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第18話

 

 手をぱたぱたさせて火照る顔へと風を送りながら、次元収納により取り出したナイフの持ち手を浦霧さんへと差し出す。


「浦霧さん、戦えそう?」


「問題ないよ」


 浦霧さんはナイフを受け取りながらそう答えた。


 彼女には物理衝撃耐性スキルを獲得してもらったので、マミーとの戦いで危険なのはむしろ僕の方かもしれない。

 ひと段落したら後で僕もスキルを取得しよう。


「えっと、2体ずつ来るから1人で1体を相手にすればいいかな」


「こういうのはどうだろうか。2体の魔物に対して横に移動して前後で重なるようなポジションを取り、近い方のマミーを2人で討伐する」


「要するに前のマミーを壁にして後ろのマミーからの攻撃を防ぐんだね」


「ああ」


 マミーはあまり素早いモンスターではないし、立ち位置を工夫すれば2対1と変わらない状況を作れるかもしれない。


「やってみよう」


 1番近くのペアのマミーに目を付け、相手に対して円の動きを描くように横へ早足で移動。

 2体のマミーの姿が重なって見えたところで一気に距離を詰めて仕掛ける。


 敏捷性の高い僕がマミーへと近寄り、相手がスーツケースを振るう瞬間にぱっと飛び退いて距離をあける。

 空振りしたモンスターに対して浦霧さんが一歩踏み込み、ナイフによって首を切り付ける。中々の速さだ。


 僕も距離を取る為に跳躍した慣性を殺し、再度前へと踏み込みナイフでマミーの首へと攻撃。乾いた布と皮を割くような感覚が手に伝わる。


 マミーは同士討ちを避けようとしているのか、前方のマミーが攻撃されていてもそのすぐ後ろのマミーは武器を振るのを躊躇っているようだ。


 首の座らぬ赤子のようになった前側のマミーの頭部を取り出したスキル結晶で殴り飛ばしてトドメを刺す。

 もしかしたら重い武器は収納しておいて、攻撃する寸前に取り出した方が良いかもしれない。


 1体目のマミーが燐光になるのと同時に、2体目のマミーが怪力をもってスーツケースを振り回した。

 力任せに振られるスーツケースを掻い潜り、マミーの懐に潜り込んでパサパサの体へナイフを突き立てる。


 マミーが怯んだ隙を見逃さず、浦霧さんは素早く接近してマミーの喉を斬りつけた。


「浦霧さん、かなり速いね」


 僕も続けてマミーの頸部を切り裂きながらそう呟いた。

 確か浦霧さんは元から文武両道のハイスペックな子だったと思うけど、今の彼女には人類の動きを逸脱した速さがあるように見える。


「獲得ポイントのほぼ全てをステータスの敏捷(AGI)関連に振ったんだよ。少しばかり魔力(MANA)関連と魔技(MAG)関連にも振ったけどね」


「そういえばポイントでステータスを強化できるんだったね。なんやかんやで僕はまだ試してなかったな」


 首がぐら付き始めたマミーの頭をスキル結晶で殴打しながら、ステータスの存在を思い出す。

 モンスターが燐光となって消え去ったのを見届けてから浦霧さんへと向き直る。


 [つよい][この子ら迷いなく戦ってるけど怖くないんか?][それな。俺とか人型のモンスターを殺すのは忌避感パナくて無理だったわ][ステータスって割り振れるんだ]


 僕は普段からバトル漫画のことしか考えていなかったバトル脳なので気にしていなかったが、人型のモンスターと戦うのは意外とハードルが高いのかもしれない。


 [Dorothy:わたしもMANAとMAGいくらか振ったけど魔法使えなーい 魔法どうやって使うのー?]


「魔法はまず魔力を感じるところからだね。魔力を感じられるようになったら魔力を操る練習するみたい。そういえば僕は魔術関連のスキル持っているけど、持ってなくても魔法とかって使えるのかな?」


 僕のコメントに対する呟きに対して、浦霧さんが反応する。


「スキル持ちに比べると威力や燃費が著しく悪いかもしれないが、魔力の塊を飛ばして相手にぶつけたりはできるよ」


「へー」


 感心する僕に対して、ロキがこそっと補足を付け加える。


『普通の人間なら時間を掛けて魔力を感じるところからだが、ウラギリは恐らく神眼持ちだから魔力が視える。普通の人間より早く魔術が使えるだろうな』


 ロキが前に普通の人は魔力を感じるだけでもかなり時間がかかると言っていたが、魔力を見たり感じたりできる固有スキルなら魔術の習得期間を短縮できるのか。


 ちなみにこの身体になったおかげか僕にはぼんやりとだが魔力を見たり感じたりすることが可能だ。

 見たり感じたりと言っても視覚や触覚で感じている訳ではなく、なんかこう、五感じゃなくて第六感的なので知覚しているような気がする。



 [Dorothy:そもそも魔力ってなにー?]


 魔力っていうのは、……そういえば何だろう。

 僕にもよく分からないので浦霧さんに丸投げしてみる。


「浦霧さん、そもそも魔力って何かな?」


魔力(マナ)とは宇宙に遍く存在する不確定因子(神秘)の決定権だよ。不確定因子に真名(マナ)を与えることによってその働きの方向性を決定できる」


 浦霧さんは明朗な声ですらすらと淀みなく言葉を並べていく。女の子にしては落ち着いたやや低めの声がとても心地よい。


「えーっと、要するに何にでもなれる可能性の塊みたいなものかな。持っているマナの数だけその可能性の塊を自由にできる的な」


 [Dorothy:わかったような わからないような あざーす!]


 納得してもらえたのなら良かった。



「ミキくん、そろそろ次のマミーと接敵しそうだよ」


「うん、気を抜かずに行こうね」


 浦霧さんからのアドバイスを受け、気を引き締める。


 [栄光の高橋:凹みちゃん頑張れ!]


「く、凹み!?」


 ああ、「凹凸(くぼと)ミキ」の略で「(くぼ)み」なのか。

 確かに短くするとそう読める。


「僕、あだ名付けられたの初めてかも」


 [mito:あだ名がはじめて?2人は友達じゃないの?]


 僕は浦霧さんの友達になりたいと思っているけれど、浦霧さんはどうなんだろう。


 [コンコン:どんな関係なのー?]


「僕と浦霧さんの関係……?」


 クラスメイト、知り合い……?

 一緒に冒険している仲間ではあるし、僕的には友達だと思いたいけど、浦霧さんとは今日会ったばかりなんだよね。


 ちらっと浦霧さんの方を見ると、浦霧さんはこくりと頷いて口を開いた。





「ミキくんは私のママだ」





 !?



 [!?][え][???][ママ!?][!?][へぁ!?][凹みちゃ……凹みさん経産婦マジ!?][人妻なん!?][ファ────ッwww!?][脳が破壊されるッ]




「う、浦霧さん……?何を言って──」




「そして、私はミキくんのパパだ」





 !?




 [?][?][???][ん?][?????][なんて?][?][どゆこと?][流れ変わったな][子供でもあり、父でもある……?両立すんのか?][脳が破壊された]



「違うからね!?同い年だからね!?」


「まあ私が5月生まれでミキくんが早生まれなので、一回りほど私の方が上かもしれないがね」


 僕は3月生まれなので、学年は同じだけど浦霧さんの方がちょっとお姉さんなのか。


 あれ、浦霧さんに僕の誕生日って教えてたっけ?

 ふと疑問が浮かんだが、もしかしたら固有スキルの方で分かったのかもしれない。

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