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亡国のレギオン  作者: 高井高雄
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逆襲 第1章 シーレーン確保

みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 海賊問題、これはどこの世界であっても国家にとっては、頭の痛い問題だ。

 こと、群島諸国にとっては、ミレニアム帝国以上の脅威と言ってもいい

 交易を海運に頼っている以上、死活問題になり兼ねないのだ。

 ここ最近、あるルートは、海賊たちの襲撃が頻繁であった。

 そのため、自衛隊と米海軍は、ある作戦を実行にうつした。



「こりゃいいぜ、酒や食い物がたんまりだ。ワッハハハハ!」

 いかにも海賊といった風体の男は高笑いしながら、倒した傭兵を足で蹴とばした。

「薬の原料になる薬草類か、これは金になるもんだぜ」

 部下が運び出してきた船の積み荷を物色する。

「しかし、金目のものがねえってのはどういうこった?天下のクルバル商会の船が光モノを積んでねえとはな・・・」

「前のノインバスとマレーニアの船もそうでしたぜ」

 部下も首を傾げる。

 不思議なことに、このルートを航行する船の積み荷はほとんどが、食料や生活必需品であり、彼らが望む物は全く無かった。

「まったく、金になりそうなのは、薬草と奴隷用の人間くらいだな・・・お頭の機嫌がまた悪くなるぜ」

 すると、捕らえた者の1人の青年が立ち上がって叫んだ。

「待ってください!この物資は、大切な物なのです、これから行く島では8000人もの人々が・・・」

 海賊の男は青年の顔面を殴った。

 青年は顔を覆いながら甲板に倒れ、苦痛の声を上げる。

「うるせぇーなぁ、俺たち海賊をナメてんのか?はいそうですかって手ぶらで帰れるか!積み荷は全部いただく。ついでにお前らも奴隷として生かしておいてやる。命があるだけ、ありがたいと思いな、ハッハハハハ!」

 再び、海賊の男は声を高くして笑うのであった。

 圧倒的な暴力と無法を前にし、船員たちは押し黙るしかなかった。だが、そんな中、ハッキリとした声で海賊たちを罵倒する声がした。

「ゴミ共が!!」

 その場が、しん、と静まり返った。

 ギロリと、男は船員たちを睨み付けた。

「今、なんと言った!?」

「ゴミ共と、言ったんだ。聞こえなかったのか」

 船員たちの中から1人の少女が前に出た。

 長い髪をポニーテールにし、軽装の鎧を着込んだ彼女は堂々とした態度で海賊を見上げた。

 見たところどこかの見習いの傭兵のようだが、剣は取り上げられたようで帯剣していない。

「たいした度胸だな、自分の立場ってぇのがわかってないようだが」

「わかってないのは、お前たちの方だ!」

「何ぃ?」

 少女は自信に満ちた顔で、海賊たちは睨みつける。

「お前たちは、手を出してはいけないものに手を出した、死にたくなければとっとと帰れ!」

 少女は腰に手を当て、そう警告した。海賊たちはその言葉に呆気にとられていた。

 この強気の言葉の根拠がわからない、恐怖のあまり気がおかしくなったとしか思えなかった。

 それに、ここはノインバス王国領海とはいえ、近くに島もない。海軍の哨戒も手薄なはずだ。

 だとすれば、この小娘の言葉はただのコケ脅しにすぎない。

 海賊たちは嘲笑した。

 男も声を高らかに大笑いした。

 だが、その時、

 突然、すさまじい爆発音が響いた。

「もう手遅れだ、泣いて謝っても遅い」

 少女の声に、爆発音は続く。

 それも1度だけではない2度、3度と続いたのであった。

「な、なんだぁ!?」

 海賊の男は絶叫しながら振り返り、その海上を見た。

 そこには黒煙が上がっていただけであった。黒煙があがったところには周辺の警戒のため、海賊船がいたはずだ。

 だが、燃える船の残骸が浮いているだけで、船の姿はなかった。

「な、何が・・・」

 海賊の1人が呆然としながら、つぶやくが、その後、聞いた事もない轟音が響いた。

 海賊たちがその方向を見ると、何か、を見つけた。

 それは、灰色で、恐ろしく速い。音よりも速く、音が遅れて響いてくる。

 それが、航空自衛隊のF/A-18Jである事は、海賊たちにはわかるはずもない。



 海賊たちがいる海域から離れた空域に編隊(エレメント)を組んだ4機のSHー60Kが海賊に襲撃された船団に向かっていた。

「目標まで2分!」

 機長の声にドアガンナーはヘリに横付けされているドアガンの安全装置を解除した。

 ドアガンは、陸自同様のM134連装機関銃(ミニガン)だ。

 バルカン半島派遣の任務の中に周辺海域に出没する不審船の対処も含まれており、火力の高いミニガンが導入されたのだ。

 準備を完了させたのはドアガンナーたちだけではない。2番機、3番機に搭乗する特警隊(特別警備隊)の隊員たちもアクセサリーを取り付けたMP5A5に弾倉を装填する。

「1班、準備よし」

「2班、準備よし」

「狙撃支援班、準備よし」

 1番機に搭乗する特警隊(SBU)第1小隊隊長の菅田(かんだ)雅樹(まさき)3等海佐は各班長からの報告を受けた。

「上空警戒中のF/A-18Jから報告。海賊は略奪をやめ、海賊船は退却し、船団から離れ、離脱中とのこと!」

 ()パイの報告が菅田の耳に入った。

「了解。・・・各隊員、海賊たちは逃走を始めた。人質をとっている可能性もある。発砲は慎重にな。第1小隊、状況開始」

 状況開始とは、自衛隊の演習等で行われる作戦や、付与される想定を表す用語である。近年の自衛隊は実戦の機会が多々あるため、規定されているが、新しい用語より、今まで使用してきた「状況開始」がいいということで、実戦時でも使用される。

「目標視認!海賊船3隻!」

 機長からの報告に菅田は機内に持ち込んだ指揮機材のディスプレイを見る。

 ディスプレイ上には、海賊旗を掲げる3隻の海賊船と甲板上で慌てふためく海賊たちの姿が映し出されている。

 4機のヘリは3隻の海賊船の上空を旋回しながらミニガンの銃口を向けていた。

「射撃開始!」

 4機の編隊長を務める1番機の機長が命じる。

 ミニガンが回転し、火を噴き出し、機銃弾を海賊船に叩き込む。

 マストがへし折れ、下敷きになる者や、機銃弾の直撃を受け、次々と絶命する海賊たち。

 ミニガンの直撃を受けた海賊たちは何の痛みも感じなかっただろう。

 ミニガンが火を噴き、曳光弾が海賊船に吸い込まれていく。

「降下用意!」

 特警隊(SBU)の第1小隊1班長の声に、ヘリは海賊船の船首部分にホバリングし、ロープが降ろされ、次々と隊員たちがファストロープ降下を開始する。

 機銃掃射から生き残った海賊たちは斬りかかってくるが、展開した隊員たちの銃火で制圧される。

 弓を持った海賊たちも4番機に搭乗する狙撃手によって絶命していく。

「武器を捨てて投降しろ!」

 上空から警告が行われる。

「近寄るな!こいつの命がどうなってもしらんぞ!」

 悪党がよくやるお決まりのパターンだ。

 しかし、それが通用しない場合もあるという事を彼らは知らなかった。

 海賊の1人が人質を盾にして、自分たちの安全をはかろうとしていたが・・・

 特警隊(SBU)は銃声で返事をした。

 次の瞬間、人質にあたる事もなく海賊たちは絶命した。

 対テロ部隊の主力銃であるMP5は、極めて命中精度が高いと言われている。

 ましてや世界1の射撃の腕がある自衛官にドットサイトを取り付けたMP5A5が外れる訳がない。

「もう1度言う。武器を捨てて投降しろ!」

 大音量で再度、警告される。

 人質を前に出しても、殺される光景を見て、海賊たちは戦意を喪失させていた。それだけではなく、全身黒一色の彼らに恐怖を感じた。

「最後の警告だ!投降しろ!」

 特警隊(SBU)隊員の1人が警告しながら海賊たちの足元に向け、警告発砲した。

「あわわわわ・・・!」

「もう無理だ!」

「命だけは!!」

 海賊たちは次々と武器を捨て始める。

 勝負はついた。

 菅田は上空からその様子を確認し、旗艦[やまと]に連絡した。

 海賊船6隻のうち、3隻が爆沈、2隻が拿捕、1隻が逃走。

 拿捕された海賊たちはこの後、ノインバス王国の護送船に移され、正当な裁判にかけられ、処罰される事になっている。

 と言っても、死刑か犯罪奴隷かのどちらかだが、菅田は同情しなかった。

 海賊行為は卑劣な犯罪行為以外の何物でもない。

 それに、彼らの奪った物資は自衛隊と米軍の保護下に入っている、フリーダム諸島に住む人々の、生活を支える大切な物だ。当然の報いだと思う。

 さらに、自分たちにとっての燃料輸送の最重要ルートで、こんな無法を許す気などさらさら無い。

 自衛隊員たちの世界でも、海賊たちの処罰はどこの国でも死罪である。

 日本の法律でも、海賊行為をした者は死刑か無期懲役である。



 逃走に成功した1隻の海賊船は追撃がない事に胸を撫でおろした。

「ふーう。どうやら振り切ったようだぜ」

 顎髭を生やした屈強な体格をした海賊はこの船の船長ディーオは大きく息を吐いて、つぶやいた。

「パパ、どうして奴らは僕たちの船を襲わなかったのだろう?」

 ホッとしたディーオに息子のマオが不思議そうな顔をしながら尋ねた。

 父親にはまったく似ていない黒髪碧眼の今年17歳になる少年は、一見すると少女のような顔立ちだ。

「そりゃ、俺たちの船まで襲撃する余力がなかったんだろうよぉ」

 息子の心配にディーオは否定した。

「いいか、あの白い物はたまたま俺たちを見つけたんだぁ、海にいりゃこういう事もある。さあ、帰ろうぜ」

 ディーオは息子の肩を叩いて、船に指揮に戻った。

 だが、マオだけは心臓を鷲掴みされるような感覚に支配されていた。

 マオは海上と空を見渡すが、それらしい影は見えない。

(パパは偶然僕たちを見つけたと言っていたけど絶対に違う)

 マオは思った。

 仲間たちを襲った、あれは、あきらかに位置を特定し、襲撃してきた。

 最近、本拠地の酒場で仲間たちが噂している話をマオは思い出した。

「・・・レギオン・クーパー(異世界の軍勢)・・・」

 マオはそうつぶやいた。

 自分たちが遭遇した、あれは、間違いなくそれだった。

(何も起こらなければいいけど・・・)

 マオは祈るように心中で言った。

 彼の予感は的中していた。そう、つけられていたのだ。海上でもなく空でもなく、海中から。



 海賊船からつかず離れずの距離で、海中を鋼鉄で覆われた巨大な鯨が進んでいた。

 それはアメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦[ノースダコタ]だった。

 海賊船を取り逃がした訳ではない。わざと逃がしたのだ。

 目的は海賊たちの拠点を見つけるため。

 現在、深度60で速力を追跡中の海賊船に合わせて後をつけていた。

「ソナー、敵船の状況は?」

[ノースダコタ]の艦長であるユウリ・ブラウン中佐(コマンダー)は静かにソナー士官に問うた。

「針路速度変わらず航行しています」

 ソナー士官が報告する。

「気づかれている様子は?」

「ありません」

 ソナーの報告にユウリはうなずいた。

艦長(キャプテン)。本当にうまくいきますかね?」

 副長のサム・テイラー・トンプソン少佐(ルテナント・コマンダー)は腕を組みながら尋ねた。

「この世界には潜水艦など存在しない。奴らもまさか水中からつけられているとは思わないさ」

 ユウリはそう言うと、海図台のもとへ向かい海図を見た。

 海図台に置かれている海図はこの世界で入手したものだ。

 信頼性には劣るが、ないよりはましだ。

 ユウリは海賊船の進路からどこに向かっているかを推測した。

 海賊船の進路上には、いくつかの無名の諸島があった。

「これだけ数がありますと、推測だけで特定するのは無理ですな・・・」

 先任の航海士官が言った。

「そうだな。しかし、だからこそ隠れ家としてはもってこいだ」

 そう言うとユウリはデジタル迷彩服と同じ柄のハットを被り直すと、水兵が持ってきたコーヒーカップを受け取り、貴重になりつつあるコーヒーをすすった。



 数日が経ち。

「発見したのか」

 仮眠をとっていた第1統合任務艦隊司令官の板垣(いたがき)(げん)()海将は空母[やまと]のCICに顔を出した。

「はい。原潜[ノースダコタ]から海賊島を発見したそうです。確認のため、海兵隊の武装偵察隊を夜間に隠密上陸させ、隠密偵察したところ間違いないとのことです」

 艦隊幕僚長の島村(しまむら)三郎(さぶろう)1等海佐が報告する。

「どの島だ?」

「ここです」

 板垣の問いに艦隊情報幕僚が海図を広げて、島を指す。

「ここか」

 板垣は海図を見ながら、つぶやいた。

「それで、海賊の数は?」

 一見すると、大学教授と間違われそうな、陸上自衛隊第1任務団団長の神谷(かみや)(あつし)陸将は、海図を覗き込みながら、聞いた。

「海賊島には4隻の海賊船が確認されていますから、島の守備隊を合わせれば2000人ってところでしょう。さらに、その家族を含めれば3000になります」

「3000!?」

 神谷はその数に面食らった。

「それだけではなく。海賊島には人身売買用に拉致された者もいますから、実際の数は数倍以上です」

 この説明には板垣も頭を押さえる。

 拉致被害者だけでなく、海賊の家族もいる以上は艦砲射撃もしくは空爆するわけにはいかない。

「やはりここは特殊部隊による強襲制圧しかありません」

 そう具申したのは艦隊首席幕僚の佐藤(さとう)(しゅう)(いち)2等海佐だった。

(確かにそれしかないだろう)

 板垣もそう思った。

 もともと予想された事態である。

 キスカ島難民の新たな住み所であり、自衛隊、米軍の母港でもある無名諸島をあらためフリーダム諸島とノインバス王国等の国とのシーレーン(海上輸送路)の確保は最優先だ。

 板垣たち海上自衛隊や米海軍たちはその重要性を理解していた。日本は島国であり、鉄、原油等の生産資源、食糧も諸外国からの輸入に頼っている。

 それらの輸送はほとんど海輸である。

 もし、それらが輸入できない事態になればどうなるか・・・

 一方の米海軍も2度の世界大戦で同盟国に物資の供給を行っていたため、シーレーンの確保にはかなりの力をいれていた。

 そして、もう1つ、米兵はかなりの贅沢家だ。

 戦場にもかかわらずステーキだのホットケーキだの言うのだから。

 米軍のシーレーン確保や補給力の高さは並ではない。

 だからこそ米軍は強いのだ。

(まあ、物事はこちらの都合よくはいかない)

 板垣は目を伏せた。

 1隻の海賊船をわざと逃がし、敵の拠点を見つけるまではうまくいった。しかし、海賊以外の者がいる事を彼は考えていなかった。

 民間人には被害を及ぼさないように、戦闘をしなければならない。

 シーレーン確保のために。

 これは、今後のためにも絶対に避けては通れない。

 板垣は目を開け、佐藤に顔を向けて言った。

「作戦を許可する」

「では、ゴキブリ退治を始めます」

 佐藤の言葉に板垣は苦笑した。

 海賊やテロリスト等を一網打尽にすることをゴキブリ退治に例えられる事がある。これは、1匹1匹ゴキブリを駆除していたらきりがない。しかし、全部を一ヵ所に集めて駆除すれば・・・

 佐藤も本心で言っている訳ではないから、頭を掻く。

 正直、暴力を圧倒的な暴力で封じるというのは抵抗を感じるのだ。


 逆襲第1章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回もよろしくお願いします。

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