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亡国のレギオン  作者: 高井高雄
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救出 終章2 第2統合任務隊

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです

 海は穏やかであった。

 その海上に10隻を超える艦船が白い航跡を引きながら航行していた。

 佐世保基地を出港した第2統合任務隊は目的地である東南アジアに向け航行中だった。

 艦隊旗艦である航空護衛艦[ながと]のウィングで隊司令の水島(みずしま)(かなめ)海将補は黒色の幹部用制服姿で立っていた。

(こんなに静かな海だと言うのに、半世紀以上前には戦艦[大和(やまと)]が激闘を繰り広げたとはな・・・ここで眠っている英霊たちが、今の日本の有り様を見たらなんと言うか・・・)

 甲板には自分と同じく黒色の制服に着替えた幹部、曹士たちが整列している。

[大和]沈没海域を通過する時は海上自衛隊の艦艇は艦長以下士官たちが整列し、花束を1つ掲げるのが通例になっている。

 伝統の行事が終わり、幹部、曹士たちが艦内に戻っているところを眺めた水島は振り返り、後方の艦隊に視線を向けた。

 第2統合任務隊はイージス艦[はつせ]を先導に旗艦[ながと]、輸送艦[おおすみ]、[しもきた]、補給艦[おうみ]、汎用護衛艦[きくづき]の計6隻だ。そして米海軍第7艦隊第7遠征打撃群の6隻の護衛艦と揚陸艦。しんがりに海上保安庁の巡視船[しきしま]、[やしま]という大艦隊だ。

 なぜ、こうなったかと言うと、どの艦隊も目的地が同じだからだ。

 第1統合任務艦隊が謎の消滅をして以来、日米は合同で大規模な捜索を行った。が、結局手がかり1つ見つける事ができなかった。海上自衛隊の打撃はかなりものだった。司令官、幕僚、司令、艦長は優秀な者たちを選抜したのだから当然だ。それが1度に失われたのだ、打撃が軽い訳がない。

 それは陸上自衛隊、航空自衛隊も同様である。

 しかし、世界の情勢はそんな事はお構いなしだ。東南アジアで大規模な紛争が起こり、現地軍、国連軍では対処できなくなった。ただちに米国は軍の派兵を決定した。国連は日本にも自衛隊の出動を要請する。

 日本政府は世界へのアピールのため、強引に派遣を決定した。

「いつまで不機嫌な顔をしているんです、司令?」

 傍らからかけられた声に、水島は首を左右に振って、声をかけた主に振り返った。

「防衛省は呆れる。不機嫌も続くさ」

 水島の言葉に彼女の右腕である首席幕僚の三枝(さえぐさ)理子(りこ)・タチアナ・シュタインベルク1等海佐はため息をついた。

 日本人とドイツ人の間で生まれた彼女は肌と髪の色は日本人だが、目の色は緑色だ。国籍は日本なのだが、母方の祖父の強い要望とやらで、やたらに長いフルネームを持っている。

 水島が不機嫌な理由は第2統合任務隊は第1統合任務艦隊と異なり、短い時間で編成された。時期尚早ではないか、という意見は自衛隊だけでなく国会の1部政党からも指摘された。そのため、万一に備えて防衛省は現場に責任を押し付けるとして、練習艦隊首席幕僚の水島1等海佐を1階級昇進させ、指揮官とした。

 最年少の実戦部隊の海将補と言えば聞こえはいい、それが女性となれば、なおさらだ、テレビのニュース番組ではさぞかし騒がれるだろう。

 しかし、現実は甘くない。

 水島は能力的には高く評価されているものの、指揮能力は第1統合任務艦隊の秋笠司令には遠く及ばない、経験が圧倒的に不足している。

 そのため、第2統合任務隊の幕僚の間では、水島の指揮能力を疑問視する声もある。

 水島自身、それを自覚しているから何も言わないが、自分たちを犠牲のスケープゴートに仕立て上げる上のやりように、不快感を隠せないのだ。

 三枝はそんな友人を見て、やれやれ、と肩をすくめた。



 沖縄近海を通り過ぎようとしていた艦隊は速力を上げた。

 海自のデジタル迷彩服に着替えた水島は司令席に腰掛け、海士が持ってきた緑茶の入ったコーヒーカップを受け取った。

「・・・・・・」

 ただでさえ不機嫌な様子の司令にビクビクしていた海士は、彼女の怒りを浮かべた表情に悲鳴を上げたくなった。

「ち・・・ちゃんと、ご要望の通りの銘柄のお茶っ葉を使いました!他の産地のではありません!!」

「?」

 海士が何を慌てているのか理解できなかった水島は、三枝を振り返った。

「司令が、いつまでも怖い顔をしてるから、彼が怯えてますよ」

「悪かったな、これは地だ・・・茶柱が立ってる」

 突然、変な事を言い出した司令に、艦橋にいた全員が振り返った。

「いい事なのでは?」

「いや私の場合、ロクな事にならない」



「前方に積乱雲」

 見張り員が報告する。

「何」

 水島は驚き、双眼鏡を覗いた。

 先ほどまで晴れていた空が雲に覆われていた。

「一雨、来ますね」

 艦長がつぶやく。

 雲は艦隊上空まで広がった。

「気象班。状況を知らせよ」

 三枝の問いに気象長は唖然としながら立ちつくしていた。

 水島、三枝、艦長は気象レーダーのスクリーンを見た。

「な、なんだ、これは?」

 スクリーンの3分1が信じられないスピードで白く染まっていく。とてつもなく大きい。回避すべき方向も見えはしない。

「台風の進路にでも入ったのか?」

「そんな予報は出ていません」

 その時、ウィングの見張り員が悲鳴に近い声で叫んだ。

「竜巻を視認!3,4,5・・・か・・艦隊の周囲を取り囲むように発生しています、数えきれません!!」

 不自然にまで起こる現象に、水島たちは理解できなかった。

 水島は気象レーダースクリーンから離れ、航海長の横に立ち、双眼鏡を覗いた。

「司令、あれは!!?」

 前方500メートル、高度50メートルぐらいのところに銀髪の少女・・・いや、人ではない。それは背中に白い翼があったからだ。

「あれは、いったい?」

 水島はそう口にした瞬間、それから巨大な光が発生した。

 その光は艦隊の方へ向かってくる。その光は・・・

「光る・・・道」

 水島の脳裏に過ぎったのはその単語だった。



 青白く輝く魔方陣の中で、彼女はそれを感じた。

「滅びが始まる・・・そうまでして、この世界に固執するか・・・」

 彼女は、予言のような言葉を紡いだ。


 救出終章2をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 救出篇はこれで終わります。次回は逆襲篇になりますのでお楽しみください。その前に番外編と第2統合任務隊等の説明と登場人物紹介です、ご了承ください。

 次回もよろしくお願いします。

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