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亡国のレギオン  作者: 高井高雄
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救出 第9章 死守

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 笠谷は久々に飛行服を着て、飛行甲板に立っていた。

 彼はF/A-18Jに乗り込む前に装備を確認した。

 パイロット用救命胴衣、各種ポーチには救急キット、救難信号用通信機とその予備電池、止血器、誘導信号発信器、発煙筒、サバイバル・ナイフ、護身用拳銃シグ・ザウエルP228等である。

 海外派兵が行えるようになった近年の航空自衛隊では空母航空団、海外派遣航空隊のパイロットの護身のため、P228が導入された。

 これは敵地で撃墜されて、パイロットが敵地の真っ只中に降りる事があるからだ。

(この装備が役立つのは、生きていたら、の話だがな・・・)

 笠谷は苦笑しながら、装備を点検した。

 装備の点検を終えると、笠谷はF/A-18Jのコックピットに飛び込んだ。後部座席には北井が乗り込む。2人は整備員の手助けを受けて、手早くベルトで身体を固定する。

「北井。頼むぞ」

「はい」

 笠谷と北井はF/A-18Jの機体のチェックをする。計器類、エンジン、燃料、兵装、方向舵を確認する。

「オールオーケー」

 北井から異常なしの報告が入る。

 制空戦闘が主目的であるため、装備はAAM-5(04式空対空誘導弾)とAAM-4B(99式空対空誘導弾改)が搭載されている。

 笠谷はエンジンを始動させた。

 同時に操縦桿や方向舵のペダルを動かし、機体の最終チェックを行う。

 計器類のスイッチを、すべてオンにする。

 通信、コンピューターの再度チェックする。

「ホワイトフォックス1より、[やまと]コントロールへ準備完了」

 ホワイトフォックス1は笠谷のコール・サインだ。

 整備員が梯子を外し、手信号で丸を作る。

 整備員たちが挙手の敬礼をする。

 笠谷が答礼すると、整備員、誘導員、爆装員、甲板作業員たちには合わない服装の少女を思わせる女性自衛官がいた。

 デジタル迷彩服に灰色の救命胴衣と灰色の鉄帽はあきらかにその場では浮いている。

「松野」

 笠谷はその女性自衛官の名を口にした。

 松野は心配した表情で笠谷を見ていた。

 笠谷は松野に挙手の敬礼をする。

 松野の口が動いた。何を言ったのか聞こえる訳がないが、何を言ったのかはわかる。「死なないでください」である。

「コントロールから、ホワイトフォックス1へ、第2カタパルトに移動し、待機せよ」

[やまと]の副長兼飛行長である城嶋(じょうしま)七海(ななみ)2等海佐の声がヘルメットに装備されている通信機から聞こえる。

「ホワイトフォックス1、ラジャ。第2カタパルトに移動し、待機する」

 誘導員に従い、F/A-18Jを第2カタパルトに進めた。

「ホワイトフォックス1より、コントロールへ、第2カタパルトについた。待機する」

「コントロールより、ホワイトフォックス1へ、発艦を許可する」

 笠谷は[やまと]のステルス構造の管制塔の角窓から覗いている城嶋と岩澤に挙手の敬礼をした。

 岩澤と城嶋が答礼したのが見えた。

 笠谷は進路上に人影と障害物がない事を確認した。

「オールクリア」

 誘導員が甲板の端に屈み込み、ゴー・サインを出した。

「発艦!」

 笠谷はスロットルを全開にし、エンジン出力を最大にした。

 F/A-18Jがものすごい勢いでカタパルトから射出され、あっという間に飛び上がった。

 眼下に海面が広がる。

 操縦桿を引き、機首を上げて高度を高くとる。

 笠谷が[やまと]に顔を向けると、すでに2機目が発艦した。

 笠谷は操縦桿を右に倒し、右に旋回する。

「ニーケー1より、ホワイトフォックス1へ、左後方につきます」

「ホワイトフォックス1。ラジャ」

[やまと]から3機目、4機目が次々と発艦していく。

 6機の編隊(エレメント)を組んで高度7000をとり、目標空域に急行した。



[あさひ]の艦橋では周辺警戒を厳にしていた。

 レーダー全盛の現代戦とは言え、レーダーにも弱点はある。小さすぎる低速浮遊物や反射面の小さいものについては、ただの自然現象として処理し、レーダースクリーンには表示されない。

 結局は人間の目である。どんなハイテク機器でも人間の目に勝るものはない。

 特にこの世界の船は小船が多く、さらに木造船はレーダーの反射率が低く、探知がしにくいのだ。

「見張り員、本艦に近づく船影、飛行物体は?」

「確認できません」

[あさひ]艦長の稲垣(いながき)海夫(うみお)1等海佐は、艦橋に備えられている艦長席に座り、双眼鏡を手にしていた。

「CICより、艦橋へ、対地支援射撃準備完了」

 砲雷長の来島(くるしま)(あまね)3等海佐からの報告に稲垣は艦長席から立ちあがった。

「艦砲射撃はじめ!」

 稲垣の指示の後[あさひ]艦首に搭載されている5インチ砲が旋回し、吼える。

 撃ち出された砲弾は対地攻撃用誘導砲弾である。



 移動砲と言えども、人1人の力ではどうしょうもない。馬車用の馬を2頭体制でようやく運ぶことができる。

 大砲部隊の指揮官は陣地を構築すると、部下たちに砲撃の準備を指示した。

「ええい,もたもたするなよ!蛮族どもにたっぷり食らわせてやるんだからな!」

 指揮官は不敵な笑みを浮かべながら叫んだ。

「全砲!砲撃準備完了!」

 部下の報告に、指揮官は手を上げる。

「撃ち方用意、う・・・」

 指揮官がそう言おうとした時、鋭い風切り音と轟音が響いた。

 次の瞬間、まばゆい炎が大砲陣地を覆い、周囲に轟音と衝撃波が襲った。

 大砲陣地にいた兵たちのほとんどは絶命した。



「敵砲兵陣地沈黙!」

[ふそう]のCICの要員が報告する。

 艦砲射撃用に開発された対地攻撃用誘導砲弾は補助ロケットと安定翼により、天候を問わず、遠距離の目標を正確無比で命中させることができる。

「これで敵も、我々をただの蛮族だと認識しないだろう」

「これで敵が攻勢を中止してくれれば、これ以上の戦闘を回避できます」

 秋笠の言葉に佐藤が答える。

「通信士。難民の収容作業はどのくらい完了した?」

 艦長の高上が問う。

「60パーセントほど完了したところです」

 通信士の報告に秋笠、高上、佐藤の3人が腕時計を見る。

「0200までかかるか・・・」

 秋笠がつぶやく。

 LCACに1度に乗せられるのは最大でも240名が限界である。8000人を収容するには11回ぐらい往復すれば完了する計算だ。しかし、ホーバークラフトの事をまったく知らない者たちを乗り降ろしさせるのだから、多少の時間はかかる。

「1個普通科中隊と即席の陸戦部隊で阻止できるのか・・・」

 佐藤は誰にも聞こえない声で弱音を吐いた。



 広い草原に鋭い銃声が響く。

「パジェロ配置完了!」

 12.7ミリ重機関銃を装備したパジェロが停車する。

「こちら第2小隊!敵の攻勢が強い!1個小隊程の応援を回してくれ!」

 各小隊、海自隊員から次々と通信が入る。

「迫撃砲小隊。こちらに火力支援を!集中砲火しろ!」

 中隊長の声が無線から響く。

「06式小銃擲弾用意!1番先導の槍兵集団に撃ち込め!」

 久松は指示を出しながら、手にする89式5.56ミリ小銃の弾倉を交換する。

 小銃手たちが銃口に06式小銃擲弾を装着し、先導兵集団に撃ち込む。

 久松は暗視装置を覗き、こちらに突撃してくる兵の胸元に合わせると引き金を絞る。

 敵との距離は100メートル未満になった。

 次々と敵兵がバタバタと血を流しながら倒れていく。

 連発射撃にしているからあっという間に弾倉が空になる。

「覚悟ぉぉ!」

 奇跡的に銃弾の雨をすり抜けた2人の兵が弾切れになった久松の至近まで近づいた。

「くっ・・・」

 久松はレッグホルスターから9ミリ拳銃を抜こうとしたが、2人の兵は彼の背後から響いた連発音と共に胸から血を流し、倒れていく。

「え?」

 久松は一瞬驚いたが、後ろに振り返るとFA(ファ)MAS(マス)を構えた高井の姿があった。

「世話が焼ける」

 そうぼやきながら、FA-MASの弾倉を交換する。これも狙撃小隊独自の対応だ。個人装備も各隊員たちの要望で支給している。

「ありがとう。助かったよ」

 久松は礼を言いながら、89式5.56ミリ小銃の弾倉を交換する。

 陸自隊員が連発射撃をしている間を海自の陸戦部隊が3点制限射撃でカバーする。

 89式5.56小銃(折曲式銃床)はおろか一般隊員は銃の扱いに慣れていない海自隊員は連射で発砲するとすぐに弾を切らし、その割には敵を倒していないため、中隊指揮所が禁止したのだ。

「初弾装填よし!」

 12.7ミリ重機関銃を装備したパジェロの射手が射撃できるようにする。

 銃身を前進してくる重装歩兵に向ける。

「撃てぇぇぇ!」

 小銃等の音とは根本的に違う、重低音が腹に響いた。

 重量的に人間が運用できる範囲では最大クラスの破壊力を持つのがこの12.7ミリ重機関銃だ。騎兵を馬ごとずたずたに引き裂き、重装歩兵の鉄製の盾を破壊し鎧を貫き、その人物を殺害する。

 無残な死体の山が次々に積み上げてゆく。

 だが、その死体を乗り越え、歩兵たちが突撃してくる。

 その時、観測班から絶叫に近い声が無線機から聞こえた。

 そして、とてつもなくありえない報告が入った。

「戦車3輛、接近!」

「なんだと!?」

 久松は絶叫した。

 高井はFA-MASを肩にかけ、M110SASSを構え、狙撃眼鏡を覗いた。

「ドイツ第3帝国軍のⅣ号戦車G型だな・・・」

 戦車を見た高井は冷静に言った。

 久松も双眼鏡を雑嚢から取り出した。

 双眼鏡を覗き、戦車を見た瞬間、戦車の砲口が火を噴いた。

「総員伏せろ!!」

 久松の叫び声と同時に第2小隊が配置についているところが吹っ飛んだ。

 隊員たちの悲鳴と爆音が混ざり合う。

「くそぉー」

 久松はⅣ号戦車G型を睨む。

 その時、上空から聞き慣れたエンジン音が聞こえた。

 久松と高井が見上げると、2機のAH-64D[アパッチ・ロングボア]が飛来した。

「騎兵隊の到着だ」

 AH-64Dのパイロットの声が久松たちの無線に入る。

「戦闘ヘリが救援に来たぞ!」

「最高の援軍だ!!」

 彼らの到着で隊員たちの士気がさらに上がった。

 AH-64DはⅣ号戦車G型に狙いを定めると、70ミリロケット弾を浴びせ、3輛の戦車を一瞬のうちに火だるまにした。

「各小隊に告ぐ」

 中隊長の声が無線機から響いた。

「交戦しながら後退せよ。負傷者には手を貸し、搬送しろ」

 中隊長の指示で久松たちは交戦班と搬送班に別れ、後退を開始した。



「ホワイトフォックス1より、ハリケーン隊、トルネード隊。応答せよ」

 笠谷は目標空域に近づくと状況を把握するため、攻撃隊を呼び出した。

「・・・・・・」

 応答はない。

 それどころか雑音が激しい。

 レーダーを見るとノイズが発生して、レーダーが効かなくなっている。

「ECM(電子対抗手段)か?」

 笠谷はレーダー等を攪乱する方法をつぶやく。

「ホワイトフォックス1より、各機、ECCM(対電子対抗手段)を展開せよ」

「しかし、この世界は?」

 後部座席の北井が言った。

「北井。言いたい事はわかる。しかし、最新のシステムがここまでになるのは人為的なものしか考えられん。ECCMを起動させろ」

 北井はECCMのスイッチを入れて、起動させる。

 すると、笠谷の思った通りレーダー等が回復する。

 回復したレーダーを見ると小さな反応をする光点が8(味方)、そして6つの光点。

 あきらかに交戦中だ。

「全機、ミサイル発射を許可する。味方がいる誤射に注意」

「ニーケー1、ラジャ」

 他の4機からも了解の返事が返ってきた。

「いくぞ、FOX3!」

 笠谷が発射ボタンを押すと、搭載されているAAM-4Bが起動し、飛翔した。

 敵味方識別装置(IFF)があるから味方である攻撃隊を誤射する事はない。

 6機から放たれたAAM-4B群は攻撃隊を襲撃したSu-27に向かっていた。

 しかし、命中したのは2発だけだ。

 残りの4機はAAM-4Bをかわした。

「こいつら、腕はかなりいい」

 笠谷はSu-27のパイロットたちをそう評価した。

 この敵と戦うなら、出し惜しみをせず、全力で戦わなければならない。

「全機、気を引き締めていけよ」

 笠谷がそう言うと、状況は変わった。

 4機のSu-27は反転し、空域から離脱した。恐らく撤退するのだろう。

(この指揮官、できる)

 笠谷は顔も知らない敵指揮官は、相当できる、と判断した。

「ホワイトフォックス1。追撃しますか?」

「ニーケー1、この敵は状況が変わった途端にすぐに離脱した。深追いは危険だ」

「ラジャ」

 各パイロットから了解の返答がきた。



 最後のLCACが[しれとこ]に収容され、神谷は陸海の自衛官たちを迎えた。

 中隊長からの報告に神谷の表情は険しい。

「負傷者を医務室へ!」

 久松はそう叫び、担架で運ばれる自分の部下を励ました。

「船に戻ったぞ!気をしっかり持て!」

 陸自、海自なんて関係なく、負傷した者に手を貸し、医務室へと連れていった。その光景には、亀裂なんて関係ない、と言った感じだ。

 神谷が振り返り、難民たちを見た。

 海自隊員たちがパンやスープを配っていた。

 艦内に収容されている難民は2000人である。[くにさき]は1000人。

 今回の作戦では陸自の車輛、物資、資材、人員はノインバス王国に陸揚げしている。

 だからこそ、2000人という数を収容できたのだ。

 しかし、ここで1つ疑問がある。[しれとこ]、[しゃこたん]、[くにさき]を合わせても艦内に収容できるのは5000人だ。では、残る3000人は?

 その答えは簡単だ。甲板が平らなのを利用して、そこを洋上キャンプにしたのだ。これは[おおすみ]型輸送艦の建造以来、何度もの災害派遣で実績のある人員救助手段である。

 だが、自衛隊の損害は決して無傷ではなかった。



 キスカ島救出隊の6隻は速度を上げ、[やまと]との合流海域に向かっていた。

「レーダーに反応はないか?」

 鋭い声が飛ぶ。

「特に異常はありません」

 レーダー員の報告に佐藤は緊張した表情でレーダースクリーンを見た。

 CICにいる乗員たちが顔を見合わせる。

 ケ“号作戦は終了したのだ。しかし、佐藤はいまだ、悪い予感に襲われている。

「佐藤2佐。何か懸念事項があるのか?」

 秋笠が佐藤の隣に立ち、小声で耳打ちした。

 佐藤はヘッドセットを外し、彼と高上に聞こえるぐらいの声でつぶやいた。

「[やまと]との、通信封鎖の状態で、陽動部隊の状況は判りません。しかし、F/Aー18Jの空爆が行われた形跡が無い以上、なんだかのアクシデントが発生した可能性があります。それに、陸上部隊が遭遇したⅣ号戦車といい・・・何か、今までと勝手が違う・・・とんでもないペテンに引っかかっているような・・・」

「う~ん」

 秋笠は腕を組んだ。

 そう、おかしいのだ。確かにⅣ号戦車の登場に意表を突かれたのは事実だ。

 しかし、戦車の運用は歩兵部隊と連動してこそ効果を発揮する。

 あんな、逐次投入のような使い方では各個撃破のいい的と言っていい。

 海自の自分に陸戦の細かい運用を、分析するのは難しいが、こんな、味方を潰すような、アホな悪手を使う意味が判らない。

(遊ばれているのか、俺たちは・・・?)



「こ、これは!?」

[あさひ]のCICで対水上レーダー員が驚愕した。

「島影の影響でレーダーが届かなかったのか・・・」

 水上レーダー員の1等海曹が小声でつぶやくと、声を上げた。

「対水上レーダー、目標探知!海峡出口を封鎖する陣形で展開中!その数20隻、なおも増加中!」

 対水上レーダー員が報告した後、今度は対空レーダー員が声を上げた。

「大変です。砲雷長」

「何?」

「対空レーダー、目標探知!本艦の後方から接近中、数、対空目標40機、こちらも増加中です!」



[ふそう]のレーダーでも30隻以上の大艦隊と60騎以上の竜騎士を捉えていた。

 佐藤、秋笠、高上は顔を見合わせた。

「まるでこちらの動きを読んでいた様なタイミングだな。来島が得意とする戦術を見ているようだ」

 秋笠はそうぼやくと、デジタル作業帽を被り直した。

「対空戦闘及び対水上戦闘用意!」

 秋笠の言葉に通信士が各艦に通信した。

「対空、対水上戦闘用意」

 高上の指示で、艦内に戦闘配置を知らせる警報ブザー音と艦内放送が流れる。

「通信士。通信封鎖解除!旗艦[やまと]に緊急連絡!」

 佐藤はそう言いながら、対空レーダーのスクリーンを見る。

 夜間だと言うのに、これほど正確に飛行できるのは相当訓練されている証拠だ。

(始めから仕組まれていた?)

 佐藤たちの背中に冷たい汗が流れる。

 敵の数があまりにも多い。60騎以上の竜と30隻以上の軍艦を個艦戦闘でしのげるかどうか・・・

「司令」

 佐藤は1つ提案した。

「新・防空システムを使いましょう」

 佐藤の具申に秋笠と高上は彼の顔に視線を向けた。

 秋笠は少し悩んだ様子だったが、うなずき、通信機を持ち、救出隊各艦に繋いだ。

「秋笠司令だ。よく聞いてくれ、我々はこれより対空戦闘に入る。が、その前に、新・防空システムを発動する。各艦の戦闘指揮権を[あさひ]に譲れ」

「なっ!?」

「あの欠陥システムを!?」

「戦闘指揮を[あさひ]にだと!?」

 輸送艦の艦長たちから驚いた声が響く。

 秋笠が説明しようとしたが、佐藤が遮り、説明した。

「私が説明します。率直に申し上げて、個艦防空では60騎以上の竜は対処できません。しかし、新・防空システムを使えば、この難局を乗り越えられます」

 佐藤の説明に輸送艦の艦長たちは悩むように唸った。

「首席幕僚。そのシステムについては知っている」

 第2輸送隊司令の杉田(すぎた)久賀(きょうが)1等海佐が言った。

「しかし、そのシステムはまだ試験段階だろう。実験もミサイル護衛艦、汎用護衛艦でしか試していないはずだが、大丈夫なのか?」

「はい。大丈夫です。確かにまだ未完成なところはありますが、今使わずとして、いつ使うんですか、それに、それを指揮、管制するのはあの『リムパックの魔女』ですよ」

 佐藤の即答に杉田は微かに笑った。確かに彼女なら出来るだろう。

「わかった。私の命で、各輸送艦の戦闘指揮権を[あさひ]に譲ろう」

 第2輸送隊司令の言葉に各輸送艦艦長たちはやむを得ず、指揮権を託した。

「司令」

 佐藤が秋笠に顔を向けると、彼はうなずいた。

「通信士。[あさひ]に新・防空システム起動させろ、と言え」

「はっ!」


 救出第9章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回もよろしくお願いします。

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