50 リアルタイムで見るということ
鷹羽は、漫画やテレビ番組などを見る際、リアルタイムであることに、割とこだわります。
と言っても、テレビ番組を録画して翌日見るのを否定するわけではありませんが。
じゃあ、どこまでがリアルタイムか、というのは難しいところではあるんですよね。
たとえば、新潟県では、「仮面ライダー」の本放送当時は、東京に約3か月遅れで放送されていました。
これは、厳密に言えばリアルタイムではないかもしれませんが、少なくとも“その時代の空気”というものが残っているので、大目に見てもいいんじゃないかなぁ、と思います。
“その時代の空気”には、放送当時の番組への社会的評価であるとか、周囲の状況であるとかの諸々が含まれます。
たとえば、2008年放映の「炎神戦隊ゴーオンジャー」という作品があります。
「ゴーオンジャー」では、最初の3人(レッド、ブルー、イエロー)と、序盤追加の2人(グリーン、ブラック)と中盤追加の2人(ゴールド、シルバー)では、それぞれ変身アイテムが違います。
また、ゴールドとシルバーは、厳密にはゴーオンジャーとは別戦隊の“ゴーオンウイングス”という扱いになっています。
ゴーオンウイングスは、武器もゴーオンジャーの5人とは異なっており、“ロケットダガー”という短剣です。
これが問題で。
ゴーオンウイングスの初登場は、2008年6月1日放送の「名誉バンカイ」ですが、その翌週である6月8日に、秋葉原通り魔事件──交差点にトラックで突っ込み、通行人をはねたりナイフで刺したりした事件──が起きました。
使われたナイフは、“ダガーナイフ”です。
それまで、ダガーなんてRPG好きでもないと知らないようなマイナーなアイテムだったから、さぁ大変! にわかにあちこちでダガーナイフについて取り沙汰されることになりました。
結果、「ロケットダガー」のおもちゃは、商品名を「ロケットブースター」と変え、発売が大幅に遅れることになりました。
これなんか、後で番組だけ見てもわからない話です。
何度か書いている話ですが、1986年放映の「超新星フラッシュマン」「時空戦士スピルバン」「機動戦士ガンダムΖΖ」は、いずれも肉親を追い求める話でした。
「フラッシュマン」は、赤ん坊の頃エイリアンハンターによって宇宙に連れ去られた5人がフラッシュ星人に救われ、戦う力を身につけて、地球で生体改造実験するメスと戦いつつ両親を探す物語。
「スピルバン」は、母星クリン星がワーラー帝国に滅ぼされた際、ダイアナと2人で脱出させられ宇宙を彷徨っていたスピルバンが地球に辿り着き、ワーラーと戦いつつ、時折見え隠れする姉ヘレンの痕跡を探す物語。実はヘレンはヘルバイラに改造され、地球に放置されつつ時々ヘルバイラに強制的に変身させられています。ヘルバイラになるとヘレンの意識は消失し、命じられるままスピルバンを襲うのです。互いに姉弟と知らないまま戦うというのがキモでした。
「ΖΖ」は、事故によりネオジオンに囚われた妹リィナを助け出すために戦う、というのが主人公ジュドーの目的でした。
これに対し、スポンサーであるバンダイからクレームが入り、元々のメインテーマが親探しである「フラッシュマン」以外は肉親捜しをやめることになりました。
結果、「スピルバン」では、ヘレンは父であるドクターバイオの手で人間に戻されて逃がしてもらい、スピルバンと再会し、ヘレンレディとなってワーラーと戦うことになりました。
「ΖΖ」では、リィナは落下してきたモビルスーツの下敷きになって死亡、ジュドーは目的を見失って惰性と成り行きで戦ううちにネオジオンのやり口に対する反発で戦うようになっていきます。リィナは、実は助かっており、最終回でジュドーと再会します。伏線として、終盤、ジュドーが度々「リィナは生きている」と言い出して周囲から痛い子を見るような目で見られるようになります。
これなんか、3つ一緒に見た上でないとわかりにくいネタだと思います。
漫画だと、雑誌連載時に入れた時事ネタがコミックスになる頃には風化している、なんてこともあります。
あと、連載時とコミックスで内容が違うとか描き替えが行われることもありますね。
加筆修正なんかが一番わかりやすいです。締め切りの都合で荒かった絵を描き直すことはよくありますね。
「バスタード」は、週刊連載がキツかったことから、後に月刊誌の方に都落ちすることになったのですが、週刊連載最後の頃は、もう絵を描く時間もなかったのか、「どひ~! 嵐のような惨状だと思いねぇ!」とか、コマの中に手書きの文字が入っているだけの超手抜きな展開までありました。
そういえば、「ドラゴンボール」で、人造人間16~18号が初登場したころ、初対戦で負けて倒れたベジータほかのシーンで、ピッコロの服のところに「×」──ベタ塗りの指示──が入ったまま出版されてたのって、初版のコミックスでは修正されていませんでしたが、今はどうなっているんでしょう?
修正以外でも、話の進展で連載時の予定が変更になると、コミックス収録時に台詞を替えるなんてこともあります。
先ほどの「バスタード」では、連載時にビホルダーというモンスターが登場していますが、版権で問題があったため、コミックス収録時には手足を描き加えて“鈴木土下座エ衛門”と名前も変更しています。
これ、当時は結構話題になったんですけど、考えてみるともう30年以上昔の話ですよねぇ。
また、「聖闘士星矢」で、連載時に、白銀聖闘士と戦った氷河が「どうせ逃げ切れない」と言われて、「必要ならアテナさえ倒す」なんて言っていました。
連載時には、まだ“聖闘士同士の戦いを見世物にした”星矢達に聖域から刺客が送られてくるという展開であり、悪いのは星矢達だったんですよね。
ところが、主人公達が悪者では都合が悪いので、コミックス発売までに、“実は聖域は偽の教皇に支配されており、脱出したアテナ=城戸沙織を始末しようとしていた。星矢達が聖闘士にされたのは沙織を守るためだった”と明かされ、沙織を擁して聖域奪還に向かう展開になってしまいました。そうなると、「アテナを倒す」なんて台詞が残っちゃったらまずいのです。
それで、コミックスでは、氷河の台詞は「戦うさ、心の小宇宙が燃え尽きるまで」と替えられています。
「ジョジョの奇妙な冒険」第3部に登場するスタンドは、当初、タロットカードにちなんで命名されていました。
最初に登場するのがマジシャンズレッドとハーミットパープルという、タロット&色の組み合わせです。
そのせいなのか、当初、主人公:空条承太郎のスタンドはスターシルバーとされていました。
一方で、花京院のスタンドはハイエロファントエメラルドでした。
ハイエロファントグリーンの必殺技がエメラルドスプラッシュなのは、多分そのせいです。
どちらも、飛行機でタワーオブグレーに襲われた辺りで、スタープラチナ、ハイエロファントグリーンに変わっています。
名前が変わった理由はどこにも書いていなかったと思いますが、こういうのも連載で読んでいないとわからない話ですよね。
ん~、ぱっと思いつくのが週刊少年ジャンプの漫画ばかりだなぁ…。
連載時の誤植がコミックスで直される、なんてことも結構ありました。
今はどうか知りませんが、30~40年前は、漫画の台詞は漫画家が鉛筆で手書きしたものを編集者が活字に起こして貼り付けていました。
たまに手書きの文字を消し忘れたまま出版されたのをコミックスで消したりとか。
「聖闘士星矢」で、双子座の黄金聖闘士サガの双子の弟:カノンは、その性格から、サガの手でアテナの牢獄に囚われました。
カノンは下手な黄金聖闘士より強いのですが、脱出もできません。
そして、大ゴマで、「だぜ!」と叫んでいました。
「だせ」の誤植なんですが、ちょっと想像してみてください。
鉄格子の向こうで、閉じ込められた美形が「だぜ!」と叫んでいる絵面を。当時鷹羽がどんなに大笑いしたか、ご想像にお任せします。
もっと豪快なミスもありまして。
やはり週刊少年ジャンプに連載されていた「ウイングマン」という漫画があります。
ヒーローに憧れる中学生:広野健太が、たまたま手に入れた“書いたことが現実になる”ドリムノートの力で、自分の考えたヒーロー:ウイングマンになり、ドリムノートを狙う異次元帝国ポドリムスの王:リメルの手先と戦う物語です。
中盤、ウイングマン側にもウイングガールズという仲間が増えました。
ドリムノートを開発した博士の娘:アオイ、健太の恋人:美紅、健太に片思いしている桃子、興味本位で加わった久美子の4人です。
ザシーバという、予知能力と幻影を操る能力を持った怪人が出てきた時のことです。
ザシーバは、ウイングガールズのチームワークを乱そうと考え、健太の幻影を4つ作って4人をそれぞれ呼び出します。
そして、同時に4人に
「ぼくは前からキミのことが大好きだったんだ」
と告白するのです。
この告白のシーンでは、ページ見開きを4分割して、それぞれに同じ構図と台詞で健太が告白しています。身長差などから、双方の顔の角度が違っているのが芸コマです。
この4人、久美子以外は健太に好意を持っている(美紅はそもそも付き合っている)ので、満更でもないというか、桃子なんか涙ぐんじゃったりしているんですが、彼女の台詞が…
「わたし信じていいんですか…そんなもんで射ぬかれてはたまらん」
なんですよ。
なんですか、「射ぬかれてはたまらん」って!?
実はこれ、誤植だったりするのです。
「そんなもんで射ぬかれてはたまらん」というのは、別のページの別のキャラの台詞であり、何をどう間違えたのか、全然違うコマに貼っちゃったんですね。
この回は、新キャラ・新武器が登場しています。
ちょうど健太の幻影が4人に告白している頃、本物の健太は、新キャラと対峙しているのです。
この新キャラ(最後まで名前がなかった)は、この後、たびたびピンチを救ってくれることになる謎の助っ人なのですが、この時は、“突然現れた怪しい奴”でした。
ウイングマンがクロムレイバーという剣を構えると、「そんなもんで射ぬかれてはたまらん」と言って応戦し、クロムレイバーがパワーアップした新武器:バリアレイバーで右腕を斬り落とされて退散するのです。
クロムレイバーは、先端にしか刃が付いていないため、突き刺すことはできても斬ることができません。そのため、改良して、ビームで刃を作るバリアレイバーになり、そのお披露目イベントだったわけなのですが…。
こんなとこの台詞、告白シーンに間違えて貼るか!?
当然、このコマは、コミックスでは修正されています。
こんな大ボケ、リアルタイムでないと見られませんよねぇ。




