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コミーデミュタント連邦




 ♪ (なんか悪役が登場したようなやばそうなBGM)てーてれれれれーー




 薄暗い赤外線が排除された蛍光灯に照らされた部屋に、その男はいた。



「おのれ! あのエセ大日本帝国め! 民主主義とかいうネオナチ思想に染まった反逆者どもが!」


 ドン!


 机を叩く大きな音が響く。

 200年以上の(なが)きに渡り生き続け、《亡霊(ぼうれい)》スキルを有したその男は既に人外(モンスター)だ。それであるにも関わらず、警戒心の強い彼は常に狙撃などを警戒してその部屋から出ることはない。

 機械に弱く、異世界人が構築したというインターネットなどを信じないため、国際的な情報を得ることができておらず、せいぜいは部下の情報かテレビの情報を信じるのみ。


 彼はそう、情弱な老害だった。


 そんな彼ではあるが、そのレベルは129もある。

 かつて存在したダンジョンのうち、9つを自らの手を持って破壊することでカンストであるレベル120を越え、限界を突破するに至ったのである。

 あと1レベルが130となったとき、その力は邪神をも越えるかもしれない。

 いや違う――、正確には最近の魔導技術力の進歩により国民の力を少しづつ搾取する――『都市喰らい元気魂』――というマジックアイテムにより所有者のレベルを1つ上げ、人外すらも越えて世界に5人いるとされる魔王のさらなる一柱、第六柱目の魔王となったのである。


 そんな彼が憤慨するのは、最近のエセ大日本帝国の動きである。

 ヤツラは愚民どもに経験点を配り広く配りはじめたのだ。


 だがその数は少なくまったくもって平等ではない。

 エセ大日本帝国らしいネオナチ思想というか、民主主義だというのか、その経験点は一番高い価値を提示したものに配賦されるのだという。


 大統領である自分を除く世の中全てのニンゲンは等しく平等でなければいけないというのに――

 すべてのニンゲンが等しく平等になれば、完全なる世界平和が訪れることだろう。世界の全ての人民が平和で幸福であるということは、コミーデミュタント連邦の悲願なのであった。


 しかし、崇高な理想を掲げるコミーデミュタント連邦は現在、その基本的価値観を理解しない邪悪なネオナチの国々の経済制裁を受けるに至っており、いまだそれが解除されていない。そのため金銭を使用しての経験点の購入は難しくなっている。

 エセ大日本帝国とは世界平和のために以前接収した貨物船「サハギン2」が問題であった。近づいた哨戒機にレーダ照射をしたこともある。その照射命令は今もなお有効だ。

 それによりエセ大日本帝国は怒り狂い、関連諸国――灰殿(ハイデン)魔王国、カクガンジー王国、ゴーストラリア魔王国を含む4か国――と連携しての経済封鎖をしてきたのだ。なんという傲慢な連中なのだろうか。


 圧力に屈しない事を示すため、何度か脅しを入れているがそれもうまくは行っていない。さらには脅しに対抗するために前述4か国で軍事戦略対話を組むという方向で話まで流れてしまっている。そんなことになったら戦争だというのが分からないのだろうか。侵攻しずらくなるではないか。


 まったくもってコミーデミュタント連邦は舐められているのである。


 そこで軍事演習と称して軍隊を集めエセ大日本帝国の近くで砲弾準備をしたのであるが、ヤツラにはあまり効いた様子がない。

 あいつらは本当に侵攻する気だ、などとは露ほども思っておらず、高をくくっているのだ。舐めやがって。異世界人とは本当にのんきなものなのである。


 それはまるで本当になにか起きた場合、勇者なるものが現れて魔王を討伐するのだとも思っているかのようだ。


 実際、今代の魔王として君臨するためには勇者の存在は邪魔である。

 弱いうちに倒す必要があった。


 過去の歴史から見ても分かる通り、勇者のレベルが上がってしまえば魔王にはお手上げなのである。レベルのあがった勇者は邪神すら封印するのだ。


 独裁者の常として、その男は自分が誰よりも、どんな軍隊よりも、どんな専門家よりも賢いと信じていた。

 エセ大日本帝国は異世界人が現地の民を騙して作った国である。だから、我がコミーデミュタント連邦が攻め入れば簡単に倒されるものだと信じていたのだ。勇者さえいなければ。我らが突入すれば現地住民はもろ手を挙げて喜ぶに違いない。

 数的優位は明らかなのだから、その気になれば最短72時間で帝国の首都エドは攻略できるとその男は踏んだ。勇者さえいなければ。


 なによりその男は《炎闇魔法(ミドルセカンド)》の使い手である。最終的には、その最終奥義で片づくはずだ。勇者さえいなければだ。


 魔王となったその男にはしかし、懸念点が一つだけあった。

 それが勇者なのだ。


 勇者は当代の魔王出現の際には必ず対になるように現れ、魔王を討伐するという。

 その討伐の成功率は五分五分だ。

 ゲームとインターネットで構成されるこの世界では、ゲーム性を高めるためか必ず魔王は討伐されるわけではない。だが必ず生き残るわけでもないのである。


 しかし、勇者を倒すことができれば――その未来は開かれることだろう。賢いその男は五分五分に身をゆだねる気はさらさらなかったのだ。

 そして――、その勇者から得られるジュエルは膨大なものとなるハズだ。レベルが低い勇者だとどうかは分からないが……。背に腹は変えられない。

 そう、勇者さえ倒せば、異世界の覇者として異世界中のニンゲンどもを等しく平等にすることができるだろう。すなわちコミーデミュタント連邦が世界の統一国家となる。コミーデミュタント連邦に住まないニンゲンども以外は反逆者として処刑するのだ。虫けらのように。


(しかし、勇者を倒すという点であれば、経験点を配るという手は割と良い手法ではないのかな――)


 いくら勇者が経験点獲得量10倍という能力を持っていようが、EXPアッパーで得られる最大経験点が10であることを考えれば最大100しか得ることができない。

 それはつまり総合レベル換算でいえば4である。

 《勇者》スキルを獲得するのにレベル3は最低必要であろうし、それにレベルを+1したところでたいしたものではない。


 そして多くのヒトに彼らは配っているのだ。

 誰か一人くらい――面白がって《勇者》スキルを取るバカがいるに違いない。


(ならば――、そんなバカな勇者を見つけて暗殺することができれば――)

















 勇者さえいなくなれば、エセ大日本帝国の(ともしび)が消えるのは目前だ――



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