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亡国のレギオン  作者: 高井高雄
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第2次ラペルリ攻防戦 第10章 亡命

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 みなさん、初詣はいかれましたか、私は地元の神社に行きました。

 戦闘が終わり、ほのぼのとした内容です。お楽しみください。

 ドイツ軍・ミレニアム帝国軍第2次ラペルリ連合王国侵攻軍降伏から、後日。

 朝日が昇りつつある早朝、[やまと]のCICでは、当直員たちがレーダースクリーンを眺めていた。

 対空レーダーの当直員(2等海曹)が気が抜けたように大きな欠伸をした。

「はぁーあ」

 すると、対空レーダーが微弱に反応した。

「ん?」

 レーダーを操作し、確かめる。

「!対空レーダーに感あり!」

 当直員の報告に、当直士官がレーダースクリーンを確認する。

「かなり、小さいですが」

「海面すれすれだぞ」

 当直士官が叫ぶと、艦内電話に飛びつき、緊急連絡した。

「艦橋」



[やまと]艦内に対空戦闘を知らせる警報音が響き渡る。

 艦橋ウイングで警戒している航海科員が双眼鏡でこちらに接近する竜を確認したのである。

「目標を確認!距離2000!」

「数は?」

「6騎です」

 見張り員が報告した後、竜騎士がこちらに見えるよう白旗を掲げた。

「接近中の竜騎士群より、白旗を確認!戦闘の意思がないようです」

 そう報告すると、艦長の(たて)(よし)一三男(いさお)1等海佐と航海長が出てきた。

「どういうつもりでしょうか?」

 航海長の問いに立吉は答えず、1つ命令を出した。

「飛行甲板要員を退避させろ!」

「はっ!」



 白旗を掲げながら、サブリナは愛騎の手綱を操り、巨艦の、広大な甲板に、騎竜を着艦させた。

 船に着艦した彼女たちは殺風景な甲板を見回した。

 誰もいない。

 そう思ったのもつかの間、鉄のドアが開き、そこから、鉄兜を被り、灰色のでっぷりとしたものを着込んだ青や紺色等混じりあった服の水夫たちがショウジュウとかいう黒い武器を持って、出てきた。

「ミレニアム帝国軍の竜騎士に告ぐ!敵対の意思がないのならば、竜からゆっくりと降りろ!」

 とてつもない声にサブリナたちは少し驚いたが、言われた通りに竜から降りた。

 サブリナは愛騎から降りると、大声で叫んだ。

「我々は貴軍に敵対する意思はない!我々は亡命にきたのだ!」

 その言葉に、水夫たちは顔を見合わせた。

 しばらくしてから、1人のレギオン・クーパーの将校と思われる男が両手を挙げてゆっくりとこちらに向かってきた。

 腕に何かつけているが、その文字はなんと書いているのかはわからない。

 MP・警務隊と書かれている。

「貴公が軍使か?」

 サブリナは男に問いかけると、男は答えた。

「そうだ」

「では、貴軍の指揮官に面会を申し込む」

 サブリナがそう言うと、男は何か言っている。恐らく、ムセンキ、というもので上に報告しているのだろう。



 高沢3尉からの報告に、板垣は少し考え込んだ。

「・・・佐藤、どう思う?」

「あくまでも私の個人的な考えですが、あの神風特攻は竜騎士団の自発的な考えではなく、ナチス・ドイツ軍からの具申ではないかと・・・強要はされてないと信じたいですが・・・志願者を募ったとしても、こんな使い捨てのような扱いを受ければ、反感を感じるのは当然でしょう。亡命したいと言うのは本心だと思います」

 佐藤は少し考えて、答えた。

「そうだな、俺もそう思う。彼女と直接話す、幕僚室に案内してやれ」

 板垣がそう言うと、幕僚室に向かった

「はっ!」

 佐藤は、すぐに警務隊(MP)に伝えた。



 幕僚室で待っていると、警務隊(MP)に連れられた女性騎士が1人入ってきた。

「サブリナさんでしたね、部下から話は聞いています」

 板垣は立ち上がり、言った。

「そうだ」

 サブリナはうなずいた。

 幕僚室内は板垣以外に佐藤と笠谷、9ミリ機関拳銃を装備した隊員たちがいる。

「貴女は竜騎士団長とうかがっています。なぜ、亡命を?」

 板垣はサブリナの目を見ながら、聞いた。

「なぜ?」

 サブリナは声に力を入れて、言った。

「彼ら、皇帝軍は我々を捨て駒の1つとしか考えていない。貴公たちも知っているだろう貴軍の船を沈めるために、我々に非道な命令を出した。私の多くの部下たちがそれに志願し、死んでいった。あいつらを信じるからこうなったんだ!!」

 板垣は彼女の言葉に、笠谷と佐藤と顔を見合わせた。

 笠谷が何か思いあたるかのような顔をしたので、板垣はうなずき、彼は口を開いた。

「貴女の口調と表情から察するに、かなりドイツ軍を嫌っているようですが?」

 笠谷の問いに、サブリナはきっぱりと言った。

「ああ、そうだ。正確には私だけではないがな・・・」

「と、言いますと?」

 佐藤が尋ねた。

「帝国軍にいる者の中にも、皇帝軍の政策に不信を抱く者もいるという事だ。だが、皇帝の力に恐れをなし、誰も異議を唱えたり、立ち上がる者はいないがな」

「そうでしょうね」

 笠谷が納得したように言った。

「それで、貴女の望みは?」

 板垣が問う。

「我々を貴公たちの陣営に入れてくれ。私は帝国内にいる反帝国勢力をいくつか知っている。今回の帝国軍の敗北を知れば、立ち上がる者もいるだろう。どうだ、悪くない話だと思うが」

 サブリナの言葉に板垣は考え込む。

 確かに悪くない話ではある。板垣もCIAの情報から、反帝国勢力がある事は知っている。だが、タイミングが良すぎではないか。

「サブリナさん。すぐに解答を出す訳にはいきません。貴女の事をよく見て、判断する事にしましょう」

 板垣の判断に、サブリナは女性らしく微笑んだ。

「当然だな。だが、あまり時間はない」



 日差しが強くなる正午、1機のSH-60Kがグラング・バー島に近づいていた。

 キャビン内には笠谷と、松野、宮林、イングリット、アルシア、北井、フレア、真琴がいた。

 笠谷は仕事で行くのだが、すぐに終わるものであるから、島で気分転換(ハーレム2佐の監視)してこいという事で、女性陣が同行しているのだ。

 もっとも、真琴は記者としての仕事、フレアは別件の役目のためなのだが。

 SH-60Kが港町に着陸すると、挺進団団長のアーノルが出迎えた。

 グラング・バー島は占領後、ミレニアム帝国本土侵攻の際に兵站司令部として機能するように準備されていた。

 笠谷が来たのはその準備がどこまで進んでいるかを知るためだ。

 本来なら、笠谷ではなく、陸自の代表か、海兵隊の代表が行くべきなのだが、あいにくとどちらも事後処理に忙しく、松来(まつらい)(せい)()1等陸佐しかいなかった。陸自の幕僚たちは自衛隊代表として行くのだから、彼を送れば問題を起こしそうという事で却下した。

 その時、松来は「どれだけ、俺を信用してないんだーお前ら!水島海将補といっしょにするな!!」と怒鳴った。

 それに対して「私は問題が向こうからやって来る。彼は自分から問題を引き起こす。根本が違うだろう」と水島は述べた。

「それに巻き込まれる人間から見れば、どちらも大差ない」と彼女の親友は突っ込んだが・・・

 そのまま、艦隊にこの話が持ち上がり、誰を出すか議論された。

 海自も米海軍も、次の帝国本土侵攻の前段階の制海権の確保の作戦行動の準備のため、指揮官、幕僚に動ける者がおらず、結局消去法で笠谷を派遣する事にしたのだ。

 そして、佐藤が会議で、笠谷を派遣するのなら、松野たちを同行させた方がいい、と具申した。理由はハーレム幕僚は、どこかへ行くたびに、必ず美女か美少女が追加されるからその対策として、であった。

 佐藤の案に幕僚たちはうなずいた。

 もちろん、笠谷は「どういう意味だ!」と吠えたが・・・

「女性を集める磁石、もしくは女性たぶらかし装置」

 と、笠谷の妹がとんでもない事を言った。

 ちなみに笠谷は「お前は俺をそんな目で見てるのか!!」と吠えた。

 この時、板垣はコーヒーをすすりながら「平和だな」と囁いた。



 視察を終えた後、笠谷たちは町の様子を見に行った。

 占領したといっても、特に不都合な事がない限り住民たちの自由は保障されている。

 しかし、可能な限り住民感情に配慮しても、敵意を持たない人間がいないわけではない。

 町の視察をしていると、1人の中年の男が短剣を持って、笠谷に襲い掛かった。完全に隙をついた奇襲であるから護衛の兵たちも対応できなかった。

「覚悟ぉぉぉ!!」

 タン!

 男の叫び声と共に銃声が響き、男の胸を貫いた。

 すぐに、2回目の銃声が響き、男が崩れ落ちる前に額を貫き、絶命させた。

「大丈夫ですよ。優秀なソゲキシュがいますから」

 アーノルが落ち着いた口調で言うと、狙撃手がいる方向を指差した。

 笠谷たちがその方向を見る。

「あの距離から・・・撃ったのか。高井3尉並の腕だな」

 笠谷の驚き、そして「会ってみたいな」と言った。



「ふふふ。いい顔のレギオン・クーパーの将校様だわ」

 ボルトハンドルを引き、空薬莢を排出し、次弾を装填しながら短髪の金髪の髪に美しい顔立ちの少女がつぶやいた。

 少女の名はサンニ・フルスティだ。

 レギオン・クーパーから供与されたレミトンM700のスコープを覗き、なかなかいい顔をしている将校を見た。

 サンニは挺進団のラバリィー隊に所属する狙撃手だ。

 ラバリィーとは、群島諸国の北側の国の言葉で、狩人という意味だ。

 挺進団唯一の狙撃の専門部隊である。

「見事な腕だ」

 双眼鏡で命中を確認した人のよさそうな部隊長は笑みを浮かべて、彼女の背中を叩いた。

「痛い!痛い!」

 サンニはスコープから目を離し、部隊長に抗議した。

「やめてください!」

「お、すまん、すまん」

 部隊長は、わっはっはっはっ!と高笑いしながら詫びた。

「だが、本当にいい腕をしているな」

 部隊長の言葉に、サンニはさも当然と言う顔で胸を張って、言った。

「あたしはサーマ1の猟師です。この程度は出来て当たり前です」

 サーマは、北の島国の山岳部の集落であり、狩猟村である。

 この村では、子供の頃から弓を持って狩猟をする習わしがある。

 弓の名手ともなると、飛ぶ鳥の目すら射貫くという。

 サンニは、この村でも1,2を争う腕前だという。そのため挺進団に志願したのだが、初めて扱う銃をまるで自分の手足のように使いこなした。

 その、飛びぬけた才能に挺進団に入団してから、レギオン・クーパーの人たちを驚かせていた。

「誰も最初から疑っていないぜ。だが、これほどとは思ってなかったよ」

「隊長。あのかっこいいレギオン・クーパーの将校様に会えないですか?」

「おいおい、無茶を言うなよサンニ。レギオン・クーパーなんざ、雲の上どころか、天の上の人だぜぇ」

 サンニの申し出に部隊長は手を振った。

「えぇぇぇー」

 彼女は残念そうに声を上げた。

「まあ、お前ほどの美貌なら落ちない男はいないだろうが、レギオン・クーパーはな」

 サンニは17であり、村ではすでに子供がいる歳だ。

 村の娘は遅くても16になるぐらいまでには婚姻している。

 サンニはそれなりに地位が高く、かっこいい男の嫁になりたいと思っている。

 そうしているうちに交代要員が上がってきた。

「よぉーし、サンニ。お前は休んでいいぞ」

 部隊長の指示にサンニはM700を肩にかけて休みに入るのであった。

「さて、サルミィを飲みに降りましょうか」

 サルミィとは、リンゴのような果実が入った紅茶で、彼女の好物だ。



 笠谷の女性陣を連れて、先ほど暗殺者を撃った狙撃手のもとへ向かっていた。

 これは公務ではなく笠谷の私情であるから宮林が笠谷の右腕に抱きついている。

 それに対抗するかのように松野が笠谷の左腕に抱き着いている。

 他の女性陣は不満顔で笠谷の後ろを歩いていた。

 宮林は時々後ろを振り向き、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 もちろん、その度にイングリットはむっとなり、北井とアルシアは表情こそ落ち着いている。

 たびたび、真琴の重いため息が聞こえている。

 笠谷自身は心中で「勘弁してくれ」と叫んでいる。

「あっ!ナオユキ様」

 聞き慣れた声に笠谷が声の方向に向くと、薄い褐色の肌に長い金髪をポニーテールにした灰色の目の少女。

 レティシアだった。

「レ、レティシアさん。どうしてここに?」

 笠谷は驚き、聞いた。

「治癒術士が足りないという事で、私もここに送られたんです。それにナオユキ様のいるところなので、自ら志願してきました」

「そうなんだ」

 笠谷がそう言うと、宮林が代表して尋ねた。

「この人、だあれ?」

 答えたのはレティシアだった。

「ナオユキ様とお付き合いさせていただいております。レティシアと申します」

 女性陣から睨まれた。

 宮林は笠谷から離れ、怖い顔のまま、言った。

「尚幸さん、あたしがいながらよく他の女と逢い引きできますね・・・」

「いや、待て・・・話せばわかる」

「問答無用!」

 と、宮林は拳を笠谷の腹部に叩き込む。

「うぐぅ!」

「あっ!ナオユキ様」

 腹を押さえて、笠谷はうずくまる。心配した表情で彼を介抱するレティシア。

 いつもの夫婦喧嘩もどきをしながら、狙撃手のもとへ向かうのであった。

 ラバリィー隊がいる詰所に到着した笠谷たちは隊長から先ほど救ってくれた狙撃手は誰かを聞いた。

「おーい、フルスティ。レギオン・クーパーの将校殿がお尋ねだぞ」

 隊長がそう言うと、金髪の髪に青い目、真っ白な肌をした少女が笠谷の前に現れた。

「貴方は先ほどのレギオン・クーパーの将校様」

 少女は嬉しそうに頬を赤く染め、青い目を輝かせ、しっかりと笠谷をとらえた。

 真琴はとてつもないため息をするのであった。

 珍しくアルシアが表情をピクッとさせた。

 いつもなら、大人の女性として対応する、と言うのだが・・・

「さっきは、ありがとう。おかげで命拾いした。俺は笠谷尚幸だ」

「あたしはサンニ・フルスティです」

 そう言うと、サンニは松野を押しのけ、笠谷の腕に自身の腕を絡ませて言った。

「ナオユキさん。あたしを妾にしてください」

「え?どうゆうこと・・・」

 笠谷は突然の急展開についていけなかった。

「きゃあぁぁぁ!」

 サンニの両耳と首根っこをつまんだ松野、宮林、イングリットに無理矢理引きはがされる。

「痛い!痛い!痛い!」

「断りもなく、あたしの尚幸さんに甘えるのは許さないわよ!」

 宮林がサンニの右耳をつまみながら、冷たい口調で言った。

「・・・右に同じ・・・」

 松野が普段の彼女から想像のつかない氷点下の声音で同意する。

「ナオユキに、不用意に近づくと粛清するわよ」

 イングリットが宣告する。

「兄さん!少し話をしましょう」

 真琴がにっこり微笑みながら、小声で言った。

「ひっ!!」

 笠谷はその笑顔を知っている真琴がマジギレした時のものだ。

 笠谷の脳裏に、真琴のお気に入りの服にコーヒーをぶちまけて、マジギレさせて半殺しにされた事を思い出す。

 第2次ラペルリ攻防戦第10章をお読みいただき、ありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は1月9日までを予定しています。

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