表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/82

〜勇者パーティーの追走〜



―――69階層



「……ア、アード様だよね?」


「……じゃ、じゃろうのぉ……」



 顔を引き攣らせたのは、カレンとランドルフ。


 目の前には、隣国"ロミグラムティ"を滅ぼした"厄災"、暴風虎フーリンが四肢を切り離された胴体と目を見開いたままの首が転がっている。


 更に驚くべきは、「No.16」の"猛毒"の SSダンジョンのぬしだと言われていた毒熊ポイズンベアも同じ場所に、ドロドロの毒の池を作り死に絶えていたのだ。



「こ、この2匹を同時に……? 単独で……?」


「ぼ、暴風虎など屠られた事にすら気づいていないようじゃぞ……?」



 国家単位の軍隊にも負けずとも劣らない強者。


 個体ごとに勇者パーティーで挑めば、なんとか討伐できるとはいえ、そのあまりに異次元の戦闘力に、カレンとランドルフは顔を見合わせて、苦笑する事しか出来なかった。



「……そんな事はどうでもいいのです。旦那様はきっと待っておられます。早く先を急ぐのです」



 アリステラは眠ってしまった事を後悔し続けた。この1週間、片時も離れる事無くそばに居たアードが隣に居ない事に胸に激痛を感じていたのだ。



(旦那様は、ああ見えて少し寂しがり屋な所があるのです……。早く……、早く見つけて差し上げないと……)



 アリステラの頭の中にはアードの少し拗ねたような顔が浮かんでいた。


 すぐそばに居られれば、(とても可愛いらしいです……)と緩みそうになる頬を必死で抑えるのに、こうして離れてしまえば、(早く見つけなくては……)と焦燥に駆られる。



「そうだね。急ごう……。ごめんね? 僕が目を離したばっかりに……」


「……仕方ありません。旦那様を1人にしてしまった私の責任です」


「アードなら1人でも大丈夫じゃ! そんなに、心配せんでも、」


「「"そう"じゃありません(ないよ)!!」」


 アリステラとカレンは同時に声を上げて、ランドルフの言葉を遮った。



 2人とも、アードの身体の心配をしているわけではない。アードが身体的ダメージを負うなどあり得ないと信じていながらも、



(心にダメージがないかが、心配なのです……。きっと今も不安で……。私はもう……、旦那様なしでは生きられません……)


 アリステラはアードの寂しがり屋の部分を理解しているので"心"を心配し、



(『僕』が側にいないからアード様は寂しがってるはず!!)


 カレンはアードを理解しているわけではなく、(さっき"プロポーズ"してくれたのだから、きっとそうに決まってる)と思い込んだだけだ。※頭をポンッてされただけ。



「……そうじゃな。アードも『親友』のワシがおらんで寂しがっておるな……」


「ランドルフ。早く感知魔法を……。"全魔力"を注いで頂けますか? 私の魔力も全て使いますので」


 ダンジョンの下層で魔力切れを起こす事の恐ろしさをアリステラが理解していないはずがない。


 無表情の中にある激情にカレンとランドルフは大きく目を見開いた。


「……ア、アリスの回復がないと……あっ、いや! まずはアード様との合流が優先だよね! 僕が守るから安心してよ!!」


「……フォッフォッ! お主ら、本当に見違えるようじゃのぉ!!」


「……ランドルフ」


「……わ、わかっておるわ! 《魔力感知マナ・サーチ》……」



ズワァア……



 ランドルフは練り上げた魔力を繊細にコントロールして、薄く、広く、アードの"異質な魔力"を見逃すまいと、探索魔法を展開する。


(……もっと深く……"最下層"まで伸びるほどに……)



 ランドルフは魔力を注ぎ込み続ける。



「《魔力回復マナ・ヒール》……」



ポワァア……



 アリステラの魔力も借り受けながら、最深部を目指すランドルフはピクピクッと顔を引き攣らせる。


(……う、う、うそぉおん!! ア、ア、アード、お主……)


 15階層分の探索を終えるが、"最速のルート"だけ、魔物が1匹たりとも引っかからない。


 尋常ではないほどの攻略速度と、全ての魔物を蹂躙しているアードの異次元さをまざまざと見せつけられる。



ズズッ……



 先に感知した"獄炎鳥以上の魔力"と、その者のすぐそばにあるアードの"異質な魔力"を感知する。



「……おった! 21……。きゅ、"90階層"じゃ!! そ、そこまでの道に魔物は1匹もおらん……!!」


「「…………」」


 大きく目を見開く、カレンとアリステラと鼻水を垂らすランドルフ。


「……う、嘘でしょ、ラン爺……」


「こ、こ、こんな嘘、吐かんわい!!」


「……ま、まだ1時間くらいだよ? そ、それって、1匹に1秒もかかってないでしょ?」


「……くっ!! み、見たかったわい! クソッ!! アードの"本気"が見れたかもしれんのに!!」


 ランドルフはガシガシッと頭を抱え、


「ハ、ハハッ……本当にすごいや、アード様」


 カレンはそう呟き、ポーッと頬を染める。


「『化け物』と一緒におるぞ! 魔力量は獄炎鳥以上じゃ!! こうしちゃおれん! それだけは何としてもこの目で見るぞい!」


「僕が1番乗り……あっ。そっか! アリスとラン爺を守らないといけな、」


「本来、このダンジョンに出現する魔物達が復活する前に、急ぎましょう」



 アリステラはなけなしの魔力を使い、慣れない《身体強化》を発動させて1番に駆け出した。


 もしかしたら、アードが、「もう勇者パーティーなんか知らない」と自分から離れていってしまうのではないか? と気が気じゃないのだ。


(すぐに……、すぐに向かいます! 旦那様!!)


 

「ああ!! ズルいよ! アリス!!」


「ま、待ってくれ! ワシ、魔力が足らん! ……クソッ!! 絶対にこの目で見るぞい! アードの勇姿を!! 《魔力庫解放》……《風神装換フウジン》!!」



 ランドルフはアードの戦闘が見たいがために、5年分の"貯蓄"を払い、思いのままに"風"を操作し、カレンとアリステラをフワリと包み上げながら全速力で追走した。





〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

「次、どうなる?」

「更新頑張れ!」


 少しでもそう思ってくれた読者の皆様。

 広告下の評価ポイントを、


【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】


 にして【ブックマーク】もして頂ければ最高にテンション上がります! 「なんだこれ?」と思われた方も、評価「☆☆☆☆☆」のどこでもいいのでポチッとして頂ければ泣いて喜びます。


 たくさんのブクマ、評価ありがとうございます!

 感想、返せていませんが、しっかりと励みになっております! 本当に感謝!!


 次話、クラマsideです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ええやん!おもろいで! 勇者と賢者がポンコツ系強者なのが尚更に良い。
[良い点] 爺さん、、
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ