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イライザの事情

ロニーとエリゼさんの結婚式が近づいてきた。私も家族として出席のための衣装を作ったり、色々と忙しい。とは言っても正式にはラングレー侯爵家からの婿入りになるんだけどね。そこはそれ、平民と貴族の結婚では割とよくあるパターンで暗黙の了解っていうものらしい。


「それにしても急いだものだな」

ライオネル様は苦笑した。ラングレー家当主として平民にはわからない準備だの根回しだのをロニーのためにすべて引き受けてくれた方だ。感謝しかない。そしてちょっと疲れた憂い顔もすっごい格好良いし未来のシュー様を思わせて眼福でしかない。ご馳走様です。


「エクレール兄さんも式には来るの?」

「いや、エクレールはお前の式の時に長期休暇を取るらしくてな、仕事を前倒しにしているので今回は出席は難しいそうだ。ナッシュも今はいないしな」

それと、とライオネル様は言葉を止めた。

「…兄さん?」

「今回…リードも出席するんだったな」

「はい、出席していただく予定です」

私は不思議に思って首を傾げた。義弟の結婚式出席のため、特別休暇取得中のシュー様とは違って休暇に余裕のあるリード様も一緒にサリュー入りしている。


「私の確認ミスだが…昨年臣籍降嫁されたイライザ様が先方の親戚らしくてな、突然出席なさると言い出したそうだ」

「…兄さん」

「わかっている。私も動くが…ここで出席を予定していたリードが出席しないとなると二心ありと思われる可能性もある。痛くない腹を探られるよりは素知らぬ顔をして出席するのが最善だろうな」

「今更…イライザ様もリードさんに何の用なんだろう」

さあな、とライオネル様は首を捻った。


「あの、さっきのイライザ様って…」

うん、とシュー様は頷いた。忙しいライオネル様はとっくに退室済だ。

「リードさんの元恋人だよ、去年結婚したのは知っていたけど、まだリードさんに未練があるのかな、普通は遠慮しそうなものだけどね」

シュー様は苦笑しながら言った。

「…でも、きっとイライザ様はリード様にお会いしたいだけなんじゃないかなって思います」

「リィナ?」

「隣の国で働いていて、どうしても会えなくて、少しでも会えるっていうと我慢が出来なかったんじゃないでしょうか?」

シュー様は何も言わなかった。


でも、私がイライザ様なら多分そう思うだろうなって思った。

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