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クラウンクレイド  作者: 茶竹抹茶竹
【26章・世界の果てに/祷SIDE】
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『26-1・祷茜』

【26章・世界の果てに/祷SIDE】

26-1



 シルムコーポレーションの研究所から勢いよく黒煙が上がり、何かに引火したのか爆発音が二、三回続いた。その光景から背を背けて、私と明瀬ちゃんは施設を後にする。加賀野さんとの合流地点とは真逆の方角へ脱出した私は、そのまま合流地点とは逆方向に進み続けた。

 明瀬ちゃんの意識は朦朧とし始めていて、肩を貸しても真っ直ぐに歩けない様だった。


「明瀬ちゃんは死なせない」


 施設から十分に離れて、私は足を止めた。周囲にゾンビの気配が無い事を確認して、私は街路樹の陰にゆっくりと明瀬ちゃんを寝かせた。血清が入った注射器を取り出す。明瀬ちゃんの手首を取って、私は彼女の腕に注射器を添えた。明瀬ちゃんが掠れた声で私に言う。


「祷……駄目……だよ」

「今助けるから」

「それは……私に使う……んじゃな……くて、みんな……を助ける……為に。解析して……生産する……方法……」


 私は無言でその言葉に首を横に振った。

 それでは意味なくて。救いたいのは世界なんかではなくて。

 明瀬ちゃんの血管が肌の下で太く隆起していて。私は其処に注射針を打ち込んだ。明瀬ちゃんは何かを言おうとしていたが、そのまま目を閉じて。注射器の中の液体が無くなって、私は針を抜く。

 その傷口から血が小さく噴いたので、私はその箇所を舌でなぞった。

 

 数分。私は祈る様な気持ちで、明瀬ちゃんの事を見つめていた。その手を握り締めて、ずっと待っていた。

 先程までは大きく乱れていた明瀬ちゃんの呼吸がゆっくりと落ち着いていき、容態が安定していくのが素人目にも分かった。


「私は、明瀬ちゃんを守るだけだから」


 例え、この世界を見捨てても。例え、この世界に見捨てられても。私達は生きていく。

 生き延びた事に、意味など見出さない、見出す必要なんてない。私達の「生」に、意味も意義もきっと存在しないのだ。それを探して、掲げて、背負い込むなんてこと。生きていくのに必要ないのだ。


「約束したよね、明瀬ちゃん。誰も知らない所、世界の果てみたいな場所。そこで星空を見ようって。二人で、二人だけで」



 私達が生きていく事に、きっと意味なんて無いのだから。私達は私達の為に、ただ生きているだけなのだから。それで十分なのだから。


 だから、私達は生きていく。











  作者   ・茶竹抹茶竹

  表紙絵  ・ツチメイロウ

  脚本協力 ・アリナン



  

【クラウンクレイド   完】










『告知。

 アダプター変異条件が追加されました。これによりアダプターと感染前の因果関係が消失しました』









......To be continued.


最終話までお付き合い頂き誠にありがとうございました。次ページも是非ご覧下さい。

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