アリスハードとアリスソフト
その日、スノーは困惑せずにはいられなかった。
通帳を持った白い手は、なぜか震えている。
それもそのはず――
システム:スノーが入室しました。
システム:村人Bが入室しました。
システム:ラララ・ベルフェが入室しました。
システム:アリス・ガーゼットが入室しました。
スノー☆「あのぉ……。ジュエルを換金するのに口座が必要、ということでラララさんにDMで口座を教えた、までは良いのですが、これはないのではないかと――」
アリス☆「ん? どうしたのじゃ?」
スノー☆「いきなり5億円も振り込むことはないかと思いまして。さすがに心臓が止まるかと思いましたよ」
村人B「うは7桁! 換金しすぎ! ドリームジャンボ〇くじかよって感じの額じゃん」
ラララ☆「いや換金はこれからだぞ。それは我が国のなんとか機密費というやつだ」
アリス☆「あ。ラララさま。こんばんわ」
村人B「なんとか機密費! さすがは独裁国家ゴーストラリア魔王国の首相はやることが違うねぇ」
アリス☆「よーし! そのお金でワシとロダンくんに美味しいものを食べさせるのじゃー」
スノー☆「それは分かりました。――で、お金にびびって税理士さんに相談したのですが……」
アリス☆「美味しいものが食べられるならワシは満足じゃ。税理士? なにそれ食えるのか? 好きにせえ」
村人B「知り合いに税理士がいる不思議」
スノー☆「税理士さんはお母さまの知り合いでして――、相談したら法人成り?とかいうので会社を設立することを強く勧められまして――」
村人B「あー。確かにそんな額が個人に入ったら税金で大半持ってかれるだろうねぇ。半分で済めばよいねぇー」
スノー☆「それで会社名とかいろいろどうしようかと……」
ラララ☆「というかその金はその会社化のために出しているからな。ジュエル換金の算定はこれからだからね。これから売上として入れるからね」
スノー☆「なるほど」
ラララ☆「そして会社の出資者は私だ。株権の51%は貰う。後は好きにしろ。それから会社設立するときは5億のうちの3億1円以上を資本金としなさい」
村人B「あのぉ。どうしてそこまで良くしてくれるので?」
ラララ☆「あまりこれはいいたくないが、我らゴーストラリア政府と外国の個人とで高額取引するのは我が国のメンツとしてどうなんだという意見が下の方からあがってきてなぁ。議会め。何かと文句をいってくる。そこでほら、なんとか機密費というやつが登場するわけだ。だいたいにおいて資本金3億1円以上であればそれはもう大企業であろう。大企業との取引ならば文句は出まいというか、出させまい」
なお、中小企業基本法では、製造業の場合、資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社のことを中小企業であると定義されている。逆にいえば3億1億円以上であれば大企業となるのだ。EXPアッパーの販売を製造業とするのはいささか疑問の余地はあるが。
アリス☆「あー。もしかして、こんなにあっても自由にできるお金は実はあまりないとかですかね?」
システム:運営Aが入室しました。
運営A☆「お? なにか面白そうな話をしているじゃないか」
村人B「あー。ジュエルを販売するにあたって、会社を作ろうとか?」
運営A☆「悪の秘密結社なのに会社設立とは一体……」
アリス☆「ワシの存在自体が秘密なので問題ないのじゃ」
運営A☆「それで? 会社名は? 登記用の定款は? 住所は?」
スノー☆「え? え?? (困惑)」
村人B「会社名は、アリスさんにちなんでアリスハードとか、アリスソフトが良いかと思います!」
運営A☆「おぃ! そこの鬼畜王な異世界転生者! 黙りなさい!」
アリス☆「なかなか良い名前だと思うのじゃがのぅ。話の流れ的には秘密結社セヤロカー(株)とかなのじゃ? 悪の秘密結社(株)とかどうじゃろう?」
運営A☆「秘密を隠さない秘密結社の法人成りとは一体……」
アリス☆「それで、住所についてはさすがに分かりますけど、定款とはなんでしょうか?」
運営A☆「その会社の目的だな。どうする?」
村人B「ここは悪の組織セヤロカーの目的なんて、
①秘密結社セヤロカ―ちゃんねるを収益化し、総帥の衣食を得る。
②幹部をバットエンドに墜として僕とくっつける。
③最悪の結末を迎えるため、経験点を世界に振りまく。
じゃないの?」
運営A「おまえネタに走りすぎ」
アリス☆「んー。今の事業を考えると――
①アイドル動画の配信業。
②輸出を含むジュエルの取引業。
の二本柱でしょうか?」
アリス☆「要はワシの動画配信とラララとの取引、それにオークションじゃな。グッズとは売らないのじゃ?」
村人B「いいねぇグッズ! マッチとポンプとかも売りたいです」
運営A☆「なぜにマッチとポンプ……」
村人B「だって、経験点を餌にジュエルを得て、ジュエルから経験点やらお金やら得るわけだろう? SDGs?に配慮した持続性可能な会社として、マッチとポンプを売るのは当然の話じゃないですか?!」
スノー☆「村人Bさんが売りたいならOEM製品? とかでブランドで販売するとかありかもですね?」
運営A☆「んー。変なものを定款に載せるのは気に入らないんだが……。しかしポンプなら有名ポンプメーカが主要取引企先とかになって良いかもしれんな。面白そうだし。まぁ良いか」
村人B「でしょう?」
運営A☆「方針だけ決めればあとは専門家に任せとけばそれなりなものができるだろう。司法書士さんだったかな。弁護士?」
村人B「なんか適当っすなー」
運営A☆「そら適当だろう。俺は名前露出したくないもの。――ということは、俺は蚊帳の外のニンゲンだろう? まあがんばれ、としかいえんな」
アリス☆「なんじゃ。会社設立したら、全員『会社役員』になるのかと思ったら違ったのじゃ?」
運営A☆「はい。よろこんで!」
村人B「――これが、運営Aが役員の地位欲しさに手のひらを返す瞬間だったのだ(まる)」
運営A☆「くくく。社畜を舐めるでない」
スノー☆「舐めてはいませんが……」
運営A☆「それにしても俺が大企業取締役かぁ……。世も末だなぁ」
村人B「をぃ! 唯一のまともな大人のニンゲンがそんなのでどうする!」
アリス☆「ワシも大人じゃが? 人妻じゃ」
ラララ☆「私も既婚で大人だが? 何か文句があるのか? 村人B。まさか私が身長を気にしていないとでも思っているのかね?」
村人B「アリスさんは魔人で、ラララさん魔王じゃん! まともな大"人"じゃないじゃん」
ラララ☆「その用法だと私は大魔か? 語呂が悪いなぁ……」
アリス☆「ワシは魔妻か? 魔女とかの方がまだましなのじゃ」
運営A☆「うーん。出資者がラララさんで、代表取締役社長兼総帥がアリスで、専務がスノーで、俺が情報戦略担当で、村人Bとキャロルが平社員兼役員くらいな感じだろうか。3階層の事業別組織になるかなぁ。妄想が捗るなぁ」
村人B「いつのまにやら組織図ができあがっとる! 運営Aが本気だしているぞ! というか平社員兼役員ってなんやねん」
運営A☆「え。実働をする係りのことだよ?」
村人B「そりゃまぁ、毎日毎日、ぼっとんぼっとんスライムプールに落とされてますが。落とされてますが!」
スノー☆「なんだか御免なさい」
アリス☆「大笑いなのじゃ。これが愉悦……」
村人B「だからせめて、スノーさんがアリスさんにご飯を提供するときに、僕もご相伴にあずかるくらいの役得があっても良いと思うんだ」
スノー☆「あ。はい」
村人B「やったぜ。スノーさんの手料理をゲットだぜ」
運営A☆「よし、村人Bは鍋奉行取締役に決定な」
村人B「よし。って、鍋奉行取締役ってなんでやねん」
スノー☆「お鍋にニンジンとか入れる係りではないのかしら?」
アリス☆「あぁ! 鍋といえばこの前配信で見た、ま〇にーちゃんとか食べたいのじゃ」
村人B「それ配信じゃなくてCMな」
スノー☆「会社の登記については、他は住所くらいが問題かしら?」
アリス☆「おぉ、それならば知り合いに伝手があるからちょっと待っておれ。住所だけならすぐじゃ」
村人B「おや? アリスさんに友達関係? ずっと引きこもりなのに? ――あぁ、ラララさんの関係か」
ラララ☆「私は知らんぞ」
アリス☆「うむ。最近は秘密結社セヤロカーちゃんねるにDMがちょくちょく来ておるのじゃ。そこで知り合いになって今は仲間に勧誘中なのじゃ」
村人B「怪しい……」
アリス☆「何をいう。そやつは、普通の国家錬金術師で警察研究所の付属鑑定所の研究員だから村人Bよりはよほど素性ははっきりしておるのじゃ」
運営A☆「要はサツじゃねーか!」




