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クラウンクレイド  作者: 茶竹抹茶竹
【零和 拾捌章・私達は、いつかそれを魔法と呼ぶのだろう】
202/220

[零18-5・人間]


0Σ18-5


「人の世界はもう限界だと知った。いつの時代も変わらぬ過ちを繰り返すのならば、人を超えたものが世界を変えるしかない」

「そう簡単に!」


 私の杖によって撃ち出した熱線へとロトが勢いよく刀を振り下ろしてその閃光を断ち切る。刀が一瞬熱線の勢いに押されよろめきそうになるも、そのままぶった切ってみせた。散り散りになった熱線が踊り狂い周囲を焦がし溶かし燃やす。


 切り裂いた炎の残骸を纏ったままロトが加速をかけて刀の切っ先を突き立てようと懐へと飛び込んでくる。

 彼女がワイヤーを撃ち込んだ先を視界の端で捉えて軌道を予測しながら、私は鍵を構えてそれを受け止める。

 空中で鍔迫り合いになり揉み合いながらも、それでも尚空中での姿勢を制御し続ける。振り下ろされた刀を、杖のその独特の鍵の形状を活かして抑え込む。


 勢いよく踏み込まれて互いの獲物が弾き合い、それと共にワイヤーでその場を跳び退く。空中を高速で移動して距離を取ろうとする所を狙い、互いの撃ち出した焔が空を裂く。

 ロトが放った焔を寸前で躱し、焔の欠片を杖で横薙ぎに払いのけて。

 その一瞬を狙って距離を詰められていた。私が咄嗟にハンドガンを構えるも。


「遅い!」

「ちぃっ!」


 銃声は空虚に轟き、ロトが刀を振り下ろす。ワイヤーの接地を解除し身体を重力に任せて落下させる。それによって振り下ろされた刀を躱すと思ったが、その切っ先が私の杖を掠めて弾き飛ばす。

 その衝撃に押されて私は地面へと落下する。AMADEUSの出力を最大にしてその勢いを殺すも地面に転がった衝撃が肺を貫き骨を軋ませる。


「かはっ!」


 身体の奥から溢れ出てきた痛みと血の味が口の中を満たして。一瞬視界が暗転するも即座に身を起こしてその場を跳び退く。ロトが飛び降りてきて刀を振り下ろし、その切っ先が地面を穿つ。

 ハンドガンの引き金を咄嗟に引くも、その銃弾を彼女は刀で切り落としてみせた。

 私の目の前でじりじりと歩み、迫ってくる彼女へと私は叫ぶ。


「分かるよ、人はいつだって過ちを繰り返す! この世界だって歪んでいるのかもしれない!」


 ロトの言葉も確かに事実であるのだろう。けれども。


「それでも、これも祈りだったんだ! 誰かの為の!」


 私の言葉を切り捨てるように彼女は刀を横薙ぎに払って。その衝撃波が熱風を纏い私の身を打つ。彼女の刀の刀身が炎を纏い、激しく音を立てながら盛る。


「なら、その祈りはいつ救いに変わる」

「分からない。でも、そうやって祈りを重ねていくしかないんだ」

「無意味な言葉を!」


 ロトが動く前に地面に焔を撃ち込む。それが激しく火柱を上げて地面を這いロトへと向かう。彼女が半身を引いて振りかぶると、勢いよく踏み込みその場で刀の切っ先を用いて円弧を描く。駆け抜ける火柱を切り裂いてその焔を踏み締める。


 私はその隙に後方の壁へ向かってワイヤーを撃ち込み地面を蹴って距離を一気に離す。ロトが左右の壁にワイヤーを撃ち込み空中へと舞い上がる。

 ロトの使っているのは原理はハウンドと同じAMADEUSとWIIGである。だがそれが計四本のワイヤーである以上軌道予測は難しく、そして空中を高速で動く相手に対して焔の弾丸を撃ち込むのは非常に難易度が高い。


 ロトが焔の弾丸を空中に撒き散らしながら私に向けて怒鳴る。


「そうやって世界を見殺しにしてきた者達の上に立っているのではないのか!」

「何もかもを見捨ててきたわけじゃない!」


 私が焔の弾丸を弾き落としている間にロトが動いた。咄嗟にハンドガンの引き金を引く。杖を翳しワイヤーを撃ち込み、接近される前に距離を離す。空中で身を捩りハンドガン側のワイヤーガンを壁側面に向けて打ち込み、杖のワイヤーのアンカーを解除して魔法を発動する。


 私の撃ち出した焔の塊にロトが焔をぶつけ返し、その爆炎の中を突き抜けて彼女は切り込んでくる。

 私は咄嗟に空中制御を解除し一気に地面に着地する。空中から斬りかかってきたロトの一撃を身を翻して躱すも、そのままロトが地面を蹴って。乾いた足音が金属の通路に反響して、彼女の乱れた息遣いをかき消す。私が杖を握り締める瞬間に息を呑む音が鼓膜に反響する。


 咄嗟に杖を翳して。勢いよく振り下ろされた刃を受け止めても尚、消えはしない衝撃に私は歯を食いしばる。刀と杖が触れ合い金属が嘶き、その空気の振動すらも呑み込んだ衝撃が私の指先に走り、骨を貫いて。触れてもいないのに、それは痛覚を刺激して私の感覚を一瞬麻痺させて。

 ロトが杖で受け止められたままの刀を、更に押し込み踏み込んでくる。体重を乗せ押し込まれ、私はその刀身に追い込まれ、その切っ先が私の視界の中で踊る。歯を食いしばり息を吸い込み言葉に鳴らない呻きを漏らす。そんな私に向けて彼女は声を荒げる。


「人の歴史がその積み重ねでしかないのなら、人を超えた私達がやるしかない!」

「違う、私達は人間でしかない!」

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