森の中
「うわー…」
私は桟橋から身を乗り出して声を上げた。
なかなか休みが合わなくて約束していた湖にやっと来ることが出来たのだ。
「リィナ、落ちるよ」
シュー様が苦笑気味に体を引き寄せる。
「すごい綺麗ですね」
「リィナははじめて来たわけじゃないんだろう?」
リード様は不思議そうに言った。
「違うんですよ。ここの湖、天候によって色が違うんです」
「今日は透き通った水色だな」
「そうです。私が以前来た時はもっと濃いブルーでした。何回でも楽しめるんですよ」
「確かにすごい透明度だな」
ナッシュさんが底を覗き込む。透き通って泳いでいる魚も見えるのだ。
「透明度もその時の気候や温度によって変わるんですよ」
私は指を立ててえっへんと言った。地元民は私だけだからね。その辺の情報は持ってるよ。
その時。
3人の耳が一斉に同じ方向を向いた。
「聞こえましたか?」
「ああ」
「こんな近くに出てくるとは」
リード様とシュー様が口早に言葉を交わす。
「えっと…どうかしたんですか?」
「リィナ。モンスターが近くで活動しているみたいなんだ、僕達は非番だけど職務上行かなければならない」
「ああ、リィナは…ナッシュ、お前が送って安全な場所まで移動しろ」
「わかった」
3人は頷き合ってシュー様とリード様は駆け出した。ナッシュさんが私の手を取って来た道を戻り出す。
「他の観光客の方は大丈夫なんでしょうか?」
「そこまで近くはないが問題があれば対処して誘導するだろう」
「わかりました。ナッシュさんは私が移動しないと戻れないんですよね?早く行きましょう」
ナッシュさんは頷いた。
「弁当、食いたかったな」
森の入り口の方、川沿いを足早に歩きながらナッシュさんはぼやいた。私も時間も時間だしお腹も空いて来た。お弁当はナッシュさんが持ってくれている大きなバスケットの中だ。
「また作りますよ」
私は苦笑した。大したものは入ってないけど早起きして作ったから3人に食べて欲しかったな。
足早に移動する内、ずるっと足元がぐらついた。
「リィナ!」
ナッシュさんが伸ばした手を私は取れなかった。




