同棲♡★
村人B「いやぁ。キャロルさん大変だったねぇ。でも無事で良かった!」
キャロル「あのクソ転売ヤー、逆恨みで拉致ってくるとかどうなのよ! あったまくるわ!」
村人B「あれ? キャロルさん、なにか性格が変わってない?」
キャロル「誘拐されたと連絡を入れて、入るなりわたくしが犯人として手錠を掛けられたりなんてされたら、そりゃぁ怒るって。人格も変わるに決まっているでしょう!? ねぇ、カオルさん!」
カオル「はは。すまないねぇ。とはいえ踏み込んだ連中も、犯人どもが縛られて足蹴にされているシーンを目撃したら、お前が犯人だと間違えて仕方がないだろう。なにしろ主犯の女は半狂乱状態だったらしいからな」
キャロル「逆恨みで拉致とかする女なんて、もともと狂っていやがるですよ!」
カオル「でもまじめに黒服の男が公安の監視対象でなかったら危ないところだったわよ」
村人B「公安?」
カオル「そう。その黒服、とある市民団体に繋がっていてね。その黒幕は外国政府――コミーデミュタント連邦だ。おそらくはその転売ヤーの女を操ったんだろうと当局から情報が回ってきたよ」
村人B「うはー。なんか国際的犯罪だねぇ。こえー」
カオル「こっちはこっちで本社ビル爆破されてるしねぇ。もう警察の上の方は大揺れだろう。都心の一等地であるエセ霞が関で、あんな爆破事件とか、もう面目丸潰れだよ」
村人B「同時多発でテロすることで警察側の錯乱を狙ったんですかね。そういえば本社ビル爆破は学校帰りのニュースでやってましたよ。拉致の件は今知ったところ」
キャロル「ということで当面、比較的防犯系が大丈夫そうなスノーさんの家で過ごすことになりました」
村人B「うわ同棲じゃん。いいなぁ。ぼくもスノーさんと一緒の家に住みたいよ」
アリス☆「たわけ! 村人Bの家にはワシん家の入り口があるのじゃぞ。空き巣にでも入られたらダンジョンが攻略されてワシが死ぬ未来しか見えぬのじゃ」
村人B「それならうちの家へのゲート(?)を締めてアリスさんもスノーさんの家に行けばよいのでは?」
アリス☆「何をいう、ダンジョンゲートを開くのはジュエル0で出来るのじゃが、閉じるのはジュエル30,000も掛かるのじゃ。――今やどうとでもなりそうじゃな」
村人B「おぃ」
アリス☆「ジュエルが増えるとワシの金銭感覚がおかしくなりそうなのじゃ」
村人B「――ということで、アリスさんちにみんなで行く方向でキャロルさん、そっちのスノーさんとお義母さまに調整よろしく」
キャロル「まだお義母さまじゃないでしょ! とりあえず聞いておくわね。今おねぇさまは親子でご飯の準備しているのよ」
村人B「手伝えよ」
キャロル「止められたのよ! 料理が下手な女で悪い? だいたい、料理ができるおねぇさまの方がおかしいのよ。そんなの、専門家であるシェフに任せておけば良いのに」
カオル「ちなみに今、村人Bの家の周りにはSPがうろうろしているけど気づかない振りをしておいてくれ」
村人B「気づかなかった――」
カオル「てっきり高レベル者だから既に気づいているかと思っていた私って一体……。気づいてないなら説明しなければ良かった」
アリス☆「では後でスノーの住所座標も教えてね! これでようやくスノーの手料理が毎日食べられるぅぅぅ☆」
村人B「そっちはそれで良いとして(?)、結局本社を爆破した連中の方は捕まったのか?」
カオル「捕まってはいないが、犯行声明は出ているな。そこから今は追っているらしい。もう警察から私は退職しているから詳しいことは知らん。そんなことに構うくらいなら、さっさと開発に戻りたいよ」
村人B「犯行声明? またベタな……」
カオル「そいつら『人類はみな平等だから無料で公平に経験点を配れ』とか、『配れないならいっそ平等のために配るな』とか、訳の分からんことをいっているな」
村人B「うわぁ。ゲーム機を手に入れられない子供がいるから全ての子供にゲーム機を与えるなとか、携帯を買うお金がないから世界中のニンゲンは携帯を使うなとか言っているのに等しいな。その主張――」
カオル「最終的には幸せが手に入れられないからみんな不幸になれとか言い出すんだ。そんな連中が正義の組織とか名乗っているのだから笑ってしまうよ」
キャロル「平等に配るって――、それってあれでしょう? 抽選で配ったら、なぜだか上級国民だけが当選しまくるヤツでしょう? まだオークションの方が平等じゃない」
村人B「市民は踊らされていて、絶対裏で誰かが暗躍しているパターンだよなぁ。インフルエンサーとか、指導者とか、書記長とかいうやつら?」
カオル「他にもいろいろいってくるヤツはいるからな。無視だよそんなものは」
村人B「例えば?」
カオル「『貴族の権益を市民に与えるな』とかが多いな。市民の質が向上すれば自分たちの利益にもなる、ということも分からんアホどもが多い」
村人B「愚民政策――。香川のオフラインキャンプみたいなものか」
カオル「あとは『経験点がバラまかれることで、今後の生活が不安』とかだな。酷い話だ」
村人B「なんだそれ?」
キャロル「あー。動画サイトができてテレビ見る人がいなくなったら、テレビ屋は視聴率が下がって不安とかいうやつでしょ?」
村人B「それ、テレビができたら新聞が売れなくなるから不安とか、インターネットで新聞が見られるようになると、紙新聞が売れなくなるから不安とかと一緒だよねー。既得権益のために利便性を投げ捨てるやつ。でも、経験点配賦でそんなことが起きますかね?」
カオル「例えばアイテムボックスが普及するだろう? いつでもどこでも、温かくておいしいお弁当が食べられるとする。当然何食か買いだめするだろう。さて、コンビニエンスストアはどうなる?」
村人B「確かに潰れそうだな――。毎日行く必要がなくなるのだから」
カオル「アイテムボックスにモノが入るなら店舗面積なんて不要だ。四畳半のキオスクのような超巨大スーパーとかできるかもしれないし、単価の安い人材を海外から集めてきて、安価な倉庫代わりにずらずら並べるニンゲン倉庫ビジネスとかが始まるかもしれない。アイテムボックスが使えるようになる経験点1点を餌にすれば、いくらでもヒトは釣られるだろう」
村人B「ニンゲン倉庫って――」
カオル「そう変な話でもないだろ? たまにアイテムボックスから入出庫してやればあとは所定の場所に座って、ウィンドウシステムからダウンロードした《アプリ》でもやっていれば良い。それになにより火災に強い」
2017年に埼玉県三芳町でおきた大規模倉庫火災は、約200億円もかけて整備した物流の一大拠点であったが、12日間の長きにわたり燃え続けた。もしもそれがニンゲン倉庫ならば火災が起きた瞬間に歩いて逃げることだろう。そもそもイニシャルに200億もかからない。
カオル「そして厄介なのはレベル1でもアイテムボックスが使えることで、レベル0者に対して優越感に浸れるということだろう。『こいつは持っていないが俺は持っている』そんな人であるならば、ニンゲン倉庫に喜んでなるかもしれないぞ。そして経験点を配るニンゲンを『既得権益を奪う連中』と恨むと」
キャロル「うわぁ……」
カオル「いまでさえ貧困ビジネスとかあるんだ。貧困に喘ぐ連中に経験点を与えてそんな優越感を与えながらその裏では搾取する。最高じゃないか。そして彼らにいうのさ『貴族の権益を市民に与えるな』って――。愚民どもはみんなそれについてくる」
村人B「やけに絡むねぇ」
カオル「襲撃事件はいいんだが――、いやよくないんだが、その後にさらに嫌なことがあってねぇ……」
村人B「聞きましょう! 面白そうだ」
カオル「まったく面白くはないんだが。本社の建物はほぼ半壊で、立て直しにはまた一カ月程度掛かる見込みなんだが、ことが終わったあとにお詫びとして警備のニンゲン全員に経験点1をプレゼントしようとしたんだよね。思い切り止められたよ」
キャロル「当たり前でしょう?」
村人B「なんでだ?」
カオル「私も『なんでだ?』派だったんだよね……。でもね。『高レベル者には分からないかもしれないが、そんなことしたらみんな会社を辞めて違うことを始めるからやめてください』といわれてハっとしたよ。レベル0とレベル1の差は無茶苦茶な差があるってね」
村人B「アイテムボックスか……」
アリス☆「経験点1。国民全員でおよそ5千万人。さっさと配るしかないじゃろうな」
キャロル「配るための生産拠点が壊れてますけどね」
アリス☆「そうじゃよなぁ。いつまで掛かるか分からんのじゃがなぁ……」
運営A「あれ? 俺の心配は誰もしてくれないの?」




