第2次ラペルリ攻防戦 第4章 フランカー対スーパーホーネット
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
日の出と共に、索敵飛行していた空自のE-2D[アドバンスドホークアイ]のレーダーがラペルリ連合王国に向かっている無数の飛行隊を捕らえた。
「目標捕捉。8機編隊の飛行隊と、その後方に10機の輸送機らしき機影と護衛飛行隊と思われる戦闘機8機を確認」
レーダーオペレーターの報告に、先任幹部がコンソールを睨んだ。
「こちらグリーンアイ1、敵飛行隊を捕捉した」
先任幹部が各指揮所に報告する。
「機体を確認。前衛の飛行隊はMiG-29、後衛はユーロファイタタイフーンとC-160輸送機」
「という事は、10機の輸送機には落下傘部隊が乗っているな・・・連隊規模か」
「想定された事態ではあるな」
機内無線機から機長の声がした。
その間もレーダーオペレーターは2つの飛行隊の動向を報告した。
「艦内哨戒第1配備」
[やまと]艦内は全艦放送で哨戒配備を知らされ、警報音が鳴り響く。
哨戒配備は3つに分けられ、出港中、一部の入港地でつねに出されるのは、第3配備、その上が第2配備、そして、第1配備だ。
第1配備は、交替は無く、戦闘等の事態が差し迫っている場合の配備。総員は戦闘配置とはほぼ同等。
[やまと]の乗組員たちは灰色の鉄帽を被り」、救命胴衣を身につけると、自分の持ち場へと駆け出した。
「空自の戦闘機のパイロットは出撃せよ!繰り返す、戦闘機のパイロットは出撃せよ!」
艦内放送が流れる。
女性居住区から飛び出した松野彩海士長はその放送を聞くと、立ち止まった。
(・・・尚幸さん。必ず、帰って来てください・・・)
彼女は心中で想い人の無事な帰還を願った。
「松野ちゃん。行くよ」
同僚に声をかけられ、松野は再び駆け出した。
[やまと]のCICでは板垣と佐藤の2人がいた。
「いよいよ、始まりましたね。司令官」
佐藤は眼鏡を上げ、初老の上官に言った。
板垣はうなずきながら、スクリーンの1つを見た。
そのスクリーンには、E-2Dのレーダー画面が映し出されている。
26個の光点があって、高速でラペルリ連合王国に向かっている。
「よりによって、最初の本格的戦闘の相手がドイツ連邦軍だとはな」
「敗戦国同士というものも、皮肉な話ですが、C-160に乗っているのは、ナチス・ドイツ軍ですよ」
板垣が皮肉に思っていると、佐藤は軽口を叩いた。
「司令官。F/A-18J8機、発艦完了しました」
管制官からの報告を受けると、板垣はうなずいた。
「目標までは?」
「目標到着まで、6分です」
板垣の問いに、レーダー員が答える。
笠谷指揮のF/A-18J隊は、第2部長の作戦通り、前衛の飛行隊は狙わず、後衛の飛行隊、特に輸送機をできる限り撃墜する。
護衛の戦闘機は輸送機を守るために必死の抵抗をするであろう、だからできる限りなのだ。
「敵はミグとタイフーンだけか?」
「グリーンアイ1からの報告ではそうです」
板垣の問いに佐藤が答えた。
「[フランカー]は捕らえていないか」
「恐らく基地にいるのでしょう」
「楽観は禁物だぞ、佐藤」
板垣はそう言って、CICに詰めている1人の女性を一瞥した。
真琴である。
彼女はメモ帳とペンを持って、戦闘のことをすべて記録しようとしているが、チラチラと航空管制員たちを見ている。
顔には出していないが、恐らく兄を心配しているのだろう。
笠谷の上官になってから、月に一度届く手紙の差出人は彼女だ。
会食の時に一度聞いた事があるが、彼は妹からの手紙を全部保管しているそうだ。
(本当に仲のいい兄妹だ)
板垣はレーダスクリーンを見て、心中で部下に言った。
(必ず戻ってこいよ。笠谷)
「ホワイトフォックス1より、グリーンアイ1、目標をレーダーで捕捉した」
笠谷はレーダーを表示しているディスプレイを見ながら、早期警戒機(AEW)に通信した。
「了解。司令部より、指令が入った。敵飛行隊を迎撃せよ」
「ホワイトフォックス1。ラジャ、全機に告ぐ、敵航空機の攻撃、破壊措置行動を許可する」
笠谷は指示を出すと、操縦桿を左に倒し、左に旋回する。
「トルネード隊は輸送機を狙え、他は援護だ」
「トルネード1。ラジャ」
篠原弘樹3等空佐が返答する。
「ニーケー1。ラジャ」
笠谷のウィングマンであるニーケー1が答える。
レーダー上で、敵機との距離がどんどん縮まっていく。
敵飛行隊も恐らく、こちらをレーダーで捕捉しているだろう。
制空戦闘であるから、当然ながら全機の兵装は空対空ミサイル(AAM)が主である。
ラペルリ連合王国まで、もうすぐ。
「全機!兵器使用自由!」
笠谷はそう叫ぶ。
「兵装選択」
後部座席に座る北井明里3等空尉がAAM-4を選択した。
笠谷は先導のタイフーンをロックオンした。
「FOX3」
発射ボタンを押し、AAM-4が発射される。
放たれたAAM-4は先導機に直撃し、レーダー上から消えた。
「スプラッシュ(撃墜)」
笠谷が先導機を仕留めると、次々に撃墜報告が入った。
残ったタイフーンは散開し、C-160は編隊を崩し、ラペルリ連合王国に向かっている。
「グリーンアイ1より、ホワイトフォックス1へ、MiG-29が反転してそちらに向かっている。陸自と空自の高射部隊がやってくれた」
AEWからの報告を聞きながら、笠谷はタイフーンの背後をとり、AAM-5を撃ち込んだ。
「ミグの数は?」
「4機だ。3機は島に墜落、1機は海上に墜落した」
「ラジャ」
笠谷はレーダーディスプレイを見てMiG-29の位置とC-160の針路を確認した。
「何がなんでも空挺作戦を強行する気か・・・」
これほどの無茶ができるという事は、敵は豊富に航空機を持っている事になる。
「どうやら、これは予想以上にきつい戦いになるな」
笠谷はそうつぶやきながら、タイフーンの後ろをとった。
「よし」
そうつぶやきながら、彼はバルカン砲を発射する。
20ミリバルカン砲弾の嵐がタイフーンの機体を襲い、ずたずたに破壊される。
「グリーンアイ1より、ホワイトフォックス1、レーダーより、新たな飛行隊を捕らえた。高速で接近している」
「ホワイトフォックス1、ラジャ。各機、聞こえたな、恐らく[フランカー]だ。注意しろ」
笠谷はそう言って、心が躍っている事に気付く。友の仇をとれる。
いや、彼だけではない。
「トルネード1より、ホワイトフォックス1。自分にも[フランカー]を撃たせてください」
篠原だった。
「よし、俺と篠原で高速接近する敵機にあたる。他は輸送機と護衛機だ」
「ラジャ」
各パイロットから了解の返事を聞くと、笠谷と篠原の機は機首を接触の針路に向けた。
高速接近中の機はラペルリ連合王国の南の海上から現れた、これと接触するのはラペルリ連合王国の最南端付近であろう。
「敵2機をレーダーで確認した。これより、攻撃を開始する」
笠谷がそう通信すると、彼の通信機に敵機から割り込まれた。
「パトリオット4。聞こえるか?ナオユキ・カサヤ?」
突然聞き慣れた声に笠谷は目を丸くする。
「久しぶりに友人が声をかけているんだ答えてくれよ」
聞き慣れたドイツ語に笠谷は困惑するしかなかった。
「い、イヴァンか?」
「そうだぜ、ナオユキ。久しぶりだな」
イヴァン・バラックはドイツ訛の日本語で答えた。
「な、なぜ、お前がここに!?」
「なぜって、ネオナチス派に決まっているから、ここにいる」
イヴァンの笑みのこもった声が笠谷の耳に響く。
なんとなく、そうだと思っていた事が、現実になってしまった。
Su-27、2機が視界内に入った。
「2佐。お知り合いですか?」
ようやく状況を飲み込めた北井が尋ねた。
だが、答える暇は与えてくれなかった。もう1人のドイツ空軍のパイロットが通信してきたからだ。
「カサヤ中佐」
「誰だ?」
そのパイロットから、笑い声がした。
「一度直接話したかった。俺はディルク・ゴルテン大佐だ」
「ディルクっ!?」
笠谷はその名を聞いたことがある。ドイツ空軍のエースパイロットで米空軍が認める男だ。
「ゴルテン大佐、貴方のような人がなぜ!?」
「・・・アメリカの犬に成り下がった、負け犬にはわからんだろうよ。俺の国もそうさ、一部の人間を悪人に仕立てあげ、我々は過ちを犯した、これからは心を入れ替えます・・・自分たちが支持していた人々に手のひらを返してヘラヘラしている連中には、ほとほと愛想が尽きたのさ。第2次大戦後の世界を見てみろ、何が変わった?結局は大国同士の欲にまみれた覇権争い。ぬるま湯の平和に浸かって呆けている奴には言っても無駄か?」
「・・・・・・」
笠谷のF/A-18JとディルクのSu-27が一瞬、交錯した。そのままお互いは通過した。
「さて、お話はここまでだ。行くぞ!」
ディルクがそう叫ぶと、Su―27が急旋回し、こちらに向かってくる。
「は、早い!」
笠谷は驚き、スロットルを上げ、操縦桿を倒し、回避行動をとる。しかし、ディルクはよんでいたかのように追跡してきた。
30ミリ機関砲を発射しながら、ロックオンをしようとしている。
コックピット内はロックオンされつつあるという警報アラームが鳴り響く。
そして、近距離でミサイルを発射され、笠谷のF/A-18Jに直撃した。
「!?」
すさまじい衝撃が機内を襲い、液晶ディスプレイが消えた。
「くそ!?液晶モニターが死んだ。操縦桿が反応しない、エンジンをやられたか!?」
「これでわかったろ、カサヤ、貴様の実力はその程度だ!」
ディルクの声が届く。
「くっ、駄目か」
HUDには緊急脱出せよ(ペイルアウト)、と表示されている。
笠谷は緊急脱出装置を作動させた。
強制的にキャノピーを吹き飛ばして射出座席を宙に舞わせる。
2人の座席が射出されたと同時に彼の乗るF/A-18Jは爆発した。
不本意であったが、自分の出した結末の結果をしかと目に焼き付けたのであった。
パラシュートが開傘し、落下速度がいっきに落ちた。
周囲を見る。篠原機の機影を確認できない。確認できたのは、4機のC-160が空挺兵を吐き出しているところだ。
どうやら全機撃墜はできなかったようだ。
[やまと]のCICは騒然となっていた。
「ホワイトフォックス1とトルネード1がレーダーから消えました」
「ホワイトフォックス1の最後の記録にペイルアウトしたと・・・」
CICにいる管制官たちが次々と報告してくる。
「司令官。どうします?」
「・・・・・・」
佐藤が板垣に尋ねるが彼は目を伏せて、黙り込んでいた。
「司令官・・・」
「聞こえている」
板垣はゆっくりと目を開けた。
「佐藤。お前の言いたい事はわかる。だが、第2部長たちが着地したところは敵空挺部隊の勢力圏内だ。生存情報でもないかぎり、救難隊を出す訳にはいかん」
板垣がそう言い終えると同様に、通信士が慌てて報告した。
「し、司令官!笠谷2佐から通信です」
「たしかか!」
そう言って、板垣は通信マイクを持った。
「ホワイトフォックス1か?」
「こちらホワイトフォックス1。[やまと]聞こえるか?」
笠谷の声が聞こえた。
「ホワイトフォックス1、無事か?」
「現在2名、1名が足をひねった・・・ああ、くそ!ナチスが来る。また、連絡する」
そう言った後、通信は途切れた。
「場所はどこだ?」
「救難信号を確認。島の南端です・・・切れました」
隊員が操作するが、信号をキャッチする事はなかった。
「司令官。恐らく第2部長は敵に位置を悟られないように信号を切ったのでしょう」
「・・・・・・」
板垣は無言で、スクリーンを見ていた。
夜中、[やまと]の武器庫の手前で、松野、宮林、イングリットの3人が身をひそめていた。
武器庫の前には1人の警衛海曹が立っていた。
「見張りが1人」
松野が確認すると、2人に告げた。
彼女の服装はデジタル迷彩服ではなく、宮林から借りた迷彩服を着込んでいる。
「じゃあ、グリピン。打ち合わせ通り、お願いね」
「任せて」
イングリットがそう言うと、武器庫に向かった。
「どうしました?」
警衛海曹が怪しむ事なく、彼女に尋ねた。
「それはねぇ・・・こういうことよ」
イングリットはニッコリ笑うと、警衛海曹の腹部をおもいきり、殴った。
「うぐっ!?な・・・んで・・・」
警衛海曹はうめき声を上げながら、床に倒れた。
松野と宮林が現れ、海曹のポケット等をあさり、武器庫の鍵を取り出す。
「あった」
宮林が武器庫の鍵を持ったその時だった。
「やはり、こうなったか」
背後からの声に、3人はドキッ、として、振り返る。
そこには、佐藤と警務官(MP)の高沢直弥3等海尉がいた。
「君たちは、自分が何をしているのかわかっているんだろうね?」
佐藤は顔からは想像できない鋭い口調で告げた。
「これは重大な隊規違反だ。元の世界なら、良くて無期限停職、悪くて懲役刑だよ」
そこまで言うと、佐藤は突然表情をやわらげた。
「建前上はそうだけど、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとやら、だからね・・・」
「首席幕僚!」
高沢が声を上げた。
「まあまあ、いいじゃないか。恋から来るものだから、片目をつむろうじゃないか、3尉」
3人の女性陣は口をぽかんと開けていた。
高沢は声にならない声を上げていた。しばらくそうしていると、彼は胸ポケットから煙草を取り出した。
カチッ。
煙草に火をつけて、煙を肺いっぱいに入れ、吐き出した。
「艦内は禁煙だよ」
佐藤が注意するが、彼は、貴方が言うな、という目で睨んだ。
もう一度、煙を肺いっぱいに吸い込み、吐き出した。
「わかった。俺は、嫌な予感がして、15分後に武器庫の様子を見に来たら、警衛海曹が倒れていて、武器庫が開放されていた事にしよう・・・」
高沢も黙認する事を承知した。
「ありがとうございます」
「ありがとうございますぅ」
「感謝します」
3人の女性陣がお礼の言葉を言った。
「いいよ、いいよ。笠谷2佐に報酬は高くつくからと、言っておいてね」
佐藤がにこやかに言った。
「う、うう・・・う」
その時、警衛海曹が目を覚まそうとしたが・・・
ドスッ!!
高沢が目にも止まらない早さで警衛海曹の顔面を蹴飛ばし、再度気絶させた。
高沢以外の者たちがその光景を見て、全力で引いた。
「セサ。この事は内密に、でないと、殺しますから」
高沢は悪魔のような笑みを浮かべて告げた。
「脅迫だ!職権乱用だ!」
と、佐藤。
「異世界に飛ばされ、その過酷に堪えられず、自殺。あるよな」
「ひっ!?誰にも言いません!」
「それでよろしい。で、貴女たちは?」
高沢が3人の女性を見る。
3人は、必死に首を縦に振る。
第2次ラペルリ攻防戦第4章をお読みいただき、ありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は今月の12日までを予定しています。




