家族会議③プラスワンワン
エリゼさん急襲事件の翌日、夕食前にお父さんは言った。
「それでは家族会議をはじめる」
いつも思うけど、夕食前じゃなくて夕食後じゃダメなのかな。お腹すいた。お父さん曰く、会議はおしりが決まっていた方が活発に意見交換出来るかららしい。
私は挙手した。
「リィナ」
「ロニーは成人前ですしまだ結婚出来ないのでは?」
年上の私でさえまだなのにロニーが結婚の話になるのはどうなのだろうか。
「婿入りするので向こうの成人年齢で構わないみたいだ。もうロニーはサリューでは結婚出来る年だ」
私達が帰る前にその辺の話はついていたらしい。ふむ、と私は頷いた。
「エリゼさんは、貴族です。このままお断りしたらうちの商売に影響はあるのでしょうか?」
「…ない、とは言い切れないだろうな」
お父さんはため息をつく。
「正式に押印入りの書状も頂いているし、何故だかはわからないがあちらの家の総意なのは間違いない」
「結婚したら良いじゃない。とっても可愛かったわ。ロニーは逆玉の輿だし、言うことないじゃない」
おっとりとお母さんは言った。またこの人は…。
「もし良ければ兄からとりなすように手紙を送りますよ。爵位はこちらの方が上になるので向こうも表立って逆らうことはないかと」
特別ゲストのシュー様がためらいがちに言った。犬耳も緊張しているのかピクピクしている。こうやってどうしても感情出ちゃうの可愛いなあ。
「ありがとうございます。しかしシューマス殿の兄上にもご尽力頂くのは最終手段にとっておくとして…ロニー、本人のお前はどうなんだ」
そう、ロニーは夕食の皿をじっと見つめて黙ったままだ。…お腹すいてる、って訳でもなさそうだけど。
「僕は、当人のエリゼさんと話してみるよ。突然だったし突っぱねてしまったけど、あの人の言い分も聞いてみたい。一生の問題だし軽々しく決めたくない」
「そうか、じゃあそうしてみてくれ」
お父さんは会議の終了を告げた。




