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ルームメイト  作者: けせらせら
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6-6

 涼子が部屋に戻った時、部屋に奈津子の姿は見えなかった。

 すぐに部屋のノートパソコンのスイッチをいれた。パソコンを買った頃にはよくメールやインターネットをやったものだが、最近は家でパソコンを使うようなことも少なくなっていた。

 パソコンが立ち上げるのを待って、すぐにインターネットに接続した。

 年末に起きた玉突き事故。そこに事件の鍵があるような気がしている。あれからまだ半年くらいしか過ぎていない。きっと、調べればすぐに関連する情報が見つかるはずだ。

 新聞社のホームページに接続すると、過去の事件・事故のニュースを探し始める。

『玉突き事故』をキーに検索すると4060件の一覧が表示され、その件数の多さに涼子はためいきをついた。涼子はさらに検索項目に『中央道』『12月31日』と追加した。

 今度は46件。これならば一件ずつ確認していくことが出来る。

 涼子はマウスを動かして、そのうちの一つをクリックした。


『長野県警に入った連絡によると、31日午前14時ごろ、上信越自動車道下り線で、バスやワゴン車など計53台が関係する玉突き事故があり、ワゴン車に乗っていた2人が死亡、他にも1人が重傷のもよう。長野県警は身元の確認を急ぐとともに、事故の経緯などを詳しく調べている。この事故で川越インターと松井田インターの間の下り線が通行止めとなった』


 それは忠志が長野に行った日に起きた玉突き事故であることは間違いなかった。だが、これだけでは忠志が殺された原因を見つけ出すことは出来ない。そもそも忠志はこの事故には関わっていない。忠志が殺されなければいけない理由などどこにもない。

 涼子は次の記事を読んだ。

 別の新聞社の記事だったが、やはり同じ内容のものが書かれているだけだ。インターネット上の記事のせいか、それほど詳細なことまでは書かれていない。

 次……そして、次へと同じような記事を読み続けていく。

 やがて、涼子の目が一つの記事でピタリと止まった。


『12月31日。上信越自動車道下り線で、バスやトラックなど計53台が関係する玉突き事故が発生した。この事故でワゴン車に乗っていた2人が死亡した。死亡したのは宮城県在住の山辺康平さん(29)と長男の山辺晋平ちゃん(1)。二人は家族三人で康平さんの実家に帰省する途中だった』


(山辺康平……晋平……?)

 どこかでその名前を聞いた憶えがあった。

 どこだったろう……。

 思い出そうと記憶を辿る。

 ハッとした。

 以前、奈津子にきたハガキのことを思い出した。

(それじゃ――)

 この記事に載っている二人というのは、奈津子の夫と子供のことだ。以前、部屋に飾られていた写真の二人。あの写真とこの記事が涼子の頭のなかで結びつく。

 愛する夫と子供の死。その悲しみはどこへ向うのだろう。

 忠志が長野に行った日に起こった事故で、奈津子の夫と子供が命を落としている。ただの偶然とは思えなかった。しかし、忠志とあの事故に何か関係があるのだろうか。

 ふと、仙道がこの事故にたどり着いた理由に涼子は気づいた。きっと奈津子に会ったことで、彼女を調べる気になったのだ。そして、この事故のことを知ったに違いない。

(まさか……奈津子さんが?)

 だが、まだ事故と忠志の関係がわからない。

 その時だった。

「涼子さん……」

 背後で聞こえたその声にハッとして振り返った。

 そこにはうつろな表情をした奈津子が立っていた。


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