禁断の恋
「…リードさんは昔辛い恋をしてね、それでこっちの国で騎士をしているんだ」
夜勤明けのシュー様と大通りを散歩がてら帰っていた。リード様はそのままお昼休みを終えてお仕事に戻っていった。
「…辛い恋ですか?」
私はシュー様の横顔を見上げた。
「リードさんは…サリューのお姫様と一時恋仲になっていたことがあってね」
お姫様!
私はビックリして声を上げそうになった口を押さえた。周りをキョロキョロ見渡してしまう。
シュー様は苦笑する。
「そこまで気にすることないよ。知ってる人は知ってる話だから」
「えっと、それってどういう意味ですか?」
「噂になっていた事があるんだよ。それに…国の命令で別れさせられたのも公然の秘密だ」
「別れさせられた?」
シュー様は頷く。
「リードさんは一介の騎士だし命令に逆らうことも出来なくて…でもサリューに仕えるのは限界だったんだろうな、それでこっちで騎士をしているんだよ」
「辛いですね」
私はしゅんとした。恋人と無理やり別れさせられるってどれだけの苦痛だろう。
「…だから、居るようないないような、感じなんだろうな。嫌いで別れた訳じゃないからずっと心に残り続ける。リードさんはモテない訳じゃないから言い寄られることもあるけど無意識にガードしているから誰も近寄らないんだ」
「なるほど、シュー様の言ってた意味がようやくわかりました」
そしてリード様がモテない訳がないのに彼女がいない理由がわかった。
「本人は忘れたつもりなのがたちが悪いよね。…だからリィナのお友達を紹介しろって言ってみたりするんだ、絶対に近寄らせないくせに」
「…辛いですね」
私は俯いて自分の靴を見た。どうしても忘れられない元恋人か…。リード様は今はどう思っているんだろう?
「リィナは僕と別れろと言われたらどうする?」
うーんと私は考えた。すごい難問だ。
「とりあえずはそのまま別れないでいられるように努力します。どうしてもって時は…」
「時は?」
「一緒に逃げます!でも出来るだけ持てるものは全部持って一緒に行きます。…ずっと一緒です」
「そう言ってくれてありがとう、リィナ」
「どういたしまして、シュー様」
にこにこと笑い合って歩いた。
サリューのお姫様は、この質問にどう答えたんだろうか。




