喧嘩するほど・・・
話の流れには一切関係ないですが、一時感想欄で盛り上がった海自潜水艦のアクティブソナー装備の有無について、6/29付けで読売新聞にて防衛省がそうりゅうの事故を受けて潜水艦にアクティブソナーの装備を検討中という記事が出たので、積んでないで確定みたいですね。記事の中でも「積んでない」と明言されてます。
じゃあ、研究開発でいろいろでてきた資料は何なんだって感じですが、あくまでも研究開発してただけってことなんでしょうね・・・。
新世界暦2年3月1日 アズガルド神聖帝国 帝都アガルタ 統合参謀本部 大演習室
通常は兵棋演習などで使用される二階席のある体育館のような広い部屋は、APTO加盟国が持ち込んだ民生品のパソコンやらプリンターやら、そしてそしてそれに伴う配線やらで埋め尽くされている。
それらの機材が発する熱は相当なものだが、中の人間がかろうじて倒れずに仕事をしていられるのは、窓際や出入口に大量に並べられたスポットクーラーのおかげである。
各国の連絡将校の詰める事務所として機能してはいるのだが、東島の戦線に関する実務的な面は、アガルタ国際空港にアメリカが設置したプレハブ村で行われているので、こちらはどちらかというと政治的な側面が強く、国によっては派遣将校はアガルタ国際空港や大使館の駐在武官と兼務である。
そんな場所なので、緊迫した空気は無く、良く言えば和気あいあいと、悪く言えば弛緩した空気で皆仕事をしている。
当たり前だが、アズガルド神聖帝国軍の中枢施設でそんな空気なのはこの部屋だけである。
「我が国が地上戦力の派遣を決めたぞ。これで少しは戦線を進められるだろう」
そういった英陸軍大尉の席の横には、無残に破壊された複合機が鎮座している。
暇だからお前らにアメフトを教えてやる!と言った米海軍中尉と、それに悪乗りしたどこかの国の三等海佐が、他の被害者と共に破壊したのである。
なお、首謀者2名は複合機破壊後、英陸軍大尉に正座させられていたのだが、イギリスが勝手に自分たちの席の横においているだけで、そもそも複合機自体は米軍の備品だったりする。
「派遣っていっても海兵隊だけだろ?全部派遣しても1万人いないじゃん。足んないよ」
首謀者ではないものの、地味にアメフトには参加していた米海兵隊大尉が暑そうにアイスを食べながら言う。
「台湾も増派って言ってるし、どうにかなるだろ?」
「詳細は詰めてますけど、今の規模を倍増、ってことみたいなので、1個師団くらいは来るんじゃないですかね?」
台湾増派に期待する英陸軍大尉に台湾空軍中尉が応える。
「APTO本部誘致に向けたパフォーマンス、なんて言われてるが、パフォーマンスで派遣されるほうもたまったもんじゃねぇな」
暑い、と団扇でパタパタ仰ぎながら件の三等海佐が言うが、複合機を破壊したことに全く反省した様子が無い。「プリンターが遠いし遅いよ」とかぶつぶつ言いながら、自衛隊の設置したプリンターに書類を取りに行っている。
「まぁ、その辺の思惑は我々にはわからないですが、長期化を見据えるなら、派遣部隊の交代も考えて規模を拡充しないとしんどいでしょう」
長期化を見据えて前線部隊をローテーションしよう、とか言う時点で勝っている側の考えなのだが、アズガルド単体では負けていても、APTOとしては派遣後負けは無いので仕方ない。
ちなみに、台湾がAPTO本部の誘致を行っているのは今後の中国の干渉に対する対抗策という目論見も勿論あるし、もともと国際機関からの排除が続いていた台湾にとっては、大規模な国際機関の本部設置と言うのはある種の悲願でもあった。
他にはバーレーンとシンガポールが名乗りを上げている。
「うちは地上戦力はこれ以上無理ですから、政府は航空戦力を派遣したいみたいですね」
シンガポール陸軍の少尉はうちは小所帯ですから、と言いたげである。
なんやかんやとお互いありながらも、最終的には味方同士であるのであまり緊迫感のない会話は、笑いながら入ってきた米海軍中尉の投げたアメフトボールと、怒り狂った英陸軍大尉が投げたマーマイトの瓶によって終わりを告げたのだった。
新世界暦2年3月1日 日本国東京都 迎賓館
「大陸間調整会議?」
日本を訪問中の敷島大公国首相との首脳会談で出てきた言葉に、日本国首相は首を傾げる。
どうでもいいが、どっちも首相なのでややこしい。
「まぁ、簡単に言えば大国間の衝突を避け、仮に衝突しても話し合いの場を残すために、年1回開かれていた多国間首脳会議です」
「我々でいう国連のような常設機関がない故の知恵か・・・」
地球と異なり、1つずつの大陸が小さく、大陸ごとに大国がある世界故の会議である。
「参加資格保有国は我が国の他に、神聖ゲルマニア連合共和国、アトランティス帝国、大清帝国、汎スラブ社会主義同盟、リベリタリア同盟、海洋帝国ムー、ファランヘ熱砂王国の8か国です」
「みんな癖が強そうだなぁ」
「我が国と友好的なのはムーですかね。ゲルマニアとファランヘはまぁ可もなく不可も無く。大清帝国は我が国を目の敵にしてますね。宗教差別政策のアトランティスと人種差別政策の汎スラブも友好的とは言い難いです」
「どこの世界でも国際社会は面倒だねぇ」
お前別に政治の全てを面倒と思ってるよね?と言った感じの目を室内にいる日本政府関係者全てから向けられているが、日本国首相が気にした様子は勿論、気づいた様子もない。
「今年の開催はムーが当番国だったのですが、各国がどこにあるかもわからない状況では開催されない可能性が高いでしょうねぇ・・・。そもそも他にも国が増えた状況で、あの会議に意味があるのかは別の話ですが」
元の世界では8か国とその関係国や属国で世界経済の9割以上を占めてしまうような覇権国家の集まりだったから意味があったものの、都合4つの世界が合併してしまった現状では、その8か国で世界のかじ取りができるわけでもない。
「すでにゲルマニアは地球国家のロシアと組んで中国と交戦中、アトランティスはアズガルドに侵攻して我々APTOと交戦中。他にも貴国の世界から来た国と思われる勢力による武装侵攻や侵犯事件が多数起きていますから、どっちみち開催は難しそうですなぁ」
「ムーが自分から仕掛けるとも思えませんし、ファランヘも地続きになっていないなら侵攻はしないと思いますがねぇ・・・。リベリタリアは・・・まぁ、うん・・・」
あの国はわからん。ということで敷島大公国首相は話を締めくくる。
「そういうわけですので、各種国際組織へのお誘いは基本的に受けさせていただこうかという方向で話が進んでいます」
「それは良かった。我が国としては最大限協力を惜しまないつもりです」
なんせ日米間に出現したせいで、現状では民間航路は海空問わず迂回を余儀なくされているのである。
さっさと国際ルールの型にはめて、航路の正常化を急ぎたい、というのは何も日本だけでなく、アメリカ、多島海にある各国の考えである。
幸いなことにやや古風なことを除けば、日本との意思疎通に問題が無いので、日本が役目を押し付けられた、とも言えるが、逆に言えば経済進出も日本が好きに出来ると言うことである。
「軍事同盟への参加は政治側の意見が割れていますが、軍内では同盟参加に賛成する意見が大勢ですのでじきまとまるでしょう」
「それは良かった」
APTOに加盟しない巨大な軍事力を持つ国が勢力圏内のど真ん中に居座る。というめんどくさい事態を避けられそうなことに日本国首相は息を吐く。
「ただ、その・・・見返りと言いますか・・・いろいろ融通していただけると・・・」
「え、例えば?」
こんな交渉の場で露骨に見返りを要求する方もする方なら、それを具体的に聞き返す方も大概である。
「兵器の輸入とかをー、させていただけると嬉しいなぁ、とー、思うわけですよ」
「はぁ、ちゃんと支払いさえしてもらえればそれは一向に構いませんが」
兵器の輸出入に関する世界間の認識の齟齬で会話がかみ合わない。
地球において兵器の輸出入は政治的思惑の絡んだビジネスだが、敷島のいた世界ではそもそも兵器開発自体が一部の大国に集中し、それぞれ対立しているので属国や影響圏の小国への供与か、開発・製造能力が皆無で数をかき集めている大清帝国への旧式化した兵器の売却くらいしか兵器市場がないからである。
要するに、最新兵器はどこも輸出してくれないと思っている敷島側と、味方になって金さえ払ってくれるなら割となんでもオッケーなAPTO側では噛み合うはずがない話題だということだ。
「まぁ、いろいろとご迷惑をおかけするかと思いますが・・・よろしくお願いします・・・」
「はぁ・・・?」
心底申し訳ないといった感じの敷島大公国首相と、いまいちよくわかってない日本国首相だったが、その後割とすぐに、敷島大公国各軍の仲の良さを思い知ることになるのだった。
新世界暦2年3月5日 日本国東京都 防衛省 防衛装備庁
「敷島大公国から何が欲しいかリストが届いたって?・・・てどうしたお前ら」
部屋に入るなり、死屍累々という言葉がぴったりな状況を見て防衛技監はドン引きする。
「なにこれ?」
無言で差し出された紙に目を通す。
その表題は「敷島大公国より提案要求のあった兵器一覧(仮)」となっている、庁内に回る前のとりあえず情報をまとめた状態の文書のようである。
「え゛」
そして内容に目を通して固まってしまった。
例えば、その一例はこうである。
・敷島大公国防空軍
レーダーサイトに設置する警戒用のレーダー(※ただし敷島大公国で防空軍以外に採用されていない、または提案されていないもの)
・敷島大公国空軍
空軍基地に設置する警戒用のレーダー(※ただし敷島大公国で空軍以外に採用されていない、または提案されていないもの)
・敷島大公国海軍
海軍航空基地、もしくは軍港に設置する警戒用のレーダー(※ただし敷島大公国で海軍以外に採用されていない、または提案されていないもの)
こんなのが続くのだから全員真っ白になってしまうのも仕方がないことだった。
次も2週間くらいみといてもらえれば




