お誕生日
こちらに帰ってきて落ち着いて1週間程経った。シュー様は与えられている休暇をかなり使ってしまっていてお仕事が忙しいみたいであまり会えてない。
さみしい。
「うーん」
私は男性ものの服屋さんの店で素敵なシャツを前に悩んでいた。シュー様に似合いそう。でも高い。お財布もさみしい。
実はこの間、気遣いの出来る男リード様からシュー様のお誕生日を聞いたのだ。今から1週間後。危うくそのままスルーするところだった。ありがとうリード様。
お誕生日の計画はこうだ。当日仕事から自分の部屋に帰ってきたシュー様に手料理とケーキを振舞い、プレゼントを渡す。ベタだけど、捻る要素が思いつかない。
とりあえず今日のところはケーキを予約しにいこう。料理は作れるけどケーキはプロに頼むことにした。時間的な問題もあるし、シュー様は騎士団の宿舎に住んでいてお部屋にキッチンがないのだ。出来る男のリード様に鍵をお借りして準備するにしてもちょっと大変そう。なのでこの前アルバイトしていたお店にケーキは頼むことにしたのだ。
カランカラン、とお店の扉のベルが鳴る。
「あれ、リィナちゃん、いらっしゃい」
店主のマーサおばさんが声をかけてくれる。お母さんの昔からの友達で、念願のお菓子屋さんを開業したばかりなのだ。
「こんにちは、ケーキの予約したいんですけど」
「誕生日ケーキかい?こっちに見本があるよ、どんなケーキにするんだい?」
「ええっと、甘いものが好きな方なのでなんでも…」
「こっちのフルーツタルトはどうだい。新作なんだよ。季節のフルーツたっぷり」
「あ、美味しそう!これにしようかな」
などと、言いながら予約の用紙に必要事項を書き込む。
「リィナちゃん、良かったらうちでまたアルバイトしないかい?プレゼントも用意するんじゃ大変だろう」
「えー、良いんですか?嬉しいです!やります!」
私はこの渡りに船の提案に乗っかった。これであの素敵なシャツが手に入りそう。
「何をしたら良いですか?」
「新作のクッキーがあるからまた大通りで試食販売をお願いしようかね。やっぱり味を試して買えるっていうんで評判が良かったんだよ」
「わかりました。いつから来たら良いですか?」
「うちはいつでも構わないよ」
「明日朝からお願いします!」
ウキウキと予約票を手に店の外に出る。
良かった。これで当日までアルバイトしたら計画には十分な資金が手に入りそう。




