてグネグネと蠢いているため、まさかそこでマヨネーズが作られているとは誰も想像できない。
傍らでその光景を眺めているマチュアでさえ、『うへぇ』といった表情をしているのだから。
そんなこんなで遥がマヨネーズを作り終えた頃には特設窯からは何の香ばしい香りが、そしてマチュアの目の前の巨釜からはカレーの程よい香りが漂って来た。
――To be continue
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




